中国語学習者のブログ

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四合院と風水の関係

2020年02月13日 | 中国文化

今回は、陰陽五行説から導かれる風水理論が、四合院の建築にどのような影響をもたらしたか、見ていきたいと思います。ただし、この内容、難しくて十分理解できないところもあります。自己流の解釈になっていますので、間違いがありましたらご指摘いただけるとありがたいです。

1.四合院の建物はどうして北側に南向きに建てるのが良いのか

中国の建物は、王宮である故宮からはじまって、多くの建物が北側に南を向いて建てられています。

これは中国の地理環境に由来します。中国は北半球にあり、太陽の光は大部分の時間、南側から地面を照らします。これより人々は家の採光の向きを決定しました。

また中国国内の大部分の地域は、冬に北寄りの風が多く吹き、夏は東南の風が多く吹きます。したがって、家を建てる時、「北側に南向き」に建てるというのが最良の方位の選択となったのです。

このような家屋は、冬至の時には、正午の太陽の位置が低いので、陽光が多く室内に入るようになり、室内温度を高める手助けになります。夏は太陽の位置が高く、家屋の軒が遮ってくれるので、灼熱の太陽光が直接部屋の中に刺し込むことはありません。このため、北側の南向きの家屋は冬暖かく夏涼しい効果を得ることができるのです。

2.門はどうして東南の角に設けるのか

北側にあり南向きなのが、正位置の四合院であり、その門は、敷地の東南角に開けられています。『周易』ではこう記されています。「巽は風の門であり、また地の戸口である。(中間略)風が吹く時は地から出発するので、地戸という。戸は窓や戸のことで、天地に通じる活力である。」つまり、八卦の中の巽、つまり東南の方位は、風の通じるところであり、それは家屋の窓のように、天地に通じることのできる活力の源とされたのです。


 
北から見た巽の方向(東南)

また、中国の伝統建造物は排水の滞りがないかどうかをとりわけ重視しました。四合院は四面を家屋で取り囲んでいて、中間が中庭です。それでは、雨が降ると、雨水はどのように排出されるのでしょう。北京の地形は、全体として通常西北が高く、東南が低くなっていて、水は西北から東南に流れます。こうして、東南角の排水能力が最も高くなります。つまり、排水に有利な点から言うと、屋敷の門を東南角に開ける必要がありました。それだけでなく、北京城の排水システムもこれと同じ考え方に基づき設計されていました。明、清時代の北京城内の水系は、西北の積水潭(現在の什刹海の前身)の水門より入り、東南、巽の方向の通恵河より出るようになっていました。明、清時代の北京紫禁城内の金水河は、神武門西側の地下道より水が入り、鑾駕庫(皇帝の乗り物の車庫が置かれた場所)の東南、巽の方向より出るようになっていました。


 
侯仁之『歴史上の北京城』より

3.トイレはどうして西南角に置くのか

トイレは敷地の西南角に設置する、これはこれまで四合院での普遍的なやり方でした。或いは「外院」(「里院」に対して言い、二の門の外の庭、及び庭の周りの建物)の西の「小跨院」(主だった建物の横の庭)、或いは「里院」(母屋の南の中庭)の西南角、廊下が折れ曲がる角の所にある「盝頂」(ルーディン。「耳房」のような小さな建屋)に設置しました。

中国の伝統的な風水の理論では、トイレの設置場所は重要な内容と見做されました。一般には家屋の中の重要でない場所に置かれ、部屋の門の真向かいに置いてはならず、風の通り道に置いてはならず、また裏口に面したところに置いてもいけません。このため、八卦の中の「煞位」(西南角。この方角には「白虎星」があるといわれる)が最も良い選択でした。ひとつにはこの方角は影に隠れるので、一般にここに足を踏み入れる人は少なく、二番目に八卦の体系の中で、「煞位」は一般に不吉な運勢をもたらす可能性のある場所と見做されました。ここにトイレを設ければ、人々の排出した汚物や汚い空気が不吉な運勢を抑えつけ、悪を以て悪を治める良い方法でした。しかもこのようにすれば、悪運を去り幸福をもたらすことができるとされました。昔の人は、トイレの位置の選択を間違うと、様々な問題をもたらす可能性があると考えました。例えば、八卦の中で「生」の方角にトイレを置くと、吉星を破る可能性があり、たいへん不吉です。また前後の門に面するのもよくありません。トイレが吉星を破ると、病気を運んでくるとされたのでした。

4.台所はどこに置くのがよいのか

風水の理論によれば、台所の設置は、「「煞」に坐して「生」を向く」の方位を満足させる必要がありました。すなわち、「かまどの土台は「煞」の方角にあるのが良く、炊き出し口は家の主人の運命の「生」、「天」、「延」の三つの吉の方向を向いているのがよい」とされました。他にも多くの方位にかまどを置いてはならないと専門の規定があり、さもないと、人や家畜が、これが原因で病気になるとされました。

