弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

映画「トロイ」(ウォルフガング・ペーターゼン監督)

2018-08-17 16:56:06 | 本・映画

先日、間違って「トロイ ザ・ウォーズ」という映画のDVDを借りてきてしまいましたが、その後、あらためてブラットピット主演の映画「トロイ」を鑑賞しました。

壮大なスケールの映画で、風景も美しく(マルタ島で撮影されたそうです。)、話の筋も分かりやすかったため、家族みんなで楽しめました。


この映画の主役はもちろんブラットピット演じるギリシャの英雄アキレスです。

しかし、私にとって最も印象深かったのは、エリック・バナという俳優が演じたトロイの王子ヘクトルでした。(もちろん、ブラットピットもアキレス!という感じで良かったですが。)

戦士としての技量と、それをふまえた抜群の統率力。
国を想い、父を想い、妻や子の行く末を案じ、出来の悪い弟とその恋人を庇い、自分を犠牲にしてもすべての人を守ろうとする優しさと強い義務感を持ち合わせています。

詩人ホメロスの「イリアス」の中でもヘクトルは人材豊富なギリシャ勢に対し孤軍奮闘という感じで大車輪の働きをしていますが(ただし、時折、人間らしい弱さも散見されます。)、この映画のヘクトルは、パリスが「兄上は最高の男だ。」と言うように、理想的すぎる男として描かれています。

銀色に煌く美しい鎧兜がとても映えていました。


この映画の監督であるウォルフガング・ペーターゼンという人は有名な映画「Uボート」を撮った人ですが、私には、この映画、人気者のブラットピットを主演としつつ、実は理想化されたヘクトルをこそ描きたかったのでは、とすら思われました。
(そういえば、映画「Uボート」の頼もしい艦長とこのたびの映画のヘクトルとは顔立ちまで似ていたような気がします。)


そんなヘクトルをみて、うちの男の子達も大きくなったらあんな風になりたいと思ってくれないものかとちょっぴり期待してしまいましたが、全くそんな感じはなく、うちのお子ちゃま達、ヘクトルなんかよりのび太のほうがいいみたいです。

よくよく考えてみると、子供にとって、アキレスに惨殺されてしまうヘクトルなど決して共感の対象となりえないのは当然かもしれません。

親としても、ヘクトルの死を嘆き悲しむ父王(プリアモス)の姿を想うと、子供があまりにも立派過ぎるのは考えものなのかもしれませんね。
(今のところ全く心配無用・・)


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映画「トロイ ザ・ウォーズ」(パリスの供述?)

2018-08-15 04:48:08 | 本・映画

先日、三国志(赤壁の戦い)を題材とした大作「レッドクリフ」が子ども達に好評だったことから、今度はブラットピット主演で「トロイの木馬」を題材とした大作「トロイ」を観てみようということになり、DVDを借りてきました。

ところが、作品を見始めてからいくら経ってもアキレス役のブラットピットは登場せず、出てくるのはトロイ滅亡の原因を作り出したパリスとヘレネの二人ばかり。

これはおかしい・・ということでDVDの円盤をよく確認してみると、図柄の構成こそ大作「トロイ」と似ているものの、描かれた人物の顔はブラットピットと違うではありませんか。

うわっ、これは別物の映画「トロイ」です・・・

非常にガッカリしてしまいましたが、勿体ないので、とりあえず観てみることにしました。

ご承知のとおり、いわゆる「トロイの木馬」のお話は、詩人ホメロス作の「イリアス」でも描かれているトロイ戦争の物語を題材としており、トロイの王子であるパリスがギリシャのスパルタ王の美しい妃ヘレネを誘惑、略奪したことを原因に、ギリシャの軍勢が10年にわたってトロイの城を攻め続け、最後は木馬を使った策略で城が陥落、トロイが滅亡するというお話です。

この物語の中で、詩人ホメロスは、戦争の原因を作り出した張本人パリスを美しい女とみれば手を出す女たらし、戦場では口ばかりで陰から弓を射るのを好む卑怯者、といわれる男として描いています。

ところが、今回の映画の中で、パリスは、まったく正反対の男として描かれているではありませんか。

まず、容姿からして、誠実そうなハンサム顔、そして人並み外れて堂々とした体格をしています(大谷翔平君みたいに)。

このパリスは生まれた時から、将来、国を滅ぼす元凶となると予言され、父親である国王によって殺害を命じられて山に捨てられますが、親切な村人に拾われて、羊飼いとして育てられます。

その後、国の役人が飼っていた牛を理不尽に取上げていってしまったことから、怒ったパリスは、牛を取り戻すために城で開催される闘技会に羊飼いの姿のままで出場し、ボコボコにされながらも勝ち進んでいきます。

