一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

一郷一会が威信をかけて ^^: 選定。センター系、スパ銭・・・ お湯さえよければどこでもOK! 料金上限1,200円也。

48.柳沢鉱泉

2006-02-09 22:39:22 | 栃木
温泉紹介で”秘湯”という言葉ほどよくつかわれるものはない。
”秘湯”の人気はすこぶる高く、近頃は山奥のお湯ほど人が多いという。東北の某メジャー秘湯(^^;)など、団体客が入り込みトップシーズンには入浴待ちさえあるらしい。関東でも山奥の混浴風呂に若いカップルが大挙して押しかけ、嬉々として入っている。
その是非はさておいて、客もまばらな知られざるお湯を秘湯とするならば、もはや秘湯は山奥とは別のところにあるような気もする。
いい例がビジホのお湯や大規模歓楽温泉地の小さな宿だ。どちらも日中に行けばガラガラで、自家源泉ザコザコかけ流しの浴槽を独占できたりする。

那須高原の片隅にある「柳沢鉱泉」も、そういう意味では完璧な秘湯だ。
もともとは山中の一軒宿だったのだろうが、いまはすぐそばまで別荘地が迫っていて、道が錯綜しているのでたどり着くのでさえ容易でない。
別荘地のはずれから渓に向かって道をおりていくと赤い屋根の小さな建物が見えてくる。
飾り気のない館内だが、よく手入れされ居ごこちがよさそうだ。

浴室はふたつあり、この日は手前のものだけお湯が張られていた。こじんまりした浴室に小さめの石の浴槽がひとつ。槽内にはヒーターが仕込まれ、冷たい源泉の出るカランがあるので、随時投入のため湯かけ流しだと思う。冷鉱泉としては理想的な湯づかいだ。

お湯は異彩を放っている。
ここは湯面に白い結晶(おそらく炭酸カルシウム)が張ることで知られ、行ったときも一番湯で結晶を割りながらの入湯となった。そろそろと身を沈めると結晶の下で透明に近かったお湯が、たちまち茶色のにごり湯に変わっていく。

適温のお湯には弱うま味+微重曹味+微苦味+微収斂味に微金気臭+微重曹臭+やわらかな温泉臭と、成分の複雑さを感じさせる味臭がある。
キシキシした湯ざわりとからだのなかに染み渡ってくるような奥のふかい浴感。よく温まりどっしりとくる力のあるお湯なので長湯できないが、浴槽から出て涼んでいると、またぞろ入りたくなる、そんなお湯だ。

Mg・Ca・Na-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉(含食塩-重炭酸土類泉)という複雑な泉質はそうあるものではない。とくにMg^2+が主成分となる泉質は関東ではすくない。
栃木西部には小滝、赤滝、寺山など、似たようなロケーションの酸性緑礬泉群があるが、それらともイメージが違う。むしろ赤城南麓の赤城や滝沢に近い雰囲気のお湯だと思う。

ちなみに那須の温泉というと、湯本「鹿の湯」を筆頭に山側のお湯にスポットが当たるが、実は麓の高原地帯にもたくさんのお湯がある。泉質はバラエティに富んでいて、自家源泉のマイナー湯が多いので温泉マニアには応えられないエリアだといえる。
たとえば、すぐそばにある「ホテル報恩」など、こことは全然イメージの違う個性的なお湯なので、連チャンで攻めればこのあたりのお湯のクセモノ度を実感できると思う。

浴後女将さんと話をした。
「昔は湯治客でけっこう賑わっていたけど、いまは湯治客が減ったのと、まわりに日帰り施設がたくさんできてしまったので・・・。」と淋しげに笑っておられた。
そういえば、着いてから宿をあとにするまで1時間あまり、週末にもかかわらず他のお客はついぞやってこなかった。(このあと行った「鹿の湯」は入場制限が入るゲキ混みだったのに・・・。)
世を挙げての秘湯ブームの陰で、すばらしい源泉をもちながら、客の減少のまえになすすべもなく消えていったお湯は数多い。とくに鉱泉は加熱コストがかかるので、経営的に、よりシビアな条件にある。
「柳沢鉱泉」をとりまく状況も決して甘いものではないだろうが、その味わい深いお湯を活かし、新たなファンをつかんで元気につづけていってほしいと思う。

文・画像 別働隊@うつぼ 

Mg・Ca・Na-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉 6.3℃、pH=6.4、湧出量不明、成分総計=2.452g/kg、Na^+=180.1mg/kg、Mg^2+=103.3、Ca^2+=162.1、Fe^2+=5.4、Cl^-=230.6、SO_4^2-=165.0、HCO_3^-=900.1、陽イオン計=464.9、陰イオン計=1245.8、メタけい酸=75.4、メタほう酸=14.2、遊離炭酸=601.1、硫化水素=0.1 <H13.3.23分析>(源泉名:柳沢鉱泉)
<温泉利用掲示> 加水なし 加温あり 循環なし 消毒剤使用なし

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