一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

一郷一会が威信をかけて ^^: 選定。センター系、スパ銭・・・ お湯さえよければどこでもOK! 料金上限1,200円也。

□ 仙水の湯 「いこいの湯多摩境店」 (元100湯)

2006-01-30 22:34:53 | 東京
この100名湯には東京都のお湯は2湯しか入っていないが、実は東京は温泉都市で、古くから浅井戸で掘られた”黒湯”と呼ばれる重曹系冷鉱泉が銭湯などでつかわれている。加えて近年、平野部では深深度掘削で湧出した化石海水型の食塩泉(その代表格が大谷田「明神の湯」)も増えてきている。さらに奥多摩方面にはうすめのアル単や単純硫黄泉が点在し、レジャー客で賑わっている。

この3つの泉質が東京の温泉を特徴づけるものだが、ここ「いこいの湯」は、そのいずれにもはめ込むことができないちょっと異色のお湯だ。
薄茶褐色でわずかににごりを帯びたお湯は、弱塩味+微重曹味+僅微金気味に微モール臭とツルすべを交え、むしろ甲府あたりのモール泉のイメージに近い。

総計3gくらいの食塩泉は半端な湯づかいをするとなにか釈然としない浴感(温泉は感じるけれどお湯に力がなく、欲求不満がのこる)になることが多いが、ここの源泉槽は湯づかいがよく、充分な鮮度感とアワつきが楽しめる。
オープン直後、スパ銭らしからぬ鮮度と力感にあふれたこのお湯は、温泉好きの話題を一身に集めた。

鮮度のいいお湯は湯温以上の温まりを感じるといわれ、山梨の韮崎旭、北毛の湯檜曽、埼玉羽生の華のゆなどその好例だが、ここもそんな一湯に数えられると思う。
源泉槽はかなり熱めに設定されていて、回転が速く(というか入れない客がけっこういる^^; )入り込みのわりに空いているのもいい。

しかし、多摩ニュータウンの片隅によくもこんなお湯が湧いたものだ。このあたりは人口のわりに温浴施設が少ないので、当然バカ混みとなり、週末はP待ちの車の列が並ぶらしい。すぐ前に小高い丘をのぞむ露天は和める雰囲気があるので、平日ゆったりとお湯を楽しむのが正解かと・・・。
湯色、温泉臭、ツルすべ、温まり感など、温泉の醍醐味にあふれたお湯をニュータウンで楽しめるとは贅沢。やはり多摩を代表する一湯だと思う。

「いこいの湯多摩境店」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん掲示板過去ログ)

Na-塩化物温泉 48.6℃、pH=7.9、438L/min(1,700m掘削揚湯)、成分総計=2957mg/kg、Na^+=1007mg/kg (95.57mval%)、Fe^2+=1.4、Cl^-=1466 (89.42)、Br^-=4.3、HS^-=0.05、HCO_3^-=287.4 (10.18)、陽イオン計=1051 (45.84mval)、陰イオン計=1762 (46.25mval)、メタほう酸=97.6、硫化水素=痕跡 <H16.1.27分析>

文・画像 別働隊@うつぼ

58.「きぬの湯」

2006-01-17 22:33:13 | 茨城
ほかでも書いたが、茨城は温泉と縁のうすい県だと思う。
奥久慈(袋田・大子)以外に著名な温泉地はないし、高温泉も少ない。それに加えて石岡でレジオネラ菌騒動の発端ともいえる事件が発生しているからか、温浴施設に対する行政の指導がとても厳しいときく。
もともと源泉に恵まれないうえに、カルキ漬け、しかも南部は温泉施設自体が少なくやたら混むとあっては、温泉好きの評価が低くなるのもいたしかたないところか。
(実はマイナーなお湯に、あなどれない良泉がいくつもあるのだが・・・)

そんななか、「天然温泉のかけ流し施設は県内初」というインパクトあるキャッチとともに突如デビューした日帰り施設が、ここ「きぬの湯」だ。
しかし、これまでさんざスカを食らっている茨城南部のこと、かけ流しといっても、このあたりにありがちな薄めアル単をちょろちょろ流しだすくらいが関の山だろうと、さして期待もせずに突入した。

だが、その先入観は見事に裏切られた。
内湯と露天、複数の浴槽で成分総計=6856mg/kgのしっかりとした食塩泉がかけ流されていたのだ。このお湯がクセモノで、緑茶色のにごり湯からは、泥臭+ボンド臭+海苔臭?のやたら個性的な温泉臭が匂い立つ。化石海水とモール泉が混じっているような不思議なイメージをもつお湯だ。
モール泉はもとになる植物の種類により微妙に香りが変わるといわれるが、なにか変わった種類の植物が成因になっているのかもしれない。
このあたりは温泉不毛エリアといわれて久しいが、考えてみると、化石海水型の良泉が出ている柏や野田と利根川をはさんで意外に近いので、面白いお湯が出ても不思議じゃないのかも・・・。

初入湯したときは熱湯ということもあり、かなりほてったが、のちにぬる湯(非加温かけ流しとのこと)となり、上品で当たりのやわらかな長湯向けのお湯となっている。
消毒剤投入はあるかと思うが、温泉臭が強いのでほとんど気にならない。また、井水を使い、とろみを帯びたやわらかな水風呂も入り心地がいい。

