那須は関東有数の温泉地帯で、なかでも「那須七湯」(鹿の湯(元湯・那須湯本)・弁天・北・大丸・高雄・八幡・三斗小屋、八幡のかわりに板室を入れることもある)はその中核をなしている。
「那須七湯」のほとんどは元湯(鹿の湯)より上にあってその多くは一軒宿だ。
硫黄泉マニアの聖地「湯本鹿の湯」、新秘湯系で女性に人気の高い「大丸」、秘湯一軒宿の代表格「北」、メジャー野湯からおおるりグループのお年寄りの楽園へと変貌を遂げた「高雄」、”歩いてしか行けないお湯”で名を馳せる「三斗小屋」など個性派ぞろいだが、ここ「弁天」の性格はややあいまいだ。
立地的には沢沿いどん詰まりの秘湯だが、コンクリ造箱形の建物は秘湯宿のイメージから外れている。なんとなくお客のターゲットが絞り切れていない感じがあり、那須七湯のなかでは地味な存在に甘んじている。
泉質も単純温泉で、私もほとんどノーマークだった。じつは入ったときも「大丸」が臨時休業だったので、急遽目標変更、ほとんどたいした期待もなく突入した。
だが、その先入観はものの見事に裏切られた。
年季の入った渋~い内湯と野趣あふれる多彩な露天群に、青味を帯びて緑褐色ににごった源泉が惜しげもなくかけ流されている。
明瞭な焦げ臭にあとを曳く浴感があり、お湯のイメージは完璧に重炭酸土類泉だ。
重炭酸土類泉(Ca(Mg)-HCO3泉)は数ある泉質のなかでも別働隊の一番好きなもの。
ガイドでは”炭酸水素塩泉”と書かれることもあるが、ツルすべさっぱりの純重曹泉(Na-HCO3)とはお湯のイメージがぜんぜんちがう。
おおむね緑青茶~赤茶の複雑な色味をたたえたにごり湯となり、独特の焦げ臭と重曹味と旨味、ときには炭酸味をまじえる奥ぶかい味臭が楽しめる。ギシギシした湯ざわり、肌に染み入るような独特な浴感と強い温まり感をそなえた力感あふれるお湯だ。
石灰華の析出を大量にともなうのでメンテがたいへんな泉質だが、それだけに析出でこてこてにコーティングされた湯船や千枚田と化した洗い場など、マニアごのみの浴場となっていることもしばしばだ。
この泉質はたいてい鉄分を含み酸化しやすいので、鮮度が身上。鮮度の高い重炭酸土類泉は圧倒的な質感で温泉マニアを脱出不能にすることがある。
関東周辺で重炭酸土類泉が鮮度よく楽しめるお湯は、箱根では早雲山の「早雲閣 頓狂楼」、栃木では塩原塩ノ湯、塩原福渡・不動など、群馬では赤城、鹿沢や浅間隠温泉郷に最近の高崎「湯都里」、山梨では増富から峡北にかけて数湯あるが、その数はすくなく、どちらかというと”山のお湯”だと思う。(ちなみに奥会津は重炭酸土類泉の本場)
単純温泉でも重炭酸土類泉型のものがあり、成分が濃いめだとほとんど重炭酸土類泉とおなじイメージのお湯となる。ここ弁天温泉はその代表格だと思う。
分析書での見分け方は、陽イオンでCaやMg、陰イオンでHCO3のmval%の数値が比較的高いことだ。(このあたりの詳細はここをみてね)
ちなみにここのデータをみてみると、Ca+Mgが61.28で主成分、HCO3はSO4の56.90には及ばないものの37.31で副成分となっていて、重炭酸土類泉系の単純温泉であることがわかる。
このすぐれものの源泉が210.0L/minも自然湧出し、かけ流されているのだから悪かろうはずがない。那須七湯の地力を感じさせるこの良泉は、もっと注目されてもいいと思う。
単純温泉(Ca・Na・Mg-SO4・HCO3型) 48.0℃、pH=6.44、210.0L/min自然湧出、成分総計=0.912g/kg、Na^+=60.1mg/kg (32.28mval%)、Mg^2+=20.5 (20.86)、Ca^2+=65.6 (40.42)、Fe^2+=1.0、Cl^-=15.9 (5.62)、SO_4^2-=218.4 (56.90)、HCO_3^-=181.9 (37.31)、陽イオン計=165.7 (8.19mval)、陰イオン計=416.5 (7.99mval)、メタけい酸=188.1、遊離炭酸=141.5、硫化水素=0.2 <H7.8.7分析> (源泉名:弁天温泉No.6~9混合泉)
