弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

学習塾、家庭教師の解約 (関連商品の販売契約がある場合)

2018-07-03 14:13:05 | 学習塾・家庭教師

今回は、学習塾や家庭教師の契約において、合わせて「関連商品」の販売契約がある時の解約について、整理してみたいと思います。

「関連商品」とは、サービス提供を受けるに際し消費者が購入する必要がある商品として政令で定める商品をいい、学習塾や家庭教師のサービスでは以下のような商品がこれに該当します。

・書籍(教材を含む)
・カセットテープ、CD、CD-ROM、
 DVD等
・FAX、テレビ電話装置

商品が、消費者に対するお勧め商品(「推奨商品」)とされている場合、以下に述べるクーリングオフ等は認められませんので、契約書において商品が「関連商品」とされているかどうか確認することが大切です。


(1)契約期間が2ヶ月を超え、支払総額も5万円を越えるような契約の場合

①クーリングオフについて

前回 述べましたが、契約期間が2ヶ月を超え、かつ、支払総額(入会金や教材費なども含む)が5万円を超えるような学習塾や家庭教師のサービスは特定継続的役務提供というサービスに分類されています。

そして、消費者は、特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師のサービスに関する契約については、契約書を受領した日から8日間の間(契約書の受領日を含めて数えます。)、書面によりクーリングオフすることが出来ます。

この場合、消費者は、「関連商品」の販売契約についても、契約書を受領した日から8日間、書面によりクーリングオフすることが出来るとされています(特定商取引法48条2項)。
契約書でクーリングオフが出来ないと定められた消耗品は除きます。

消費者は、「関連商品」の販売契約をクーリングオフした場合、商品を事業者に返還することにより(返送料は事業者が負担)、「関連商品」の代金全額の返金を受けることが出来ます。

②中途解約について

次に、前回 述べましたとおり、特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師のサービスに関する契約については、仮に、クーリングオフが可能な期間が経過したとしても、消費者は、一定の金額の支出を負担することにより、契約を中途解約することが出来ます。

この場合、消費者は、「関連商品」の販売契約についても、中途解約をすることが出来ます(特定商取引法49条5項)。

ただし、中途解約をする場合、消費者は、商品を返還する際に、商品の通常の使用料相当額を上限額する金額を負担しなければなりません。
減価額が使用料相当額を超えるときは減価額が上限額となります。

この点、使用料相当額はどのように算定されるのか問題となりますが、具体的にみるならば、例えば、書籍の場合「包装を開封しただけでは商品価値は減少しないが、書き込みをすると商品価値が著しく減少する。一般的には、消費者は書き込みをした冊数の価格を負担し、書き込みをしていない冊数の価格が返還されると考えられる。」、DVD等のソフトの場合、消費者がダビング等をしたことを事業者が証明できるのでなければ、「使用日数を役務提供期間で日割り計算した割合を商品価格に掛けて使用料を算出する方法などが考えられる」とされているようです(以上につき、圓山茂夫著「特定商取引法の理論と実務[補訂版]」522~523頁参照)。

もちろん、契約書で中途解約の際の関連商品に関する返金額が規定されていて、返金額が上記の考え方に則っているのであれば、消費者はその金額の返金を受けることとなります。


(2)月謝制の学習塾、家庭教師の場合

月謝制の学習塾や家庭教師については、契約期間が2ヶ月を超えるとはいえず特定継続的役務提供に該当しないことから、「関連商品」の販売契約についても、クーリングオフや中途解約に関する特定商取引法の規定は原則として適用されません。

ただし、受講料は月謝制とされている学習塾や家庭教師であったとしても、合わせて長期間の学習サービスに対応するような高額な教材を購入しているような場合、実質的に見るならば、学習塾や家庭教師のサービスに関する契約や関連商品の販売契約は特定継続的役務提供に該当すると判断される可能性はあります。

したがって、月謝制の学習塾や家庭教師を解約したが、業者が多額の教材費について一切、教材の返還や返金に応じないというような場合、消費者センター等にご相談されてもよいのではないかと思います。




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学習塾、家庭教師の解約 (クーリングオフと中途解約)

2018-06-22 04:54:23 | 学習塾・家庭教師

文部科学省が公表している平成28年度「子供の学習費調査」によると、小学生のいる家庭における学習塾および家庭教師の利用率(支払率)は、公立小学校で学習塾:37.8%、家庭教師:21.8%、私立小学校で学習塾:69.1%、家庭教師:29.1%となっています。

