ヒジュラ暦1426年ジュマーダー・ッサーニヤ(6月)6日 ヤウム・スラーサーイ(火曜日) |
エジプト行きの飛行機の中で知り合った、エジプト人女子大生から、昨日手紙が来た。
昨年8月、エジプトエアの中でハラール食(ムスリム用の食事)を食べていると、後ろの席の女子大生二人組が興味津々で話しかけてきた。
「あなたムスリムなの?」
とてもきれいな日本語だ。
二人はカイロ大学の学生で、日本の拓殖大学に1年間留学した帰りだった。
二人とも名前を「ディーナ」と言う。
ひとりは金髪にパーマ、紺色のオーバーオールを来て元気いっぱい。アメリカの牧場にいそうな感じの娘(?)。仮に「ダイナミック・ディーナ」と名付ける。
もうひとりは、グレーのスカーフで髪の毛をすべて隠し、黒いガラベイヤ(エジプトの民族服)を着て物静か。こちらは「サイレント・ディーナ」である。
エジプトの歴史やイスラームについて、飛行中いろいろとお話した。日本語がうまいので助かる。特にダイナミック・ディーナはよくしゃべる。
「日本語うまいねえ」
「ペロペロでしょ!」
「……。」
微妙だ。
彼女たちとは住所とメールアドレスの交換をして、カイロの空港で別れた。
しかし、彼女たちとてアラブ人、手紙が来るとは微塵も期待していなかった。
ところが、半年くらいして、サイレント・ディーナから日本語の手紙が来た。「お元気ですか? 私は元気です」式の、フツーの手紙である。
でも、やはりうれしかったねぇ。こちらも速攻で…と言いたいが、だいぶ遅れて返事を書いた。
辞書と格闘しながらアラビア語で書いた、初めての手紙だった。意味が通じるか不安なので、一応日本語も添えたけど。
私が住んでいる地域の風景の写真なども同封。
あれから数ヶ月。昨日仕事から帰ると、ポストの中にエジプトからの手紙を発見。
今回は、サイレント・ディーナの写真が入っていた。日本に留学中に長野で撮ったものだそうだ。
手紙はアラビア語、日本語両方入っていた。こちらのスタイルを真似してくれたらしい。
それにしても、封筒のファンシーなシールといい、カラーペンでの文字といい、感覚は日本の女子高生や女子大生と変わらない。
最初、手紙の雰囲気だけ見て、ダイナミック・ディーナの方かと思った。
物静かで敬虔なイスラム教徒であっても、普段の感覚は「やはり若い女性なんだなあ」と感じられるところがとてもうれしかった。
イスラム教徒は特殊な存在ではない。世界的に見れば「どこにでもいるフツーの人々」なのだ。
「コワイ」とか「日本人とはかけ離れた存在」という偏見を完全に払拭するためにも、ダブル・ディーナたちのようなイスラム教徒もいるということを、もっともっと知ってもらいたい。
手紙を読みながら、そんなことを考えた。