中国語学習者のブログ

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紅楼夢 第五回を読む

2010年03月27日 | 紅楼夢
 久々に、《紅楼夢》を読みたいと思います。

 紅楼夢の第五回では、賈宝玉が夢の中で警幻仙姑に導かれて太虚幻境を訪れ、「金陵十二釵正冊」という、彼を取り巻く十二人の美女たちの運命を記された帳簿を見せてもらうこと、また警幻仙姑から秘め事の手ほどきを受ける、という筋になっています。

 因東辺寧府中花園内梅花盛開,賈珍之妻尤氏乃治酒,請賈母,邢夫人,王夫人等賞花.是日先携了賈蓉之妻,二人来面請.賈母等于早飯后過来,就在会芳園游玩,先茶后酒,不過皆是寧栄二府女眷家宴小集,并無別様新文趣事可記.
・治酒 zhi4jiu3 一席設ける。酒宴を張る
・游玩 you2wan2 遊覧する
・女眷 nv3juan4 家族中の婦女子
 東側の寧府(寧国邸)の花園の梅の花が満開になったので、賈珍の妻の尤氏は宴席の用意を整え、ご隠居様、邢夫人、王夫人等を花見に招待した。この日、先ず賈蓉の妻を従え、二人で招待に来た。ご隠居様達は朝食後やって来られ、会芳園を見て回られ、先ずお茶の後、酒となったが、皆、寧、栄両邸の女たちの内輪の宴席であるので、別段書き記すべき趣向も無かった。

 一時宝玉倦怠,欲睡中覚.賈母命人好生哄着,歇一回再来.賈蓉之妻秦氏便忙笑回道:“我們這里有給宝叔收拾下的屋子,老祖宗放心,只管交与我就是了.”又向宝玉的奶娘丫鬟等道:“嬷嬷mo2mo,姐姐們,請宝叔随我這里来.”賈母素知秦氏是个極妥当的人 , 生的嫋娜繊巧,行事又温柔和平,乃重孫媳中第一個得意之人,見他去安置宝玉,自是安穏的.
・好生 hao3sheng1 (=好好儿地)よく。ちゃんと
・哄 hong3 あやす。機嫌を取る
・嫋娜 niao3nuo2 しなやかである。たおやかである
 しばらくして宝玉が疲れて、昼寝がしたいと言うので、ご隠居様はちゃんと面倒をみて、休ませるように言いつけた。賈蓉の妻の秦氏は愛想笑いをして答えて言うには、「ここには宝玉ちゃんのために用意した部屋がありますので、おばあ様、安心なさってください、私に任せていただけば大丈夫ですから。」また宝玉の乳母や女中達に向って、「おばさん、姉さん方、宝玉ちゃんに私について来させて。」ご隠居様はもともと秦氏がたいへんふさわしい人で、気性がたおやかで繊細で、行動がやさしくおだやかで、孫の嫁達の中で一番自慢に思っていたので、彼女が宝玉の世話をするのを見て、安心した。

 当下秦氏引了一簇人来至上房内間.宝玉抬頭看見一幅画貼在上面,画的人物固好,其故事乃是《燃藜図》,也不看系何人所画,心中便有些不快.又有一幅対聯,写的是:
世事洞明皆学問,人情練達即文章.
・燃藜図 rang2li2tu2 漢代、劉向が深夜、一人座って書を声を出して読んでいると、一人の仙人が現れ、手に青藜(アカギ)の杖を持ち、杖の端を吹くと火が出て、それで彼を照らすと、彼に多くの古書を教えた。ここから、《燃藜図》は古来、「勤学」をテーマとした絵として描かれた。
 秦氏が皆を連れて上房の奥の間に入った。宝玉が頭を上げると、一幅の絵が壁に掛けてあるのが見えた。絵の人物はよく描けていたが、その画題が《燃藜図》であったので、誰が描いたものか見ようともせず、心中不愉快であった。また一幅の対聯が掲げられ、そこに書かれていたのは、「世事を洞明するは皆学問、人情の練達は即ち文章(世事を洞察し、人間関係に練達するには学問を修めなければならない)」というものであった。