文・画像 別働隊@うつぼ
「那須七湯」のほとんどは元湯(鹿の湯)より上にあってその多くは一軒宿だ。
硫黄泉マニアの聖地「湯本鹿の湯」、新秘湯系で女性に人気の高い「大丸」、秘湯一軒宿の代表格「北」、メジャー野湯からおおるりグループのお年寄りの楽園へと変貌を遂げた「高雄」、”歩いてしか行けないお湯”で名を馳せる「三斗小屋」など個性派ぞろいだが、ここ「弁天」の性格はややあいまいだ。
立地的には沢沿いどん詰まりの秘湯だが、コンクリ造箱形の建物は秘湯宿のイメージから外れている。なんとなくお客のターゲットが絞り切れていない感じがあり、那須七湯のなかでは地味な存在に甘んじている。
泉質も単純温泉で、私もほとんどノーマークだった。じつは入ったときも「大丸」が臨時休業だったので、急遽目標変更、ほとんどたいした期待もなく突入した。
だが、その先入観はものの見事に裏切られた。
年季の入った渋~い内湯と野趣あふれる多彩な露天群に、青味を帯びて緑褐色ににごった源泉が惜しげもなくかけ流されている。
明瞭な焦げ臭にあとを曳く浴感があり、お湯のイメージは完璧に重炭酸土類泉だ。
重炭酸土類泉(Ca(Mg)-HCO3泉)は数ある泉質のなかでも別働隊の一番好きなもの。
ガイドでは”炭酸水素塩泉”と書かれることもあるが、ツルすべさっぱりの純重曹泉(Na-HCO3)とはお湯のイメージがぜんぜんちがう。
おおむね緑青茶~赤茶の複雑な色味をたたえたにごり湯となり、独特の焦げ臭と重曹味と旨味、ときには炭酸味をまじえる奥ぶかい味臭が楽しめる。ギシギシした湯ざわり、肌に染み入るような独特な浴感と強い温まり感をそなえた力感あふれるお湯だ。
石灰華の析出を大量にともなうのでメンテがたいへんな泉質だが、それだけに析出でこてこてにコーティングされた湯船や千枚田と化した洗い場など、マニアごのみの浴場となっていることもしばしばだ。
この泉質はたいてい鉄分を含み酸化しやすいので、鮮度が身上。鮮度の高い重炭酸土類泉は圧倒的な質感で温泉マニアを脱出不能にすることがある。
関東周辺で重炭酸土類泉が鮮度よく楽しめるお湯は、箱根では早雲山の「早雲閣 頓狂楼」、栃木では塩原塩ノ湯、塩原福渡・不動など、群馬では赤城、鹿沢や浅間隠温泉郷に最近の高崎「湯都里」、山梨では増富から峡北にかけて数湯あるが、その数はすくなく、どちらかというと”山のお湯”だと思う。(ちなみに奥会津は重炭酸土類泉の本場)
単純温泉でも重炭酸土類泉型のものがあり、成分が濃いめだとほとんど重炭酸土類泉とおなじイメージのお湯となる。ここ弁天温泉はその代表格だと思う。
分析書での見分け方は、陽イオンでCaやMg、陰イオンでHCO3のmval%の数値が比較的高いことだ。(このあたりの詳細はここをみてね)
ちなみにここのデータをみてみると、Ca+Mgが61.28で主成分、HCO3はSO4の56.90には及ばないものの37.31で副成分となっていて、重炭酸土類泉系の単純温泉であることがわかる。
このすぐれものの源泉が210.0L/minも自然湧出し、かけ流されているのだから悪かろうはずがない。那須七湯の地力を感じさせるこの良泉は、もっと注目されてもいいと思う。
単純温泉(Ca・Na・Mg-SO4・HCO3型) 48.0℃、pH=6.44、210.0L/min自然湧出、成分総計=0.912g/kg、Na^+=60.1mg/kg (32.28mval%)、Mg^2+=20.5 (20.86)、Ca^2+=65.6 (40.42)、Fe^2+=1.0、Cl^-=15.9 (5.62)、SO_4^2-=218.4 (56.90)、HCO_3^-=181.9 (37.31)、陽イオン計=165.7 (8.19mval)、陰イオン計=416.5 (7.99mval)、メタけい酸=188.1、遊離炭酸=141.5、硫化水素=0.2 <H7.8.7分析> (源泉名:弁天温泉No.6~9混合泉)
文・画像 別働隊@うつぼ