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脱ネガティブを計るべく、浮きつ沈みつ漂う女の戯言日記

犬身

2007-12-10 | 本・映画
松浦理英子の久々の長編小説「犬身」。
待ってたよ~松浦さん。相変わらずちょっと異質な位置から愛を
捉える目線が、やっぱり好きだ。

自分は本当は犬なのに人間として生まれて来てしまった”種同一性
障害”と己を考える房恵。
好きな人に犬として愛され傍にいたいと願う彼女は、不気味で怪しく
でもどこか憎めない謎の男朱尾の手により思いを遂げる。
しかし愛する飼い主梓には思いがけない秘密があった・・・。

人間が犬に変身するというファンタジーながら、そこにはそれを不自然
と思わせない不思議な世界がある。
犬を飼った事のない私でも自然に溶け込めたから、きっと犬好きな人が
読んだならまた更に共感出来る事であろう。

「好きな人間に犬を可愛がるように可愛がってもらえれば、天国にいる
ような心地になるっているセクシュアリティね。」
”ドッグセクシュアル”と評されるその感情は「あの人の犬になりたい。」
という一言が妙に説得力がある。
物語は破滅的に進行して行くけれど、ラストはお伽噺のようなハッピィ・
エンド。
フサの嬉しそうに「ワン!」と吠える姿が頭に浮かぶ。
お話はハッピィ・エンドがいい。こちらもあったかい気持ちになれるから。
あっという間に読んでしまったけれど、久しぶりに松浦ワールドに浸れて
嬉しい時間を過ごせた。

でも私は出来るなら犬ではなく猫になりたいかな。
部屋の片隅に隠れる私の頭を、時々優しく撫でて欲しい。
目を細めてにゃあと鳴くから。