弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

債務整理と子どもへの影響

2015-12-12 06:30:46 | 子育て
借入金等の返済が困難となった方から債務整理のご相談をいただく際に、子どもに影響が及ばないかといったご質問をいただくことがあります。

ちょっと触れてみたいと思います。


ご承知の方も多いとは思いますが、債務整理の方法としては、主として、自己破産、個人民事再生、任意整理の3つがあります。

自己破産は、裁判所に申立を行って債務が支払不能であると認定してもらう手続きで、生活必需品を除いた財産は失いますが、免責決定を得ることで債務をゼロにすることが出来るものです。

債務をすべてなくして経済的にゼロからのリスタートを図ることが出来るメリットがある一方で、自宅等の資産は失うこと、弁護士、税理士、宅地建物取引主任者等の資格制限を生じたり(一定期間、資格を使った仕事が出来なくなる)、会社の取締役の退任事由となる等のデメリットがあります。

個人民事再生は、裁判所に申立を行って債務が支払不能となるおそれがあると認定してもらい、一定の要件のもと債務の大幅な減額を認めてもらう手続です。

自己破産と異なり資格制限が生じないこと、高額な財産も残すことが可能であるといったメリットがあり、住宅ローン返済のリスケジュールが認められたりもしますので自宅を保持したい場合などに用いられます。
一方で、手続きが煩雑であること、場合によっては破産に移行する可能性があること等のデメリットもあります。

任意整理は、債権者との間で個別に話し合いを行い、利息制限法所定の利率を超える利息の支払いがあった場合には引直しの計算を行って、確定した金額を分割払い(3年~5年)で支払っていくというものです。
(引直しの計算の結果、債務の残高がマイナスになる場合には、債権者に対して過払金の返還請求を行うことになります。)

任意整理では、資格制限が生じることもなく、自宅等の高額な財産を失うこともありませんが、引直しの計算を行ってもなお多額の債務が残ってしまうような場合には分割での支払いが難しく、債務整理の手段として適しない場合があります。


これら3つの手続き(自己破産、個人民事再生、任意整理)は、いずれも本人に限って効果が生じますので、手続きを行ったからといって親や配偶者、子どもに債務の支払い義務や資格制限が生じることはありません。(ただし、家族が連帯保証人になっている場合には、連帯保証人の地位に基づいて支払い義務があります。)

債務整理の手続をとったことが戸籍や住民票に記載されることもありません。

留意が必要なのは、債務整理を行う場合、自己破産、個人民事再生、任意整理のいずれの方法をとったとしても、信用情報機関に事故情報として登録され(いわゆる「ブラックリスト」)、債務整理を行った本人は一定期間(5年~7年)、新たな借入れができなくなることです。

しかしながら、信用情報機関の情報を閲覧等するためには、本人の同意が必要とされますので、子どもの進学や就職の際、また、子どもが大きくなって自身で借入れをする際に、学校や就職先、借入先の業者が勝手に親の信用情報を閲覧することは出来ません。

また、自己破産や個人民事再生といった裁判所における法的手続きを行った場合には、「官報」というものに手続きの開始決定等が掲載されますが、子どもの入学や就職の際に親の官報記載事項が調査されるなどということも、通常ないと考えられます。


結論として、親の債務整理によって基本的に子どもに影響はないと考えてよく、子どものためを考えても、経済的な健全化を図ることこそ優先すべきではないかと思います。

債務整理にあたっては、負債の額と収入の額、職種、家族構成、家計の状況、連帯保証人の有無などを総合的に判断して、適切な方法を選択していくこととなりますが、お子様がいる場合には、子育てにかかる将来的な費用も十分に見込んだ上で検討を行っていくことが大切だと思います。


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