星空研究Memo

ここは某天文屋の外部記憶装置である。

ベランダ観測

2013-07-23 00:18:58 | 独り言

岡山を離れて数か月。
姫路の空はそれほど悪くなく、晴れの日は観測をしたい衝動に
ついついかられてしまう日々でした。

CCD (DSI pro II) を自前で持っているし、脚と筒があれば何か観測できる。
という企みを変光星観測者会議の懇親会でポロっと口にしたところ、
なんと Nga さん経由で meineko さんの Advanced GT 赤道儀をお借り
できることになり、妄想が具体化されることに☆
脚一式は Nga さんから懇切丁寧なメモと共に、即効で送られてきました。
ありがとうございました。

で、適当な筒を自分で買うことに!! 
はじめはビクセンの可愛らしいカタディオプトリックを考えていたのですが、
DSI pro II の素子サイズを考えると焦点距離の長い筒は導入に手間取るという
話しを Mhh さんや Nga さんからお聞きしたので、
13cm (F5) の反射を買うことに。メーカーはスカイウォッチャー。
値段は約2.5万円でお手頃でした。
# 因みに、ベランダは南西向きで、それ以外の方角はまったく見えません。
# コンパスで適当に南北出しをして、赤道儀を置いているので極軸はかなりいい加減。

Advanced GT の使い方に関しては、付属の日本語マニュアルを眺めておおよそ把握。
アライメントは2スターで行いました。

電源はとりあえず小窓を使って配線しています。
脚はベランダに設置 (& 通電) しっ放しですが、適当な雨除けカバーで
梅雨を乗り切れたので、しばらくこのまま運用してみようかと思います。
# 一応、近日中にコーナンで BOX を買って、コンセント部の雨除けをもう少し
# 工夫しようとかと考え中。

で、七夕に CCD を装着してファーストライト。
XY Boo (EW) を導入しましたが、極軸がいい加減なので30秒露出で星が棒になるし、
視野の外へすぐ逃げてしまいます。
ポーラーアラインという機能を使って極軸を追い込むことも考えましたが、
連続測光となるとどうせ視野から逃げていくし、
折角なので (?!) オートガイダーを使って対処することに。

色々悩んだ結果、岡山の大島さんの HP を見て、 Orion 社のオートガイダーに決定。
5cm のガイド鏡がセットになったものが $360 ほどであったので、
Amazon.com で買って、転送業者を利用して日本へ輸入。
これで観測に必要そうな機材が一通り揃うことに。



ちなみに
Advanced GT は Cartes du Ciel で制御、
DSI pro II は CCDSoft で制御、
ガイドカメラは PHD Guiding で制御しています。

制御 PC はノートを使ってベランダに放置し、
TeamViewer (フリー) という遠隔操作ソフトを使って
室内からおおよその操作が行える状態になっています。 
# この遠隔操作ソフトは変光星観測者会議の二日目、昼食のときに Nga さんに教わりました。

 

さて、オートガイダーは先日の日曜に届いたので、その夜に連続測光のテストを行いました。 
ガイド鏡の調整や PHD Guiding の設定に多少てこずりましたが、
とりあえず自宅での観測環境が整った感じ。

勢いにまかせて V508 Oph (EW) を Ic band で 1.5 時間ほど連続測光してみたのですが... 



ばらつきが大きいし、40秒積分ではちょっと露出不足だったかなぁという感じ。
# ガイドが成功して興奮してたのもあり、目的星より明るい比較星を選ぶのを忘れていたのもある(ry

測光には Nga さんの FitsPhot を使わせて頂きました。
とりあえず機材やソフトの使い方を一通りテスト (把握) 出来たので、
「データになりそうな観測」はこれからになりそうです。


Central Stars of Planetary Nebulae

2013-07-19 01:28:49 | 独り言

かすてんさんmeineko さんに触発されて、私も少し調べたことをメモ。
# ここでは 13 等星の都市伝説 (?!) の話題とは逸れますが (^^;
 

twitter で meineko さんが白色矮星の平均的な絶対等級と M57 までの距離から
中心星の見かけの等級はどれくらいになる?ということを言われていたので、
私はまずこの件を計算してみることに。

とりあえず理科年表を見ると M57 までの距離は 2600 光年とある。
パーセクに換算すると約 800 pc となる。 
で、白色矮星 (WD) の平均的な絶対等級は適当な HR 図を眺めて
とりあえず Mv ~ +15 mag として、見かけの明るさ (mv) を見積もった。
すると mv ~ 24.5 mag とかになる。

なんでも M57 の中心星 (mv) は 15 ~ 16 mag らしいので、これでは暗すぎる。
距離が間違っているか、あるいは強引に採用した絶対等級がおかしいのだろう。

