一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

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06.芦之湯温泉 「きのくにや」

2011-09-12 00:12:34 | 神奈川
               

 箱根には、約400年前の江戸時代初期からの温泉が多数散在しています。
 芦の湯のきのくにやは、江戸時代末期の1811年(文化8年)に書かれた、十巻十軸から成る箱根の観光案内書【七湯の枝折】にも明示されている古湯です。
  ※箱根七湯:湯本・塔ノ沢・宮ノ下・堂ヶ島・底倉・木賀・芦之湯
 【七湯の枝折】巻ノ八 芦の湯部には、湯宿六軒として松坂屋万右ヱ門・伊勢屋清左ヱ門・大和屋金左エ門・亀谷兵蔵・紀伊国屋忠蔵・吉田屋平兵衛と記されています。

 江戸時代中期の1715年(江戸時代の正徳5年)に創業したきのくにやは、400年の歴史ある老舗ですが『伝統は常に斬新』を標榜し、長い歴史に驕ることなく時代にマッチした温泉宿を目指している様子が窺えます。
 2007年度に『二種名湯賛歌』を掲げ、硫黄泉と単純泉を区分した湯使いを宣言しました。 

 以下は、2011年8月29日(晴れ)の入湯レポです。

 芦ノ湖の【元箱根】の信号から国道1号線を箱根湯元方向へ10分弱上がり、左折するとすぐ郵便局の先にきのくにや。左に本館・別館、道路の対面に資料館・宿泊者専用の正徳の湯と枯淡の湯・源泉井・やまぶき茶屋が並んでいる。
 日帰り入浴できるのは、本館の湯香殿と別館の貴賓殿の2ヵ所。 

 本館の湯香殿
 更衣室にはボードの棚にプラスチックの脱衣籠が載っている。
 1、硫黄匂漂う内湯
 20人程度入れるタイル張り石枠の浴槽に、浴槽底2か所から温泉が注入され、浴壁から透明のお湯が吸い込まれ、僅かに浴槽縁からの溢れだしも見られる。
 初めは肌につっかかりを感じたが、やがてぬめり感に代わってきた。
 【加温・循環濾過・塩素消毒】と掲示されてはいるものの、塩素臭を感ぜず。

 2、露天の一部に苫を掛けた芦ノ湖周遊風呂。
 10人入れるタイル張り石壁の浅い浴槽に、温泉が管の湯口からジョコジョコの流入と浴槽内からも注入し微々懸濁透明のお湯が湛えられている。
 湯口近くは高温で、湯口から離れるに従い湯温が下がる。

 3、同じく湯香殿露天の神遊風呂。
 一人用の壺湯に、竹筒から温泉がチョロチョロ投入され、微青濁りほぼ透明のお湯が溢れている。
 入る時には冷たいが、入ってしまえば天国天国。大きな湯花も舞い、硫黄の匂いを嗅ぎながら浸かっていると、いくらでも入っていたい「時忘れの湯」。
 飲むと玉子味。目をつぶり静かに肌を擦りながら、まろやかな温泉を楽しんだ。何回行っても期待を裏切らない浴槽。

 回廊に展示された数々のきのくにやの歴史物語りを眺めながら一息つき、ロビーで一休みしてから、湯香殿先の別館へ。

 脱衣場は木製の棚に籐の籠が数個架かっている。
 4、太陽が降り注ぐ別館内湯
 6人程度入れる石板張りの浴槽に、正面に突き出した5本のパイプの内の2本から透明のお湯がドカドカと、残り一本からは硫黄泉がチョロチョロと流入し(2本は止まっていた)、僅かに懸濁した透明のお湯が湛えられている。


 5、東屋を掛けた別館露天
 石で囲った5人は入れる浴槽に、3本のパイプの内の1本から温泉がジョロジョロ投入され、透明のお湯が溢れている。
 硫酸塩泉のしっかりしたキシキシ系の肌触りに加え、僅かだがしっとり感+弱いとろみも感じ、硫黄の匂いが漂う。
 体の中の不純物が溶け出していくような、素晴らしいお湯。

 参考1  浴槽数が多いので、日帰りでも梯子湯気分に浸れますが、宿泊者専用の正徳の湯で使われている芦之湯1号泉は、これが硫黄泉かと思う程の柔らかいお湯が肌を包み込む、俊一(比類なき絶妙な、素晴らしい触感の泉質)なお湯です。

 参考2  少し足を延ばした、石仏・石塔群の磨崖仏二十五菩薩は一見の価値があります。

湯香殿内湯・神遊風呂・別館内湯   芦之湯3・6号混合泉   泉質 単純硫黄泉 
 泉 温  31,9℃  湧出量 72L/分  pH 6,9
芦ノ湖周遊風呂・別館露天    湯の花揚湯2号泉  Ca2・Na・Mg-硫酸塩・炭酸水素塩泉
 泉 温  66,4℃  湧出量  記載なし  pH 8,0
営業時間 12時30分~15時30分  入浴料 1,000円  

 文・画像 義満