日本人イスラム教徒ゆとろぎ日記 ~アナー・イスミー・イスハーク~

2004年に入信したのに、2003年入信だと勘違いしていた、たわけもんのブログです。

ロンドン自爆テロ実行犯18歳…思わず読み返した一冊の本

2005年07月15日 10時01分04秒 | 未分類
ヒジュラ暦1426年ジュマーダー・ッサーニヤ(6月)9日 ヤウム・ル・ジュムア(金曜日)

このあどけない表情の少年の「将来の夢」とは…?

 ロンドン同時多発テロの実行犯の正体が明らかになってきた。

 18歳の少年、22歳の青年、幼い子供を持つ30歳の男性…。言葉で表せる感情には限界がある。「悲しい」とか「残念」という言葉では汲みきれない感情がある。

 以前読んだ一冊の本を思い出し、読み返した。
 『正直な気持ちを話そう』(八木健次:撮影・著、たちばな出版)。

 写真家の八木氏が、パレスチナとイスラエルの若者45人にインタビューをし、彼らの写真を添えた本である。

 パレスチナ問題はさまざまなメディアで紹介されているし、学校の授業などでも取り上げられる。そこでは民族、宗教、歴史的経緯について説明される。
 しかし個人が見えない。特に若い人々が、将来を含めて何を思うのかがまったく見えない。
 この本は、そんな隙間を埋めてくれる貴重な一冊だと思う。

 表紙の少年ユセフ・カディブは14歳の中学生。パレスチナ人でイスラム教徒。
 彼は「将来の夢は何か?」という質問に対して「自爆」と答えている。
 決して、青臭い英雄幻想などではない。彼は7歳から、イスラエル軍に対する投石を始め、今まで25回撃たれている。友人が目の前で撃たれ、彼の膝の上で死んだこともあるそうだ。

 銃で25回撃たれ、ジープにひかれ、自白剤を飲まされて拷問を受け、目の前で友人を撃ち殺された中学2年生。日本ではあり得ない。
 彼の「将来の夢」を「それはいけないことだよ」と諭す自信は私には無い。だけど、彼の「夢」が実現すれば、罪のないイスラエルの人々がたくさん死ぬのも確か。
 何とも言えない閉塞感。

 パレスチナ人の怒りの矛先はイスラエルだけはない。自分たちを助けようとしなかったアラブ諸国に怒る15歳の女子中学生、「世界の沈黙」こそが悪いという18歳の無職少年など。

 イスラエルはイスラエルで、複雑な思いを抱えながら若者たちが生きている。
 人間の愚かさを冷めた目で見る無宗教の少女、世界に600人しかいないサマリア人の青年、パレスチナ人を弾圧したくないために兵役を拒否して投獄された18歳の青年、イスラエルで生まれ育ったアラブ人キリスト教徒の少女。

 ひとりひとりのにそれぞれの人生があり、思想・感情がある。

 ロンドンで自爆した18歳の少年は、どのような人生を送り、どのような思想・感情を持つに至ったのか? 
 もしかしたら、彼も自分の思いを「吐き出す場」があれば、あんなことをしなかったのではないか?
 この本を読んでいるうちに、そんな思いがこみ上げてきた。