星空研究Memo

ここは某天文屋の外部記憶装置である。

Central Stars of Planetary Nebulae

2013-07-19 01:28:49 | 独り言

かすてんさんmeineko さんに触発されて、私も少し調べたことをメモ。
# ここでは 13 等星の都市伝説 (?!) の話題とは逸れますが (^^;
 

twitter で meineko さんが白色矮星の平均的な絶対等級と M57 までの距離から
中心星の見かけの等級はどれくらいになる?ということを言われていたので、
私はまずこの件を計算してみることに。

とりあえず理科年表を見ると M57 までの距離は 2600 光年とある。
パーセクに換算すると約 800 pc となる。 
で、白色矮星 (WD) の平均的な絶対等級は適当な HR 図を眺めて
とりあえず Mv ~ +15 mag として、見かけの明るさ (mv) を見積もった。
すると mv ~ 24.5 mag とかになる。

なんでも M57 の中心星 (mv) は 15 ~ 16 mag らしいので、これでは暗すぎる。
距離が間違っているか、あるいは強引に採用した絶対等級がおかしいのだろう。

距離は幾つか論文をつまみぐいしてみると、ばらつきはあるものの理科年表の値は
大きな間違いは無さそうだった。
さしあたって Harris et al. (2007) を眺めると、距離は約 700 pc、
V等級は約 15.7 mag とある。因みに B-V は約 -0.38 らしい。とても青い。
で、肝心の中心星の絶対等級は Mv ~ +6.3 mag とある (E(B-V) ~ 0.08)。

えっ、こんなに M57 (惑星状星雲; PNe) の中心星って明るかったんだ、と少し驚いた。
というのも、この値だとよくある HR 図上での白色矮星が分布する領域からは
かなり明るいところに位置することになる。 
Harris et al. (2007) には M57 以外の PNe 中心星の絶対等級が幾つか求められていて、
平均するとおおよそ Mv ~ +7 mag とかになる。つまり M57 だけじゃなくて PNe の中心星
ってのは、絶対等級が典型的な WD に比べるとかなり明るいようだ。

私の勉強不足ではありますが、
ここまで調べてみると、よく耳にする (?!) 「PNe の中心星は WD である」という話しが... 
なんだかしっくりこない感じがした。 (PNe 段階の中心星を WD と呼んで良いのだろうか?)

PNe の中心星はいったい何者なのか? ホンマに WD でいいの?と、気になって
(今、手元に文献が無いのでしかるべきテキストで調べられていないのですが)
とりあえず Web 版の理科年表を見てみると、
やはり PNe の中心星は WD であるというニュアンスで解説されている。

ふーむ、つまり PNe の中心星は出来立てホヤホヤの WD ということなのだろうか。
# twitter での某氏の返信によれば、文献によっては「準矮星」と記されていることもあるとか。 

因みに、Weidmann & Gamen (2011) によれば
銀河系の PNe は 3000 以上見つかっているけど、中心星のスペクトルに関する情報は全体の
13 パーセントしか無いらしい。カタログ・リスト (Acker et al. 1992, 1996 など) に載ってる
ものは半分以上が 15.5 等より暗いし、加えてばらまいたガスやら輝線やらで、
中心星の観測はなかなか難しいようです。 
# てことは、PNe の中心星って未知な部分がまだまだあるのかな?! 
# Wolf-Rayet みたいなスペクトルを示すやつもあるみたいだし。 


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