ドイツは、福島第一原発の放射能漏れの事故の直後から、国民がいち早く「ノー・モア・原発」 “ No more Nuclear Power Plant! ” と拒絶反応を示した国の一つでしょう。
国民の脱原発への強い希望を受けて、連立与党(メルケル首相)は30日、「11年後の2022年までにドイツ国内の原子炉17基すべてを停止」すると発表。主要国の中では最も早く、将来のエネルギー政策の方向転換、「脱原発」を打ち出したことになります。
デモで原発反対を訴えるドイツ市民(5月28日・ハンブルク)
「ドイツの連立与党は大きく政策転換し、2022年までに17基の原子炉をすべて停止すると発表した。
ドイツのメルケル首相は30日、政府が任命した委員会の提言に従って、8基の原発を直ちに停止し、残りについても大半を2021年までに停止すると発表した。3基は予備電力のために2022年まで稼動を続ける可能性がある。
メルケル首相は、数人の閣僚とともに決定を発表した記者会見の場で、『少なくとも私自身にとって福島第一原発の事故は想像を絶するものであり、原子力エネルギーの役割を再考する必要に迫られた』と述べた。
さらに、『この計画はドイツにとって大きな挑戦となるが、わが国を効率の高い再生エネルギー時代へ移行する最初の工業国とするチャンスだ』とも述べた。
メルケル首相は昨秋、一部の原子炉の耐用年数を当初計画より10年以上長い2030年以降まで延長する計画を発表して論議を呼んだばかりであり、今回の動きは180度の方向転換といえる。これは、2002年に社会民主党と緑の党による中道左派連立政権が決定した合意に実質的に逆戻りするもの。
日本の原発事故によってドイツ国内では原子力エネルギーに対する懸念が高まっており、福島第一原発が最初に爆発してから数日後にはメルケル首相は旧式原発7基を停止させ、原子力エネルギー戦略の見直しを命じていた。
その見直しに基づく今回のドイツ政府決定は、日本の原発事故を受けた国家の原子力エネルギー方針の転換としては最も大きなものだ。日本では原子炉の新規建設計画を実質的に凍結、台湾やイタリアは安全性を見直すため、新たな原発計画を保留としている。スイス政府は先週、最終的な脱原発を決定したが、段階的廃止案であり、脱原発の完全な実現は2030年以降となる可能性がある。
ドイツでは国民の7割ほどが原発に反対しており、ドイツほど原発が問題となっている国は少ない。福島第一原発事故が発生して以来、国内各地で数百件の反原発デモが行われてきた。
ドイツ産業界では、今回の決定は想定内ではあったものの、政治的な動機に基づいた性急なものであり、その結果、電力価格が高騰し、ドイツの競争力が脅かされると非難する向きもある。
ドイツの電力価格は既にこの10年で2倍になっており、国内電力の50%近くを消費するドイツ産業界は特にこの問題に神経を尖らせている。
30日、メルケル首相は、新たな脱原発方針によってドイツの再生可能エネルギー目標が影響を受けることはないと述べた。同目標では、2050年までに総発電量の80%を再生可能エネルギーとすることを目指している。現在、ドイツの消費電力のうち、再生エネルギーが占める比率は16.9%。
政府はまた、現在、総電力の22.6%を占める原子力発電の停止期限が厳しくなることで、それが再生可能エネルギーへの投資を促し、経済的恩恵となる可能性があるとした。」
(Patrick McGroarty and Vanessa Fuhrmans 5月31日・The Wall Street Journal)
「ドイツ・メルケル政権の連立与党は30日未明(日本時間同日午前)、遅くても2022年までに、現在電力供給の約23%を担っている原子力発電から脱却する方針で合意した。DPA通信など、ドイツメディアが伝えた。
東京電力福島第一原子力発電所の事故後、他国に先駆けて「脱原発」へと政策転換したドイツは今後、風力などの再生可能エネルギーを中心にした構造への転換を目指す。
メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟と姉妹政党のキリスト教社会同盟、連立相手の自由民主党の幹部が29日午後から協議していた。合意によると、現在17基ある原発を段階的に閉鎖し、大部分は10年後の21年までに止める。代替の電力源の確保が間に合わないなどの場合に備え、最後の3基の運転を1年間延長する選択肢を残した。」
( ドイツ、2022年までに脱原発 連立与党が合意 5月30日・朝日新聞)
こんな記事もあります。↓
福島第一原発事故による放射性物質拡散などに関する「海外」の情報リンクが、こちらのホームページにまとめられています。↓
海外からの情報(国際機関・研究所・メディアなど) - 福島原発最新情報
(時々、情報が更新されています。)