最近はお湯のよさから人気が出ているらしく、先日、日曜に行ったときには、いかにも温泉好きらしいおじさん連中で、湯口や壷湯の争奪戦が繰り広げられていた (^^;
たしかに湯口そばは状態がよく、常連さんは何十分でも入っているので空いてたらラッキー、すかさずgetかと。

郊外型施設では法外ともいえる1,200円(しかもタオルなし)ながらこれだけの盛況なので、近場に競合施設が少ないという条件をさしおいても、やはりいいお湯の集客力はすごいものがあると思う。
ただし、平日夜にひと風呂で1,200円は、さすがにきついような気もするが・・・。
それでも、茨城南部を代表する良泉として、外せない一湯だと思う。

「きぬの湯」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん掲示板過去ログ)

Na-塩化物温泉 36.6℃、pH=7.6、229L/min(981m掘削揚湯)、成分総計=6856mg/kg、Na^+=2131mg/kg (82.84mval%)、Ca^2+=308.1 (13.74)、Fe^2+=1.7、Cl^-=3687 (92.85)、Br^-=15.1、I^-=3.3、HS^-=0.6、HCO_3^-=471.7 (6.90)、陽イオン計=2513 (111.9mval)、陰イオン計=4179 (112.0mval)、メタけい酸=43.2、メタほう酸=72.1、硫化水素=0.2 <分析年月日不明>

文・画像 別働隊@うつぼ

□ 元箱根温泉 「箱根高原ホテル」 (元100湯)

2006-01-04 20:59:58 | 神奈川
東京あたりでは温泉地の代表と思われている箱根だが、蒸気井を用いて造成される”造成泉”を使う施設が意外に多い。
造成泉には大湧谷系統(箱根温泉供給(株))、早雲山系統、大芝・元箱根系統(町営)などがあって、それぞれ旅館や保養施設などに配湯されている。なかでも規模的に大きいのが大湧谷系統で、強羅から仙石原にかけての多くの施設が使用している。

このお湯はイオウ臭香る白濁湯なので一般には人気が高いが、やはり”造成泉”であることと、多くの施設で使われているので、湯巡りのときには回避したい対象となる。
大湧谷造成泉をパンフやHPで見分ける方法はこんなところか・・・(笑)

1.まんま「大湧谷からの引湯」や「供給温泉:大湧谷温泉」とある施設。
2.「乳白濁のにごり湯」というキャッチの施設。(このエリアの非造成泉で
  にごり湯になる源泉は稀)
3.泉質名が「酸性-カルシウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物泉」
4.泉温65℃くらい / pH=2.6~2.9 と記載。
5.湧出量2,750~3,125L/min ないしは(蒸気造成) と記載。

このようにして振り分けていくと、かなりの温泉施設が該当してしまう。
また、残ったもののなかにも早雲山系統の造成泉が混じっている。(これの見分け方もあるが省略)
こうしてみると、強羅から仙石原、湖尻あたりにかけての非造成泉がいかに貴重なものかがわかる。(逆に、貴重だからこそ、造成泉の需要が高い。)

前置きがながくなったが、芦ノ湖湖尻にほど近い「箱根高原ホテル」は、そんな貴重な自家源泉をもつ宿泊施設のひとつだ。しかも、加水も加温も濾過循環も消毒もかけていないらしい。(以前は循環していたようだが、かけ流しに切り替えたような感じがする)

さして風情のあるホテルでもないし、飾り気のない男女別の内湯があるばかりだが、お湯はすばらしい。
赤茶の析出のでた湯口から50L/min近くも注がれる熱湯からは焦げ臭と金気臭が立ちのぼる。うすく緑茶色がかったお湯には茶色の湯の花が浮かび、キシキシとツルすべの入り混じる複雑な湯ざわりが楽しめる。鉄と重曹の気配が強いこのお湯は、白濁イオウ臭の造成泉と無色透明の弱食塩泉が多い箱根にあっては異色だ。
なお、この重曹分は、「中央火口丘が噴出する以前にあった湿原の植物が堆積物中で分解されてできたものと考えられ」ているとのこと。(やませみさんの「温泉の科学」より)

箱根では温泉資源保護の見地から、新規の温泉掘削がほとんど不可能なため、源泉自体が貴重品だ。それでもまだまだ多くの源泉が残っているらしく、小さな宿で自家源泉をもっていたりするので、じっくりと時間をかけて探っていきたいと思っている。

なお、姥子には「秀明館」という酸性硫酸塩泉系のすごみのあるお湯があり、100湯ラインは楽々クリアしているのだが、料金1,800円で残念ながらリスト外となっている。

Na・Ca・Mg-硫酸塩・炭酸水素塩泉 55.8℃、pH=7.0、96.1L/min、成分総計=1.359g/kg、Na^+=118mg/kg、Mg^2+=55.6、Ca^2+=101、Fe^2+=2.43、Cl^-=26.3、SO_4^2-=355、HCO_3^-=377、陽イオン計=292、陰イオン計=759、メタけい酸=240、メタほう酸=3.77、硫化水素=0.02 <H16.12.13分析>(源泉名:元箱根温泉※(元箱根第26号))

※ふつう”元箱根”というと箱根神社あたりを指すが、住所上は、湖尻や桃源台も含まれている。ここの泉源は元箱根字旧札場にあり、約1.1km引湯しているらしい。

文・画像 別働隊@うつぼ