弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

公正証書遺言書の大きなメリット

2018-10-25 04:37:33 | 相続

前回、前々回と、手書きの遺言書(自筆証書遺言書)を作成する場合には、法的に無効なものとならないよう形式面で注意すべき点があること、遺言者の死亡後には家庭裁判所における検認の手続きが必要であることに触れました。

そこで書いた内容も踏まえ、私などは、遺言書作成の相談を受けた場合、多少の費用と手間がかかったとしても公正証書で遺言書を作成されるよう勧めています。

公正証書遺言書は、公証役場で公証人に作成手続きをしてもらい、作成された遺言書の原本を公証役場で保管してもらいます。(もちろん、遺言者自身も遺言書の正本と謄本の交付を受けます。)

公証人は、大部分が裁判官、検察官として30年以上の実務経験を有する法曹資格者であり、また、公証人は、嘱託事項の有効性等につき疑いがあるときは、関係人に注意をし、必要な説明をさせなければならないとされていることからも(公証人法施行規則第13条1項)、公正証書遺言書は公証人により形式面における有効性がチェックされ、遺言書が無効なものとなってしまう可能性がほぼないといえます

また、公証人が作成に関与するのみならず、作成された遺言書の原本が公証役場に保管されるため(※1)、遺言書が偽造や変造されたのではないかといった争いが生じる可能性もほぼなくなります(※2)。

そして、公正証書遺言書の場合、遺言書が偽造や変造される可能性がないことから、自筆証書遺言書とは異なり、遺言者の死亡後に検認の手続きを行う必要もありません。

このように、公正証書遺言書は、形式的な有効性が担保されること、偽造や変造の可能性がないこと、検認の手続きも不要であることから、メリットがきわめて大きいものといえます。


ただし、公正証書遺言書は形式的な有効性が担保されているとはいえますが、その内容が、遺言者の意図を正確に反映したものとなっているか、遺言者や相続人の利益にとってベストなものとなっているか等、実質的な内容面で公証人が責任を負っているわけではありません。

したがって、公正証書で遺言書を作成する場合であっても、特に遺言の内容が複雑なものについては、遺言者ご自身が、参考文献等をきちんと調べてみたり、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家に相談したりすることが大切といえます。


※1 公証役場には公正証書遺言書の検索システムがあり、特定の人が公正証書遺言書を作成しているかどうか調べてもらうことが出来ます。ただし、遺言者の死亡後、検索を請求できるのは、法定相続人、受遺者・遺言執行者など利害関係人に限られます。
 
※2 公証人は、法務大臣により任命され、法務局または地方法務局に所属して職務を行う公務員であり、その作成する文書は公文書となることから、裁判において、公正証書遺言書は真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条2項)


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手書きの遺言書(自筆証書遺言書)② -遺言者の死亡後、必ず行わなければならない手続 (検認)

2018-10-14 11:18:09 | 相続

前回、手書きで遺言書(自筆証書遺言書)を作成する際に絶対これだけは守っておかなければならない決まり事(ルール)について書きましたが、今回は、手書きの遺言書(自筆証書遺言書)を保管している方や見付けた方が遺言者の死亡後、必ず行わなければならない手続きについて書きます。

それは遺言書の検認の手続きです。

民法1004条1項は、遺言書の保管者や発見者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない、と定めています。

ここでいう検認とは、家庭裁判所において遺言書の存在とその内容(日付や署名、加除訂正の状況等)を調査し確定する手続きであり、検認された後に遺言書が偽造・変造されることを防止するために行われるものです。

この手続きを経なければ、遺言書の内容にしたがった不動産の相続登記や預金の名義変更や払戻しは出来ません。

遺言書の検認を家庭裁判所に請求する方法については、裁判所のHPなどで詳しく説明されていますし、家庭裁判所の窓口で教えてもらうこともできます。
(手続的にそれ程、難しくはありません。)

注意が必要なのは、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができないとされており(民法1004条第3項)、検認の手続きの中で遺言書を封印された状態のまま裁判所に提出する必要があることです。

仮に、遺言書が封印されていなかったり、遺言書がそもそも封に入れられていない場合であっても、検認の手続きは必要ですので、あるがままの状態で遺言書を家庭裁判所に提出しなければなりません。


