弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

騒音問題(子どもの足音)2 -受忍限度とは?

2015-04-13 00:07:18 | ご近所
前回も書きましたが、下階住民との間での騒音に関するトラブルについては、下階住民の受忍限度を超えているかという点がポイントとなります。

この点、裁判などでは一般的に、受忍限度について「加害行為の有用性、妨害予防の簡便性、被害の程度および存続期間、その他諸般の事情を考慮し、平均的な人間の感覚や感受性を基準として判断する」とされています。

なんだか分かりにくいですが、騒音が下階住民の受忍限度を超えているとされた裁判例(東京地裁H24年3月15日判決、東京地裁H19年10月3日判決など)、超えていないとされた裁判例(東京地裁H15年7月30日判決、東京地裁H6年5月9日判決、東京地裁H3年11月12日判決など)をみると、以下の二点が重要なポイントと考えらえます。

1 下階に生じる騒音の音量と態様
東京都の条例では、住宅地(第一種区域)における騒音の規制基準は時間帯に応じて40デシベル~45デシベルと規定されています。
ところが、裁判例をみると、子どもが走り回ったり飛び跳ねたりすることで下階に及ぶ音量は、床の遮音性能が劣る場合には最大で65デシベルにも達し、床の遮音性能が相当程度に優れている場合でも50デシベルを超えることがあり、あらためて子どもの足音は下階に響くものであることが伺えます。
ただ、裁判例をみても、子どもが生活する以上、その足音が下階に及ぶことはある程度は仕方がないと考えられており、受忍限度との関係では、単に規制基準を超える音量が発生しているかどうかというだけではなく、

・騒音が長時間にわたって継続して生じているか、それとも、短時間ないし瞬間的に発生しているか。
・人の就寝が想定される夜間に騒音が生じているか。

といった点が、重要な判断要素とされています。

2 苦情に対する対応
裁判例の中には、下階住民からの苦情に対して「これ以上静かにすることはできない。」等と取り合おうとしなかったり、話し合いの際に乱暴な口調で応じていたことが不誠実な態度であるとされ、この点、受忍限度を超えると判断された要因となっている事案(東京地裁 H19年10月3日判決)がある一方、話し合った上でマンション管理組合理事長の立会いのもと発生音の確認が行われ、その後、床にカーペットや絨毯を敷いたり、子どもが室内で走りまわらないよう注意するよう心がけたことが評価され、受忍限度を超えないと判断された事案(東京地裁H15年7月30日判決)もあります。
こういった裁判例から、小さな子どもを持つ親が、下階住民との間で誠実な話し合いを行ったか、また、騒音発生防止の措置をとったといえるかという点が重要なポイントとされていることが分かります。


こういったことを踏まえると、マンション等の共同住宅において子育てをする親としては、小さな子どもの足音対策として、次のようなことが大切ではないかと考えるのです。

まず、下階の方から苦情を受けた場合はもちろん、そうでなかったとしても、フローリングには防音マットやコルクマットを敷くべきです。
業者のHP等をみますと、防音マットやコルクマットなどでは、重量衝撃音である子どもの足音が下階に伝わることを完全に防止することはできないとされていますが、相当程度に低減させる効果はあるようですので、出来うるかぎりの対処として必要と思います。(なお、裁判例をみても、子どもがいるからといって高額の費用がかかる床の防音工事などを行う必要は通常ありません。)

我が家でも、フローリングのリビングや廊下には50センチメートル四方に切り売りされた防音マットをびっしりと敷き詰めています。
なかなか優れ物で、子どもが飲み物をこぼしたりした場合、その箇所を取り外して水洗いができるので衛生的にも良です。
また、マットを敷き詰めた後も、床暖房は思った以上に効いていると思います。

次に、裁判例からは、マンション等の共同住宅で小さな子供を育てる親は、家の中で子どもを走ったり飛び跳ねたりして遊ばせない、走ったり跳んだりした時にはきちんと子どもに注意を与え、持続的もしくは頻繁に騒音を発生させることがないように努力することが必要です。

これって、幼児のお友達が集まるような日には、とくに要注意です。

厳しい要求のようにもみえますが、一軒家ではなく共同住宅に住む以上、他の住民に配慮しなければならないことは当然ということになるのでしょう。

そして、夜間の時間帯には一層の注意が求められますが、この点については、早寝早起きの規則正しい生活を心掛けるということに尽きるのではないでしょうか。

下階の方から苦情が出た時は、感情的にならず冷静に話し合いをし、対処出来るところはきちんと対処をする、そして対処した内容を丁寧に下階の方に伝えることが大切だと思います。

話し合いが感情的になってもつれそうな場合には、分譲の場合には管理組合、賃貸の場合には大家さんに間に入ってもらうことを考えてもいいでしょう、

対処をきちんとしていれば、通常、下階の方からの苦情は止むと思いますが、いくら対処をしても下階の方からの苦情が一向に止まない、嫌がらせ行為が続くといったような場合には、専門家に対応を相談する(相手次第では、「三十六計逃げるに如かず」で、他所に引っ越す)等の検討をしたほうがいいかもしれません。

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