一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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『大砲と帆船』を読む。その2

2006-06-13 10:59:12 | Book Review
16世紀の帆船〈ガレオン船 "galeon"〉。
大西洋諸国家で生まれた火器搭載船である。

著者は、ヨーロッパ諸国の膨張の原因を、〈海軍革命〉―火器搭載船と海戦術との進展に見る。
「昨今の海戦は、相手の船への接舷移乗であるとか、弓矢や小銃や剣の大きな威力だとかにはほとんど関係なく、主に大砲を用いて遂行」
されたのである。

したがって、教科書に「ヨーロッパが非ヨーロッパから、初めての勝利を収めた戦い」として特筆大書されている、1571年の〈レパントの海戦〉も、「時代錯誤の戦闘」という解釈になる。
というのは、
「新しいタイプの艦船と武器が海戦に新たな時代を切り開き、新たな海上戦略を示しつつあったまさにそのとき、ガレー船どうしが接舷移乗(ボーディング)や体当たり(ラミング)を繰り返すことで戦われた」
海戦だからである。
したがって、文明史的には、「時代錯誤の戦闘」と言わざるを得ないのだ。

むしろ、著者が重視するのは、
「十六世紀前半のインド洋におけるポルトガルのイスラム教徒に対する勝利」。
この戦いは、まさに〈海軍革命〉を行なったヨーロッパ対、それのなかった非ヨーロッパとの戦いだからである。

さて、本書の記述の及ぶのは、18世紀までであるが、実はこの延長線上に日本の開国があったと見ることができよう。
「ヨーロッパの大砲の轟きは、中国人、インド人、そして日本人を、驚くべき現実へと目覚めさせた。彼らがそこに見たのは、沿岸に突然姿を現し、高性能の恐るべき武器で身を固め脅しをかけながら、現地人の生活に情け容赦もなく介入してきた風変わりな異人たちであった。商人を別にすれば、多くの分別あるアジア人にとってそれは悪夢であった。」
との記述は17世紀頃のアジアの情勢を述べたものであるが、この状況は19世紀になっても、ほとんど変わりがなかった、というよりは、蒸気船と鋼鉄砲の登場により、より一層シビアなものとなったのである。

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