M. Della Valle さんの Nova Populations を読んだのでザっとメモ。
# メモなので日本語として読みにくいのはご勘弁。
[概要]
新星の種族の割り当てに関するレビュー。銀河系と系外銀河の観測より新星には二つの種族があるそうだ。
(1) fast 且つ明るい新星: 主に重たいWDを持つ。thin disk/spiral arm の種族に関連
(2) slow 且つ暗い新星: 主に軽いWDを持つ。thick disk/bulge の種族に関連
[イントロ]
星の種族、つまり種族の違いが銀河内で異なる空間分布を持つということに関しては Baade (1944, 1957) による。新星の親星の種族の割り当てに関しても、Baade の概念が役立つみたい。
[銀河系における新星の種族]
新星の種族に関しては古くは1950年前後から議論されているそうな。例えば Kukarkin (1949) などによれば、新星の多くは銀河面や銀河中心に集中していると指摘し、それらを`disk population' に分類。一方でMinkowski (1948), Payne-Gaposhkin (1957) らは、新星と惑星状星雲(PNe)の銀経が似通った分布を持つと主張、ゆえにPNeに似た分布の新星は種族IIに分類。あと、T Sco みたいな球状星団で見つかった新星に関しても種族IIに分類さる(Baade 1958)。その他、銀河系 (太陽近傍) とM31のバルジで見つかる新星では、スペクトルが異なる (Tomaney & Shafter 1992) とか、色々と議論があったそうな。そんな中 Della Valle & Duerbeck (1993) は、M31, LMC, 銀河系における新星の種族に関して、減光率の累積的な分布の比較を行う。するとM31と銀河系では減光率の分布傾向に差異が認められないことを発見した (ちなみに M31 と LMC では有意水準で99%以上異なるそうだ)。つまり、新星の減光率 (スピードクラス)は主にWDの質量に依存するので (e.g. Shara 1981)、M31 と LMC において減光率分布が系統的に異なるのは、M31新星の種族とLMC新星の種族との間には物理的な違いがあるってことらしい。
[ディスク新星とバルジ新星]
90年代初頭にDuerbeck (1990) と Della Valle et al. (1992, 1994, 1995, 1998) は二つの新星クラスに対する種族 (fast 且つ明るい `disk novae' と slow 且つ暗い `bulge novae') を提案して、それらを定量的に評価している。Duerbeck は銀河系における新星の出現数が一つの (唯一の) 分布に従わないと主張。つまりdisk population と bulge population という二つの分布パターンがあるのだそうだ。 さらに Della Valle 達は減光率が銀河系内における新星の空間的分布と相関していることを見出した (つまり、ディスクには速い新星が比較的多いけど、バルジには遅い新星が比較的多いのだそうだ)。
この二つの種族 (disk novae & bulge novae) ってのは、減光率が銀経に相関していることが予想されるらしい。なるほど確かに、galactic anti-center (90°< l < 270°)には速い新星 (t3 < 20d)の寄与が大きく、galactic center (-90°< l < 90°)には遅い新星の寄与が大きい。
[減光率と銀河面上の高さとの関係]
新星の起源がバルジとthin disk にあるなら、initial-mass/final-mass 関係 (e.g. Weidemann 1990)より、親星のWD質量は銀河円盤の高さで系統的な違いを示すということが予想されるそうな。理論によれば、新星爆発の規模ってのはWD質量に強く依存していて (Starrfield et al. 1985, Kovetz & Prialnik 1985, Kato & Hachisu 1989)、一方で、新星の極大光度は減光率に相関していると言われている (Zwicky 1936, McLaughlin 1945, Della Valle & Livio 1995)。つまり、新星の減光率の分布はWD質量の分布をも反映しているということらしい。galactic height (z) vs. 減光率でプロットした図があって、減光が速いやつほどzが小さく、減光が遅いやつほどzが大きいという傾向が確認できる。他にも galactic height (z) vs. WD質量 でプロットした図があり、WD質量が大きいほどzが小さく、WD質量が小さいほどzが大きいという傾向が示されている。
