弁護士パパの子育てノート

3人の子供の子育てにかかわる日常の中で、「これってどうなんだろう?」と考えたことをいろいろと記してみたいと思います。

恐竜ブームがやってきた2 -化石は誰のもの?

2016-02-20 16:43:46 | 子育て
最近、子ども達が図書館で借りてくる恐竜図鑑が部屋中に転がっています。

どんどん恐竜博士になっていく子ども達。
まったくついていけない私。

そんな私にもちょっと面白いなと思えたのが、発見者の女性の名前にちなんで「スー」と名付けられたティラノサウルス(一番人気の肉食恐竜)の化石の話でした。

本によると、スーは発見されたティラノサウルスの化石の中では最大のもので、骨格の80~90%がほぼ完全な形で見つかったとても貴重なものだそうです。

ところが、このスーが発掘された場所は、アメリカ政府の管理するアメリカの先住民「スー族」の土地であったことから、政府が化石発掘会社から化石を没収し、裁判となった結局、化石はスー族の農場の持ち主のものとなった。その後、スーは1997年にシカゴ・フィールド博物館に830万ドル(約9億5000万円)で売られ、現在も展示されているとのことでした。

子ども向けの本に書いてあるにしては、何とも世知辛い話ではあります。
いや逆に夢のある話というべきか。

調べてみると、スーを巡る裁判の判決理由は「化石は不動産の一部である。」というものだったそうです。

この点、民法の注釈本によると、我が国では、古生物の化石は所有者のない動産(無主物)と考えられているとのことであり、民法239条で「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。」とされていることから、基本的には化石の所有権は発見者に認められると考えられます。

ただし、所有者のない動産(無主物)であったとしても、化石が文化財保護法における文化財に該当する場合があるとのことで、その場合、所有権が国に帰属し、発見者と土地所有者が一定の報償金を受けるといった関係になる可能性もあるようです。

法律上は上記のとおりですが、実際問題としては、化石の発掘作業を行うためには、地権者から許諾を得る必要があるでしょうから、その際に、発掘者と地権者との間で化石が発見された場合の権利関係等について取り決めがなされることになるのではないかと思います。



仕事と関係なければ、なんやかやと法律的な問題を考えるのも結構、楽しいものですね。


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代襲相続について2 ―遺言書との関係

2016-02-07 08:24:32 | 相続
先日、「代襲相続について1―相続人の範囲」の中で、代襲相続という制度に触れました。

代襲相続とは、本来、相続人となるべき人が、相続開始より前に死亡していたりした場合、その人の子が代りに相続人となることです。


今回は、この代襲相続に関して注意していただきたい最高裁の判例(最高裁平成23年2月22日判決)をご紹介します。

この判例は代襲相続と遺言書との関係に関するもので、遺産を特定の相続人(推定相続人といいます。)に「相続させる」旨の遺言書が作成されていたところ、遺産を相続させる予定であった推定相続人が遺言者よりも先に死亡してしまった場合に、推定相続人の子が遺産を代襲相続するかという点について、判断が示されています。

この問題については、従来、裁判例でも見解が分かれていたところでしたが、上記最高裁判決は、「『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、当該推定相続人その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、遺言は効力を生じない。」との判断を示しました。

遺言書における推定相続人が先に死亡した場合、遺言書の文言等からみて推定相続人の子供等に遺産の代襲相続をさせたいという遺言者の意思が明確となっていない限り、遺言は効力を失ってしまいます。

このことから、例えば、「●●の土地を三男◆◆に相続させる。」という遺言書が作成されていたとして、三男◆◆が先に亡くなってしまった場合、この土地を三男◆◆の子に相続させたいのであれば、新たに遺言書を作り直す必要があります。

また、もともとの遺言書を作成する際には、例えば、「●●の土地を三男◆◆に相続させる。但し、遺言者より先に三男◆◆が死亡した場合、●●の土地を三男◆◆の子である■■に相続させる。」といった補充規定を設けることを検討することが大切です。

ちょっとだけ知っておいて欲しいところです。



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