上記の理論によれば、四合院の中で台所は、常に東側の家屋の南側の部屋、もしくは北側の部屋に置くか、或いは敷地の東北角に置く必要がありました。これに呼応して、四合院の中の食堂も、一般に東側の家屋に置かれました。

5.門はどんな寸法が適当か

中国古代の風水観では、建物の門は天や地、自然とつながる面で、神秘的な力、「通気(「気」を通じる)」を持っていると考えられました。もし四合院を一人の人に譬えると、門はその人の喉に当たります。そこからも、如何に門を作るか、どんな大きさの門を作るか、どのように門を取り付けるかは、その一挙手一投足が、全てに影響する一大事でした。門が分相応であれば、天地、自然に順応できました。それゆえ、家族が同じ家で共に暮らせる「気」が調和し、家内安全が実現できると考えられました。そうでないと、様々な悪運がもたらされかねません。昔の人々は「魯班尺」(魯班は古代の魯国の大工で、大工の始祖として崇められています)という物差しを作り、門の大きさを決定しました。この物差しは「門光尺」、「八字尺」とも呼ばれ、物差しは八寸(1寸は3.3センチ)あり、財、病、離、義、官、劫(ごう)、害、吉の八文字が記され、財、義、官、吉の4つが吉で、病、離、劫、害の四つが凶とされました。この神尺の吉の寸法で門を作れば、吉祥は思いのままで、一族の繁栄を実現し、祖先の名を高めることができると考えられました。門の寸法を決めるには、魯班尺を用いる以外に、「一白」「八白」などがありました。後者は大工が通常使うかね尺であり、一尺は十寸で、門を開ける高さ、長さの度量は、何れも「魯班尺」の裁定で解決できました。「魯班尺の八寸が唱える吉凶の分析は、吉が多く凶が少ないものを佳しとしなければならない」。したがって、門の高さ、幅は吉祥の数字を取るので、「魯班尺」に合わないといけないだけでなく、ちょうどかね尺の「一白」、「八白」の上に近づかないといけないとされました。


 
魯班尺

6.建物の全体の配置への要求

 風水の理論では、屋敷内の配置についても要求がありました。その中心の考え方は、部屋の向き、庭や池、通路が、「気」の活動の規律に合っているかどうかでした。「凡そ(四方を家に囲まれた)中庭が「財禄」(发财俸禄。役人になって俸給を得る、金が儲かること)の源になるには、母屋の向かいの家屋は「案山」の役割、つまり母屋ほど高くないが、程よい高さがあり、気の流れを妨げないのが良い。中庭が水で潤され狭ければ、財産が貯まる。前方の家屋の高さが高くも低くもなく、主客のつりあいがとれていれば、福を得る。」(『陽宅撮要』)


 
理想的な気の流れ

この思想では、全体から割り振りすべきで、後ろの家屋が前の家屋より背が高ければ、主従の関係となり、採光に有利で、また後ろの部屋の視線が妨げられません。同時に、左右両方の「廂房」(母屋の前方の両側の棟)が守護となり、中央に中庭を設けると、高さの違いにより秩序ができます。

 風水の理論は、室内の配置にも用いられました。ベッドを例にすると、風水の書物ではベッドを置く具体的な要求は、「凡そ床を安んずは生方に当たるべし、巽門坎宅の如し。」つまり、一棟の家屋の中で、寝室は「生気」(しょうげ。風水の吉の方角)の方角に配置すべきで、それはちょうど北側南向きの母屋(坎宅)で、東南の方向(巽の方向)が「生気の方」であるのと同様です。『陽宅撮要』でも、「床を安んず法は房門(部屋の入口)を主とする。「坐煞向生」(三煞(さんさつ)、つまり凶の方角に置き、吉の方角を向く)にすれば、自然と「発財生子」(金が貯まり、子宝に恵まれる)。」「床は房門と衝突するを恐れ、屏風で之を抵すれば佳なり。」その意味は、ベッドは「生気」の方角の部屋の中に置くべきで、ベッド自体の設置は「坐煞向生」、凶の方位の側に置いて吉の方位に向かなければなりません。もしベッドの向かいに入口があるなら、屏風を置いて目隠しをすると良いとされています。この他、鏡台やタンスの姿見の鏡がベッドに向かい合うのは避けなければなりません。鏡の機能は反射であるので、必然的に人体中の気を分散してしまい、体の健康に影響します。とりわけ夜間は陽気が弱いので、鏡がベッドに向かい合うのは避けなければなりません。