胃 癌 日 記 10
(遍路道は内子町の古い街道筋と並走し、やがて横切る)
11月19日(土)・20日(日)
大学の同期でともに学生運動を頑張ってきた同志・仲間たちの集いの同期会の年1回の集まりで伊勢へ行く。あいにく朝から雨が降っている。
数日前までは、今回が自分にとっては最後の集いかもしれない、などと「特別な」思いを持っていたが、PETの検査結果でとりあえず転移は無いとのことで少し気持ちは軽くなった。しかし私の胃癌の発見となった10月15日の胃カメラの前日は、薬剤ショックで同期仲間のS君が逝ったそのお通夜に参列してきたばかりだ。複雑な思いだ。
(内子歌舞伎が上演される、内子座)
(四国88箇所 第45番霊場 岩屋寺 岩窟の舞台から見る 境内)
19日は地元に住むF君夫妻の自動車に便乗させていただき、二見が浦で夫婦岩を見、その後展望スポットに案内してもらう。あいにく雨と強い風で展望は無かったが、楽しいドライブだった。夜はF婦人がメンバーであるエクシブの鳥羽に宿泊し、スパを楽しみ懇親会に昔を偲び旧交を深めた。この歳になると、心筋梗塞やら前立腺癌やら結構命に関わる「病気持ち」が増えてきている。私はというと、2006年に未破裂脳動脈瘤のクリッピングの開頭手術をしたが、至って健康で頑強である。しかし今年の同期会は少し違う。「これで仲間たちと顔を合わせるのは最後かなあ。」という思いがある。
勿論仲間たちには自分が胃癌であることは一言も言わなかったが、そんな少し鬱な気分も忘れるほど楽しい集いであった。
(岩屋寺本道と、岩窟の舞台)
翌日は伊勢神宮へ参り、おかげ横丁で土産を仕入れた後、伊勢にあるフランス料理店でフェアウェルランチ・パーティ。帰りの電車の都合で私は先に席を立ち、歩いて15分ほどの近鉄宇治山田駅へ行った。宇治山田駅に着くとなにやらこちらのほうをずっと見ている女性がいる。よく見るとGさんのようだ。私は学生時代に寮生活をしていたのだが、その時のやはり「同志」がGさんである。Gさんの方から声をかけてきた。
「【いそ】君と違うの?」
「Gさんに似てるなあと思っていたら、やっぱりそうか。何してんの、こんなとこで。」
振り向けば、寮時代の同志であるO君、W君らもいる。
「おう、久し振り。」
「何してたん。」
と聞くと、現在三重県に住んでいるやはり寮時代の同志である、T君が絵の個展をしているので見に来たとのこと。今から帰るとのことだが、私と同じ14時28分発の上本町行き特急だった。つかの間の旧交を、本当に偶然にも宇治山田の駅前で深めた。
「神様がこの世の名残に逢わせてくれた。」などとは思わずに、ラッキーなハプニングと思おう。
(岩屋寺から浄瑠璃寺へは、三坂峠を越える)
(続く)