 及看了這両句,縦然室宇精美,舗陳華麗,亦断断不肯在這里了, 忙説:“快出去!快出去!”秦氏听了笑道:“是里還不好,可往那里去呢?不然往我屋里去吧.”宝玉点頭微笑.有一個嬷嬷説道:“那里有個叔叔往侄儿房里睡覚的理?”秦氏笑道:“噯喲喲,不怕他悩.他能多大呢,就忌諱這些個!上月你没看見我那个兄弟来了,雖然与宝叔同年,両個人若站在一処,只怕那個還高些呢.”宝玉道: “我怎麼没見過?你帯他来我瞧瞧.”衆人笑道:“隔着二三十里,往那里帯去,見的日子有呢.”
 この二句を見ると、たとえどんなに部屋の作りが美しく、飾りつけが華麗であっても、断じてここにいようとせず、急いで、「早くここを出よう!早くここを出よう!」と言った。秦氏はそれを聞くと笑って、「ここがだめなら、どこに行くの?そうでなければ私の部屋に行きましょう。」宝玉はうなずいてほほ笑んだ。するとひとりのばあやが言うには、「叔父様が甥御のお嫁様のお部屋でお休みになるなんてことがありましょうか?」秦氏は笑って言った。「あらあら、ご心配なく、うちの人が怒ることはありません。この子もまだいくつにもなっていないし、こんなことをやかましく言う必要はありません。先月私のあの弟が来たのをご覧にならなかった?宝ちゃんと同い年だけれど、ふたりが並んだら、あの子の方が少し高いかしら。」宝玉は言った。「どうして会わせてくれなかったの。その子を連れて来て会わせてよ。」皆は笑って言った。「ここから二三十里も離れているのに、どうやって連れてくるの。そのうちお会いになれますよ。」

 説着大家来至秦氏房中.剛至房門,便有一股細細的甜香襲人而来.宝玉覚得眼餳骨軟,連説“好香!”入房向壁上看時,有唐伯虎画的《海棠春睡図》,両辺有宋学士秦太虚写的一副対聯,其聯云:
嫩寒鎖夢因春冷,芳气襲人是酒香.
・眼餳 yan3xing2 まぶたがくっつきそう
・海棠春睡図 宋・釈惠洪《冷斎夜話》の記載によれば、唐の明皇(玄宗)は沈香亭に登り、楊貴妃を召したところ、時間がまだ卯の刻(午前5時から7時)で、まだ酔いから醒めておらず、高力士に命じて侍女を助けにやらせた。楊貴妃は寝起きで化粧は乱れ、髪の毛は茫々、皇帝にお目にかかれる状態ではなかった。玄宗は笑って、「妃子(楊貴妃)の酔いは、海棠(カイドウ)の花が眠り足らないかのようだ」と言ったという。ここから、“海棠春睡”ということばが生まれた。この話は世間に広く流布し、蘇軾は《海棠》と題した詩を作った。“東風嫋嫋汎崇光,香霧空蒙月転廊。只恐夜深花睡去,故焼高燭照紅粧。”これにより、より一歩、“海棠春睡”を人格化した。明代になり、“風流才子”と呼ばれた唐伯虎(唐寅)がこの話に基づき、想像力を発揮させ、《海棠美人図》の絵を描いた。《六如居士全集》巻三に、《題海棠美人》の詩にいう。“褪尽東風満面粧,可怜蝶粉与蜂狂。自今意思誰能説,一片春心付海棠。”
 注目すべきは、曹雪芹の祖父、曹寅(字は子清)は家に唐伯虎の描いた美人図を掛け、清の蒋景祁は《瑶華集》巻五の《臨江仙》に《為曹子清題唐寅美人図》と題した詞があることである。ただ、この絵が“海棠春睡”に関係するかどうかはわからない。けれども、《紅楼夢》の中で“海棠春睡”にまつわる話が何度も出てくるのは紛れもない事実である。例えば第十七回で、怡紅院の匾額を題するのに、客の一人が“祟光汎彩”と言い、第十八回で宝玉は《怡紅快緑》の詩の中で“紅粧夜未眠”と詠った。第六十三回で、湘云は詩の中で“只恐夜深花睡去”と言い、第六十二回で湘云が酔って芍薬の木陰で眠る描写も、読む者に曹雪芹が唐伯虎《海棠春睡図》を基にしていることを連想させる。
・秦太虚 すなわち秦観のこと。字は少游、また太虚といい、別に邗溝居士と号した。楊州高郵(今は江蘇省に属す)の人。北宋の文学家。宋神宗元豊八年(1085年)の進士。太学博士(即ち国立大学 教官)、秘書省正字、国史院編集官に任じられた。政治上は旧党に属する。彼と黄庭堅、晁補之、張耒で“蘇門四学士”と号し、蘇軾に師事した。
・嫩寒 nen4han2 肌寒い
 そう言うと、皆は秦氏の部屋にやって来た。部屋の入り口まで来ると、ほのかな甘い香のかおりがぷうんと鼻を突いた。宝玉はうっとりしてまぶたがくっつき、骨がとろけそうになり、「いい香りだ!」と何度も叫んだ。部屋に入り、壁を見ると、唐伯虎の描いた《海棠春睡図》が掛かっており、その両側に、宋学士、秦太虚の書いた一副の対聯が掛けられており、その聯には、
「嫩寒、夢を鎖(とざ)すは春の冷たさに因り、芳气、人を襲うは是れ酒香」
とあった。