検認の手続きには他の相続人も立ち会って遺言書の内容を確認することが出来ます。

ただし、検認の手続きは遺言書の有効・無効を判断するものではありませんので、例えば、検認の手続きの中で、一部の相続人から「遺言書の筆跡が被相続人のものとは違う」といった異議が出たとしても、それだけでは遺言書は無効ということにはなりません。

遺言書の有効・無効をきちんと争うためには、別途、遺言無効確認の調停申立てや遺言無効確認の訴訟提起をする必要があります。
(筆跡対照や筆跡鑑定などが必要となり、非常に困難な手続きとなります。)


ちなみに、相続人のうちの誰かが遺言書の偽造などしてしまった場合、相続人の欠格事由に該当し、相続人となることが出来なくなってしまいます(民法891条1項5号。但し、代襲相続は生じます。)。
また、私文書偽造の刑事罰を問われたり、民事上の不法行為責任を追及される可能性もあります。

当たり前のことですが、遺言書の偽造・変造など絶対にしてはなりません。


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手書きの遺言書(自筆証書遺言書)ー絶対にこれだけは守らなければならない決まり事(ルール)

2018-10-08 04:06:00 | 相続

先週、どういうわけか、各種の相談の中で、手書きで作成された遺言書(自筆証書遺言書といいます)を目にする機会が多かった。

手書きの遺言書を目にすると、私は他人様のことながら、ドキドキしてしまいます。

手書きの遺言書は、下の例のように、内容的には、遺産の全部を法定相続人のうち誰か一人に相続させる、といった単純明快なものが多いのですが、ちょっとした形式的なミスによって無効(ただの紙切れ)となってしまっているケースがあまりに多いからです。

(例)「遺言者は,遺言者が有する一切の財産を,妻山田花子(2000年1月1日生)に相続させる。」


そこで、私自身の備忘の意味も込めて、以下のとおり、手書きで遺言書を作成する際に絶対これだけは守っておかなければならない形式的な決まり事(ルール)を整理しておきたいと思います。


手書きで作成される遺言書(自筆証書遺言書)の形式的な有効要件は民法968条で定められています。

(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

この規定から、遺言書を手書きで作成する場合、以下の決まり事(ルール)が認められます。

1 自筆証書遺言書はその全てを自ら手書きで書かなければならない。
・ 一部でもワープロを使用してはならない
・ 代筆も許されない。

2 遺言書には遺言書を作成した日付を書かなければならない
・ 日にちまで書かなければならない。

3 遺言書を作成した人の氏名を書かなければならない。
・ 遺言書は一人ごとに単独で作成する必要があるので、誰かと共同で作成してはならない(民法975条)。

4 印(ハンコ)を押さなければならない
・ 印は実印ではなく認印でもよいが、死後、遺言の信憑性につき相続人間に無用の争いを生じさせないため、出来る限り実印を使用すべきである。スタンプ式の印 (シャチハタ)は可能な限り使用しない。

5 書き損じたりした場合には、新しく作り直す
・ 上記民法968条2項に書かれた方法(訂正印の押印等)で訂正することも出来ますが、絶対に一から作り直すべきです。


以上は手書きの遺言書(自筆証書遺言書)を作成する際絶対に守らなければなりません


その他、自筆証書遺言書の有効要件ではありませんが、以下の点も大切なところです。

(1)手書きの遺言書は、作成後の偽造や変造等を防止するため、封筒に入れて封印する。(封印に用いるハンコは遺言書作成に用いたものと同じものを使用する)。

(2)遺言の内容が複雑な場合には、
・ 弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に条項を確認してもらう
・ 公証役場で公正証書遺言書を作成する
・ 本やネットで遺言書の適切な文言をきっちりと確認する
  等により、遺言書の条項に誤りがないようにする。