断固として権力に屈しない男、そして正々堂々と闘う男として描かれています。

パリスは、闘技会の決勝戦ではトロイの比類なき英雄である兄ヘクトルとも対戦します。

この映画では、このヘクトルですら、弟のパリスを将来の跡目ライバルとみて殺そうとするのであり、パリスに対する周囲のそして運命の過酷さを際立たせています。(ただし、ヘクトルだけは、後に、パリスの武勇に感じ入り、兄弟の絆が生じます。)

その後、パリスは、城に受け入れられますが、危険がある任務ということであえて選ばれ、単身、ギリシャのスパルタに使者として派遣されます。

そこで男たちの間で物のように扱われているヘレネと出会い、恋に落ち、自身スパルタ王に殺されそうになったこともあって、ヘレネと共にトロイへと逃げ帰ってきます。

決して誘惑したのではなく、虐げられた乙女を救ったことになっています。

その後、ギリシャ軍がトロイに攻め寄せ、兄ヘクトルもギリシャ側の英雄アキレスに討たれ、パリスがそのアキレスの足の腱を矢で射抜くというお決まりの筋となりますが、この敵方の英雄アキレスもつるつるスキンヘッドの太マッチョ、まるで野獣のような人間として描かれています。フーリガンにしか見えません・・

詩人ホメロスの描くアキレスは黄金色の長い髪をもった女とも見紛う若き美青年であり、「脚の迅いアキレス」と呼ばれるようにしなやかな体をしているはずなのだが・・

結局、トロイがギリシャ兵を乗せた巨大な木馬を城に引き入れることにより陥落してしまうという結末にはなるのですが、この映画、私には、「イリアス」という物語において、ホメロスという偉大な詩人の筆のせいで、約3000年にわたって世の人々に悪く言われ、嘲られてきたパリスが、一度、弁明の機会を与えられ、申し開きを行っている供述の内容に思えてなりませんでした。

たしかに、偉大なる詩人ホメロスも実は大ほら吹きであったという可能性は十分にあるわけで。

このようにパリスの申し開きと思って鑑賞するならば面白いといえなくもない映画でしたが、「イリアス」があまりに貴重な古典であるだけに、正直なところ、子ども達にはあまり見せたくない映画でした。

もともと「トロイの木馬」のお話をよく知らない子ども達、「フ~ン・・」という感じでしたが、唯一、何度叩きのめされても、「○○山のパリス~!!」と呼び出され、その都度、よれよれと闘技場に向かう羊飼いパリスの姿だけが印象に残ったようです。


追記:少し前、長男の算数の問題集の中で有名な「アキレスと亀」の逸話が紹介されていました。そこで、私は長男に対し、アキレスが俊足の代名詞であることや、踵以外が無敵となった経緯(アキレス腱のいわれ)等、得々と説明してました。そのため、今回、スキンヘッドの太マッチョがいきなり「○○のアキレス」と自己紹介したとき、長男は私の方をじ~っと見てました。どう思っていたのか?


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ジョン・マーテル「断罪弁護」(リーガルサスペンス②)

2018-05-04 06:57:41 | 本・映画

区立図書館に塩野七海作、「ギリシア人の物語」3巻を予約してから、2か月が経つのにまったく連絡が来ない。

近くの図書館で確認してみると、区内で全13冊あるのだが、現在、51人待ちの状況だということでした。

そこで、図書館にD・W・バッファの「審判」などと共にリサイクル本として置いてあったジョン・マーテル作、「断罪弁護」というリーガルサスペンスものを読みました。

上下2冊の長編ですが、一言でいうと、どっと疲れの出てくる小説でした。





簡単な筋書としては、巨大法律事務所で勤務することを夢見る野心家の青年が、アメリカの新型ステルス爆撃機開発に絡んだ墜落事故に関して、製造過程の問題を訴訟によって追求しようとするものです。

一応、民事裁判を内容としています。

とはいえ、新型爆撃機の構造に不適合なところがあったことを明らかにする証拠が全く見当たらない中、ようやく探し出した証人達は、皆、何者かによって消されてしまいます。
そして、主人公や友人でもある調査官の生命・身体も次第に脅かされていきます。

その過程がハードボイルドに描かれてはいますが、小説とはいえちょっと行き過ぎの感があり、次第に「こんなことしていたら、命がいくつあっても足らないよ。」といった白けた気分になってしまいました。

また、この小説においては、全編にわたって、主人公が「出訴期間」(裁判所に提訴することが出来る期間のこと)を一日徒過しているのではないかという不安定な状態がどんよりとした背景となっています。