距離は幾つか論文をつまみぐいしてみると、ばらつきはあるものの理科年表の値は
大きな間違いは無さそうだった。
さしあたって Harris et al. (2007) を眺めると、距離は約 700 pc、
V等級は約 15.7 mag とある。因みに B-V は約 -0.38 らしい。とても青い。
で、肝心の中心星の絶対等級は Mv ~ +6.3 mag とある (E(B-V) ~ 0.08)。

えっ、こんなに M57 (惑星状星雲; PNe) の中心星って明るかったんだ、と少し驚いた。
というのも、この値だとよくある HR 図上での白色矮星が分布する領域からは
かなり明るいところに位置することになる。 
Harris et al. (2007) には M57 以外の PNe 中心星の絶対等級が幾つか求められていて、
平均するとおおよそ Mv ~ +7 mag とかになる。つまり M57 だけじゃなくて PNe の中心星
ってのは、絶対等級が典型的な WD に比べるとかなり明るいようだ。

私の勉強不足ではありますが、
ここまで調べてみると、よく耳にする (?!) 「PNe の中心星は WD である」という話しが... 
なんだかしっくりこない感じがした。 (PNe 段階の中心星を WD と呼んで良いのだろうか?)

PNe の中心星はいったい何者なのか? ホンマに WD でいいの?と、気になって
(今、手元に文献が無いのでしかるべきテキストで調べられていないのですが)
とりあえず Web 版の理科年表を見てみると、
やはり PNe の中心星は WD であるというニュアンスで解説されている。

ふーむ、つまり PNe の中心星は出来立てホヤホヤの WD ということなのだろうか。
# twitter での某氏の返信によれば、文献によっては「準矮星」と記されていることもあるとか。 

因みに、Weidmann & Gamen (2011) によれば
銀河系の PNe は 3000 以上見つかっているけど、中心星のスペクトルに関する情報は全体の
13 パーセントしか無いらしい。カタログ・リスト (Acker et al. 1992, 1996 など) に載ってる
ものは半分以上が 15.5 等より暗いし、加えてばらまいたガスやら輝線やらで、
中心星の観測はなかなか難しいようです。 
# てことは、PNe の中心星って未知な部分がまだまだあるのかな?! 
# Wolf-Rayet みたいなスペクトルを示すやつもあるみたいだし。 


めもめも

2013-07-17 00:56:16 | 研究ネタ

Nova Mon 2012 関係をメモ:

Photometric evolution, orbital modulation and progenitor of Nova Mon 2012

Munari et al. (2013) arXiv:1306.1501

The 7.1 Hr X-Ray-Ultraviolet-Near-infrared Period of the γ-Ray
Classical Nova Monocerotis 2012

Page et al. (2013), ApJ, 768, L26

Optical Morphology, Inclination, and Expansion Velocity of the Ejected Shell
of Nova Monocerotis 2012
 
Ribeiro et al. (2013), ApJ, 768, 49

Fermi Discovers a New Population of Gamma-ray Novae
Cheung et al. (2013), arXiv:1304.3475

The spectroscopic evolution of the γ-ray emitting classical nova Nova Mon 2012.
I. Implications for the ONe subclass of classical novae

Shore et al. (2012), A&A, 553, 123

ガンマ線が受かったし、極大は見えなかったけど発見時も十分明るかったしってことで人気みたい。
自分も一石を投じるつもりで仕事の合間にチマチマ書いてましたが、ちょっと詰んだ感も(ry
# ところで2012年は新星豊作でしたが、この天体以外の論文は手薄な印象。
# 先にそれらに手を回す方が良いのかもしれない。

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KT Eri 関係をメモ:

Morpho-kinematical modelling of Nova Eridani 2009 (KT Eri)
Ribeiro et al. (2013), MNRAS, 433, 1991

Nova KT Eri 2009: infrared studies of a very fast and small amplitude He/N nova
Raj et al. (2013), MNRAS, 433, 2657

# 同じ雑誌で同じ号に KT Eri の論文が二本。

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最近の R. Williams 博士の論文をメモ:

Novae Ejecta as Discrete Adiabatically Expanding Globules
Williams (2013), arXiv:1306.6319

Origin of the "He/N" and "Fe II" Spectral Classes of Novae
Williams (2012), AJ, 144, 98 

# 最新 (2013) の論文には He/N, Fe II に関する模式図があります。
90年代の考えと比べると、スペクトルクラスの起源に関してはだいぶ考えが変わってきた感じ。
まだちゃんと読めてませんが、絵を見た感じではホンマかいなぁ?!
という印象も5割ほどですが... (^^;