以上、手書きで遺言書を作成される場合、是非ともご留意いただきたいところです。


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代襲相続について2 ―遺言書との関係

2016-02-07 08:24:32 | 相続
先日、「代襲相続について1―相続人の範囲」の中で、代襲相続という制度に触れました。

代襲相続とは、本来、相続人となるべき人が、相続開始より前に死亡していたりした場合、その人の子が代りに相続人となることです。


今回は、この代襲相続に関して注意していただきたい最高裁の判例(最高裁平成23年2月22日判決)をご紹介します。

この判例は代襲相続と遺言書との関係に関するもので、遺産を特定の相続人(推定相続人といいます。)に「相続させる」旨の遺言書が作成されていたところ、遺産を相続させる予定であった推定相続人が遺言者よりも先に死亡してしまった場合に、推定相続人の子が遺産を代襲相続するかという点について、判断が示されています。

この問題については、従来、裁判例でも見解が分かれていたところでしたが、上記最高裁判決は、「『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、当該推定相続人その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、遺言は効力を生じない。」との判断を示しました。

遺言書における推定相続人が先に死亡した場合、遺言書の文言等からみて推定相続人の子供等に遺産の代襲相続をさせたいという遺言者の意思が明確となっていない限り、遺言は効力を失ってしまいます。

このことから、例えば、「●●の土地を三男◆◆に相続させる。」という遺言書が作成されていたとして、三男◆◆が先に亡くなってしまった場合、この土地を三男◆◆の子に相続させたいのであれば、新たに遺言書を作り直す必要があります。

また、もともとの遺言書を作成する際には、例えば、「●●の土地を三男◆◆に相続させる。但し、遺言者より先に三男◆◆が死亡した場合、●●の土地を三男◆◆の子である■■に相続させる。」といった補充規定を設けることを検討することが大切です。

ちょっとだけ知っておいて欲しいところです。



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代襲相続について1 ―相続人の範囲

2015-12-20 16:56:06 | 相続
相続についてのお話です。

知っておいて損がないものとして、代襲相続という制度に触れてみたいと思います。

代襲相続とは、本来、相続人となるべき人が、相続開始前に死亡していたり、相続欠格や相続排除によって相続権を失った場合(※)、その人の子が代りに相続人となることです。

本来、相続人となるべき人が、相続放棄をした場合には、はじめから相続人とならなかったものとみなされますので、代襲相続は生じません


代襲相続の典型は、親が死亡して相続が生じたが、法定相続人である子が既に死亡している場合です。

この場合、死亡している子の子(すなわち孫)が、子の代襲相続人として子の相続分を相続します(民法887条第2項)。

例えば、本来、相続人となるべき子の相続分が2分の1であったとして、その子の子(孫)が3人いるような場合、孫がそれぞれ相続分6分の1ずつを代襲相続するということになります。

このように子が死亡しているような場合の代襲相続関係は、孫も死亡している場合にはひ孫に、ひ孫も死亡している場合には玄孫(やしゃご)にと、下の世代に引き継がれていきます(民法887条第3項)。


ここまでは一般的にも知られていることではないかと思いますが、さらに、本来、亡くなった方(被相続人)の兄弟姉妹が相続人であり、相続開始時にその兄弟姉妹が死亡しているような場合にも、代襲相続が生じるということは知っておいた方がいいと思います。

すなわち、被相続人に子・孫といった直系卑属がおらず、親・祖父母といった直系尊属もいない場合(相続放棄しているような場合も含みます。)、被相続人の兄弟姉妹が相続人となりますが(民法889条第1項)、相続開始時にその兄弟姉妹が死亡しているような場合には、その兄弟姉妹の子(被相続人からみると甥、姪)が代襲相続によって相続人となります(民法889条第2項による民法887条第2項の準用)。

自分の配偶者が既に亡くなっていても、その配偶者の兄弟姉妹(自分の子供達からみると伯父(叔父)・伯母(叔母))が死亡すると、自分の子供達に相続が生じる可能性があるということです。

相続財産が+(プラス)の場合はいいでしょうが、相続では負債等の-(マイナス)の財産も承継しますので、配偶者の兄弟姉妹に多額の負債があるような場合には注意が必要です。

子供達が多額の負債を相続してしまうような場合には、相続放棄の手続きも検討する必要があります。


甥・姪の代襲相続関係は一代限りであって、相続開始時に甥・姪が死亡しているような場合にはその子や孫に代襲相続は生じません(民法889条第2項により、民法887条第3項が準用されていないことから)。

このあたり、民法の条文上、非常に分かりにくいところですが、「代襲相続は甥・姪まで」と覚えておくといいかもしれません。


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