 案上設着武則天当日鏡室中設的宝鏡,一辺擺着飛燕立着舞過的金盤,盤内盛着安禄山擲過傷了太真乳的木瓜,上面設着寿昌公主于含章殿下卧的宝榻,懸的是同昌公主制的聯珠帳.宝玉含笑連説:“這里好!”秦氏笑道:“我這屋子大約神仙也可以住得了.”説着親自展開了西子浣過的紗衾,移了紅娘抱過的鴛枕.于是衆奶母伏侍宝玉卧好,款款散了,只留襲人、媚人、晴雯、麝月四個丫鬟為伴.秦氏便分咐小丫鬟們,好生在廊檐下看着猫儿狗儿打架.
・飛燕 漢の成帝の后。その名の通り体が軽く、盤の上で舞ったという。
・太真 楊貴妃のこと。楊貴妃は道教に傾倒し、自ら太真と号した。
・木瓜 ボケ。木瓜海棠のことで、りんごに似た固い果実をつける。同じ“木瓜”でも亜熱帯地域の番木瓜はパパイヤのことで、これとは別者。
・寿昌公主 これは寿陽公主の誤りである。《太平御覧》巻三十に《雑五行書》を引用して次のような記載がある。“(南朝の)宋武帝の女、寿陽公主が人日(旧暦正月の七日)に含章殿の軒下で横になっていると、梅の花びらが公主の額の上に落ち、五出の花を成したが、払っても落ちなかった。皇后はこれをそのままにしていると、三日経って、洗うと落ちた。宮女たちはこれを奇異とし、それに倣った。今の梅花粧がこれである。”
・同昌公主 唐の懿宗・李漼の娘で、父親に愛され、駙馬の韋保衡に降嫁する際も、嫁入り道具は金の糸目をつけず、贅沢なものが揃えられた。聯珠帳もそのひとつで、真珠を連ねて帳(とばり)が作られた。
 テーブルの上には則天武后がその昔鏡の間に並べていたという宝鏡を置き、また一方には飛燕が立ちながら舞ったという金盤を並べ、盤の中には安禄山が楊貴妃に投げつけ、その乳に傷をつけたというボケの実を盛り、上手には寿陽公主が含章殿の下で横になったという寝台が置かれ、その上には同昌公主が作った真珠を連ねた帳が掛けられていた。宝玉は笑みを浮かべ、続けざまに「ここは良い!」と言った。秦氏は笑って言った。「私の部屋でしたら、仙人でもお休みになれますわ。」そう言うと、自ら西施が洗ったという紗の掛け布団を広げ、紅娘が抱いたことがあるという鴛鴦の枕を出してきた。そうしてばあや達は宝玉を寝かせつけると、静かに出て行き、後に襲人、媚人、晴雯、麝月の四人の女中が残され付き添った。秦氏は下女たちに、軒下で猫や犬が喧嘩をしないようにちゃんと気を付けるよう言いつけた。

 那宝玉剛合上眼,便惚惚的睡去,猶似秦氏在前,遂悠悠蕩蕩,随了秦氏,至一所在.但見朱欄白石,緑樹清溪,真是人跡希逢,飛塵不到.宝玉在夢中歓喜,想道:“這個去処有趣,我就在這里過一生,縦然失了家也願意,強如天天被父母師傅打呢.”正胡思之間,忽听山后有人作歌曰:
春夢随雲散,飛花逐水流,寄言衆儿女,何必覓閑愁.
 宝玉は目をつむるや、瞬く間に眠りについたが、なお秦氏が眼の前にいるような気がして、遂にふらふらと秦氏について行くと、とある所に至った。見ると、赤い欄干、白い石、緑の樹木、清い渓谷と、真に人跡まれで、浮世の塵の至らぬ所であった。宝玉は夢の中で大いに喜び、思った。「ここはすてきだ。私はここで一生暮らせたら、たとえ家を失っても構わない。毎日父さん母さんや先生に折檻されるよりよっぽどましだ。」あれこれ埒もないことを思っていると、突然、山の後ろから誰かがこう歌うのが聞こえた。
 春の夢は雲とともに散り、飛ぶ花は水とともに流れ去る。男の子や女の子たちに言っておきたい。どうして余計な心配ごとを探し求める必要があるのかと。