日本でも債権の消滅時効の制度などがありますが、自分が訴えを起こしている請求権がもしかしたら時効で消滅しているかもしれないと危惧しながら裁判をしている状況など、考えたくないものです。



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ウイリアム・コフリン「逆転敗訴」(リーガルサスペンス①)

2018-04-22 07:37:40 | 本・映画

事務所の近くにある小さな図書館には、何故かリーガルサスペンス(法廷小説)ものが多く揃っています。

その中で最近面白かったものの一つが、ウイリアム・コフリン作の「逆転敗訴」という小説です。




物語の主人公は、ある巨大法律事務所で遺言検認を専門とする若手弁護士ですが、事務所の思惑によって遺言書の有効性をめぐる重要な訴訟事件(裁判)を独りで担当することになってしまいます。

この主人公が人生でこれまで一度も法廷に立ったことがないのに対し、相手方弁護士は地域で最も有名な法廷弁護士です。

困り果てた主人公は、相手方弁護士が昔書いていた法廷技術に関する古い教科書を一夜漬けで読み込み、不安いっぱいで裁判に臨みます。


この小説、
①刑事裁判ではなく、民事裁判をテーマとしている。
②作中で誰も殺されることはない。
という珍しいミステリーです。

それでも面白い小説になっているというのは驚きです。

訳者あとがきによると、作者であるウィリアム・コフリンという人は現職の裁判官だったそうで、読んでいたミステリーのつまらなさをぼやいていたところ、そんなことを言うのなら自分で書いてみるといい、と奥さんにそそのかされて、わずか10日で処女作となる小説を書きあげてしまった人なんだそうです

才能のある人は羨ましいですね。

本作は上・下巻で750頁くらいありますが、一気に読めます。

ちょっとした成長小説となっており、読後感もよいので、若い人にもお勧めです。


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「すぐやる脳」ってどうすれば?

2015-09-28 10:59:59 | 本・映画
我が家では、長男が小学生になってから、私が朝の勉強当番、妻が夕方の宿題当番をしています。

朝、タイトな時間の中に勉強時間が入ってくるため、長男にはきちんと時間どおり起きてきてもらわなければならないのですが、時にはいつまでも布団の中でグズグズしていて、布団から引きはがすためのバトルになってしまいます。

そんな日は、長男も気分が乗らずダラダラと勉強したりすることから、私も朝からイライラし、疲れ切ってしまいます。


そんな中、脳科学者の茂木健一郎先生の「『すぐやる脳』のつくり方」という本のタイトルに惹かれ、購読してみました。

「抑制のない軽やかな脳」の状態でいることで日頃の集中力や行動力を高め、新しいことにもチャレンジしていける人間になることを勧める内容の本で、読んでいると自分がスティーブ・ジョブスやマーク・ザッカ―バーグといった人たちにもなれるような気になる前向きで楽しい本でした。

この本は大人のための啓発本であって、子どもにやる気を出させるための本ではありません。

それでも、読んでいてふと思ったのが、長男にとって毎朝の私は、勉強することを命令する、そして、何をするべきかを一方的に決めてしまう存在であって、まさに、彼のやる気を削ぐ「脳の抑制」そのものではないかということでした。

子どもの頃、自分がそこから自由になりたいと思っていたものに、今、自分がなってしまっている、そんな気がしてしまいます。

たしかに、理想は、いつの日か、子ども達が、何のために勉強するかという目標意識を自らがもち、勉強の方法も自ら考えていく、そんな自律的な人間になってくれることではないかと思います。

そのためにも、塾などには頼りたくないですし、親がお役御免とされる日も早くきてほしいと考えています。

しかし、まだまだ小学校の低学年。自分で考える力は未熟です。

今は、とにかく毎日決まった時間に勉強する習慣を身に付けさせる、テストなどで結果が良かった時は家族みんなで喜ぶ、こんなことを地道に継続していくことが大切かな、そして、子ども達が自律的な「すぐやる脳」を作っていく過程において、親がある程度「抑制」的な存在になって脳を鍛える負荷となることも必要ではないのかな、と思いました。

勉強内容をいきなり複雑にしない、勉強にゲーム感覚を持ち込む、等といった工夫はしていきたいところですけれど。


このようなことを考えつつ、「私自身は仕事で、いつもすぐやる脳になれているだろうか?」と、わが身を反省しながら読み進めました。

もっと工夫できるところが、たくさんあるように思います。

「すぐやる脳」になるためには、どうすればいいのか?

最終的には、日々の仕事等に対する自分の姿勢を見つめ、自分なりに工夫していくことが大切ということになるのかもしれませんね。


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