都内等における平均利用率はより一層、高いと思われ、学習塾や家庭教師のサービスは現在、大きな市場を形成していると考えられます。

当然、学習塾や家庭教師などに絡む金銭的なトラブルも多く、今回は、私自身の手控えの意味もこめ、学習塾や家庭教師を解約する際の問題について整理してみたいと思います。

以下、特定商取引法という法律の規制対象となる長期の学習塾や家庭教師と、規制対象とならない月謝制などの学習塾や家庭教師に分けて考えていきます。


(1)契約期間が2ヶ月を超え、支払総額も5万円を越えるような契約の場合

特定取引法という法律において、契約期間が2ヶ月を超え、かつ、支払総額(入会金や教材費なども含む)が5万円を超えるような「学習塾」や「家庭教師」のサービスは「特定継続的役務提供」というサービスに分類されており、消費者側がクーリングオフや中途解約をする際のルールが明確に規定されています。

①クーリングオフ

クーリングオフは、消費者が一定の期間内であれば、無条件、無理由で契約の解除をすることが出来る制度のことです。

特定商取引法において、特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師の契約について、消費者は、契約書を受領した日から8日間に限り(契約書の受領日を含めて数えます。)、クーリングオフすることが出来るとされています。(特定商取引法48条)

※ 事業者が交付すべき契約書の内容等には細かな規制があり、これを満たした契約書の交付がなければ、クーリングオフの期間は進行しません。
※ 幼稚園受験や小学校受験のための学習塾や家庭教師、浪人生専門の学習塾や家庭教師は該当しません。

そして、クーリングオフは必ず書面でしなければならないと定められており、消費者は契約書受領日から8日間以内に、契約をクーリングオフする旨を記載した書面を事業者宛に発送しなければなりません。(8日以内に発送すれば足り、8日以内に事業者に届く必要はありません。)

書面の内容や発送日を客観的な証拠として残しておくためには、クーリングオフは内容証明郵便で行うべきです。

契約をクーリングオフした場合、消費者は、事業者に対し何一つ支払いをする必要はなくなり、既に支払った金員(入学金等も含む。)がある場合には、事業者に返金を求めることが出来ます。

※ クーリングオフに関して、契約書等で、上記より消費者側に不利な内容の条項が設けられていたとしても、当該規定は無効です。他方、より消費者側に有利な条項は有効です。

②中途解約

特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師については、仮に、クーリングオフが可能な期間が経過していたとしても、消費者は、以下の金額の支出を負担することにより、契約を中途解約することが出来ます(特定商取引法49条等)。
 
●サービスの提供開始前の場合

 学習塾は、1万1千円
 家庭教師は、2万円

●サービスの提供開始後の場合

ⅰ 既に提供を受けているサービスの対価
(契約締結時の単価による計算を上限とする)
          +
ⅱ 解約料
(その上限については、2万円(家庭教師は5万円)か、もしくは1か月分のサービスの対価相当額の、いずれか低い額)

たとえば、子どもを1年間契約の学習塾に授業料12万円(月あたり1万円)を支払って入塾させたが、合わないので3ヶ月だけで退塾(中途解約)させるような場合、親は既払金12万円から3か月分の授業料3万円と解約手数料1万円(授業料1ヶ月分相当額)の合計4万円を控除した11万円の返金を学習塾に求めることが出来ます。


※ 初めに入学金を支払っているような場合、これが「既に提供を受けたサービスの対価」といえるかにつき問題となりますが、一般的には、名目が入学金であったとしても、実質的にいわゆる初期費用に相当すると合理的に認められる範囲で「既に提供を受けたサービスの対価」に該当し、その範囲については返金を受けることが出来ないと考えられています。
※ 中途解約に関して、契約書等で 上記より消費者側に不利な内容の条項が設けられていたとしても、当該規定は無効です。他方、より消費者側に有利な条項は有効です。


(2)月謝制の場合

月謝制の学習塾や家庭教師については、1ヶ月単位で契約が成立しており、1ヵ月ごとに契約が更新されていると捉えられます。

したがって、月謝制の学習塾や家庭教師については、子供の親が「契約をやめます」と申し出さえすれば、契約は終了することになります。

このように、月謝制の学習塾や家庭教師については、契約期間が2ヶ月を超えるといえないことから、特定継続的役務提供には該当せず、クーリングオフや中途解約に関する特定商取引法の規定も適用されません。

そこで、例えば、翌月分の月謝を前払いした時点で退塾等を申し出た場合、前払いした月謝を返してもらえるか等といった問題については、法の規定は明確でなく、当事者間で契約する際に取り決めるか、契約を解約する際に話し合って決めることになると考えられます。

この点、学習塾の「夏期特訓講習」等のように、短期であっても多額の費用がかかるような契約の場合には、特に、契約する際に中途解約する場合の取り決めについて、きちんと確認しておく必要があります。

なお、契約書などで、中途解約につき、中途解約が行われる時期等に応じた合理的な返金額の定めがなされることなく、例えば、「契約を中途解約することは出来ません。」とか「中途解約をする場合、お支払いいただいた金員は一切、返金いたしません。」などと、消費者が中途解約することを不等に制限するような条項が設けられている場合には、消費者契約法9条、10条により、当該条項は無効となる可能性があります。

⇒合わせて関連商品の販売契約がある場合についてはコチラ




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