 宝玉听了是女子的声音.歌声未息,早見那辺走出一個人,蹁躚嫋娜,端的与人不同.有賦為証:
・蹁躚 pian1xian1 ひらひらと
・嫋娜 niao3nuo2 しなやかである。たおやかである
 宝玉が聞いたのは女性の声であった。歌声が止まないうちに、あちらから一人の人が歩いて来るのが見えた。ひらひらとしてしなやかで、端正なること、普通の人とは違っていた。賦に表わせば、こうなるだろう。

方離柳塢,乍出花房,但行処,鳥驚庭樹,将到時,影度回廊.
いましがた柳の堤を離れ、花を育てる温室から出てきたばかりだが、その行くところ、鳥は庭木に驚き、到着しようとする時、その人の影は回廊を渡って来た。

仙袂乍飄兮,聞麝蘭之馥郁,荷衣欲動兮,听環佩之鏗鏘.
 仙女の袂はひらひらと漂い、蘭と麝香の香りが馥郁と漂っている。蓮の花のように幾重にも重なった衣を動かそうとすると、環佩(輪状の装身具)の当たる音がリズミカルに聞こえてきた。

靨笑春桃兮,雲髻堆翠,唇綻櫻顆兮,榴歯含香.
 えくぼは春桃のよう、黒雲なす翠(みどり)の黒髪、唇はサクランボのように綻び、
ザクロのような歯は香を含んでいる

繊腰之楚楚兮,回風舞雪,珠翠之輝輝兮,鴨緑鵞黄.
 細い腰の楚々としているのは、風を廻らし雪を舞わせ、真珠や翡翠のきらきらとして
 いるのは、つややかな緑や黄色である。

出没花間兮,宜嗔宜喜,徘徊池上兮,若飛若揚.
 花間に出没しては、怒るに宜しく喜ぶに宜しい。池の周りを徘徊しては、飛ぶが如く
 揚がるが如し。

蛾眉顰笑兮,将言而未語,蓮歩乍移兮,待止而欲行.
 美しい三日月眉が顔を顰めると、言おうとして未だ語っていないよう。しなやかな
 歩みを移せば、止ろうとしてなお行く。

彼之良質兮,冰清玉潤,彼之華服兮,閃灼文章.
 彼の良質が羨ましい、氷のように清く玉のように潤いがある。彼の華服がうらやましい、
 あや模様がきらきらとまたたいている。

愛彼之貌容兮,香培玉琢,美彼之態度兮,鳳翥龍翔.
  彼の容貌が愛しい、香を培い玉を磨いたかのようだ。彼の態度が美しい、鳳が舞い上がり、龍が翔けるようだ。
 
其素若何,春梅綻雪.其潔若何,秋菊被霜.
 その素なるを何に譬えよう、春梅の雪に綻びるようだ。その潔なるを何に譬えよう、秋菊の霜を被るかのようだ。

其静若何,松生空谷.其艶若何,霞映澄塘.
 その静なるを何に譬えよう、松の空谷に生えるかのよう。その艶なるを何に譬えよう、霞の澄んだ池に映ずるかのようだ。

其文若何,龍游曲沼.其神若何,月射寒江.
 その文なるを何に譬えよう、龍の曲沼に遊ぶかのようだ。その神なるを何に譬えよう、月の寒江を射るかのようだ。

応慚西子,実愧王賦.
 正に西施にはずかしめ、実に王昭君をはずかしめる。

奇矣哉,生于孰地.来自何方,信矣乎,瑶池不二,紫府无双.
 奇なるかな、何処の地に生じ、何処より来るか。信なるかな、瑶池に二人となく、紫府に並ぶ者無し。

果何人哉?如斯之美也!
果たして何人か。かくの如く美しいのは。



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