あと、減光率 (log t2)の 度数分布なんかも示されている。分布が二峰性 (bimodal) になっており、`disk novae' が主に速い新星であるのに対して、`bulge novae' が主に遅い新星であることを示している。前者の分布は Mv = -8.7 でピークとなり、後者の分布は Mv = -7.2 でピークとなる。このような二峰性の存在は、M31 でも過去に確認されていたそうだが (Arp 1956)、あまり当時は重要視されなかったそうだ。
[ディスクと thick disk/バルジ 間の分光的な違い]
Williams (1992) は新星を二つのスペクトルクラス (Fe II novae と He/N novae) に分類した。Fe II class は膨張速度 (FWZI) が 2500 km/s 以下の遅いスペクトル進化を示し、極大あたりでバルマー線以外ではFe II の輝線が卓越する。He/N class は膨張速度が2500 km/s 以上の速いスペクトル進化を示し、極大あたりではバルマー線以外にヘリウムや窒素の輝線が卓越している。あと Fe II から He/N へ進化するハイブリットな新星もあり (e.g. V1500 Cyg) 、それらはFe II-b として分類される (ここで `b' とは輝線幅が広いという broad を意味する。物理的には Fe II クラスよりもむしろ He/N クラスに関連深いみたい)。
さてここで、Williams の分類に従って分けられた Fe II クラスと He/N クラス (Fe II-b も含む) の度数分布を galactic height (z) でもって見てみる。すると He/N クラスは銀河面の近くに集中する (z < 150pc) のに対して、Fe II クラスは z~1000pc にまで至って (均一的に) 分布しているそうな。一応 K-S 検定では二つの分布が > 95% のレベルで異なるみたい。つまり、かつて disk novae や thick dsik/bulge novae として分類された新星というのは、それぞれ Williams の分類 He/N や Fe II に一致する傾向にあることがわかる。速い且つ明るい新星の約70%が He/N クラス (+ Fe II-b) に属し、遅い且つ暗い新星は大部分が Fe II クラスに属する。He/N クラスのスペクトルは、激しい爆発によって放出されたシェルで形成されるので、He/N 新星が一般に重たいWDを持つであろうというのが尤もらしい。つまりHe/N 新星が重たい WD を持つということは、先ほどの、速い新星ほど z が小さいという話と、重たい WD を持った新星ほど z が小さいという話に帰結するそうな。
[系外銀河における新星の種族]
銀河系内での新星の種族を考える場合、観測のバイアス (主に星間吸収、銀河内での我々の位置) がどうしても気になってくる。こういった効果は系外銀河における新星の種族を研究すれば小さくすることが可能だそうだ。特に 1) 空間分布、2) MMRD、3) ハッブルタイプが異なると新星の出現率がどう違うか、など。
LMC, SMC, M33, M101, M51, M31, M81, NGC5128, NGC1316, M87, Virgo なんかの年間出現率、銀河のトータルB等級、色 (B-K)、距離指数、規格化された新星出現率、ハッブルタイプがテーブルで示されているが、ここでは割愛 (データは Shafter et al. 2000 などより)。テーブルを見た感じでは、新星の出現率が色とかハッブルタイプに関係していそう。
[空間的分布]
(保留)
[極大 (絶対) 等級 vs. 減光率関係 (MMRD)]
LMC, M31, Virgo の新星に対する MMRD 関係の図が載っている (Della Valle & Livio 1995)。この図を見ると、LMC に出現する新星が、速い且つ明るいものに偏っているように見られる。それに対して M31 の新星は顕著に遅いものが多く見られるそうだ。
(以下保留)
[新星の出現率は母銀河のハッブルタイプに依存するか?]
Della Valle et al. (1994) は、母銀河のK (Hも) luminosity (銀河のハッブルタイプ) によって、新星の出現率が系統的に異なるかもしれないと提案した。つまり晩期型 (渦巻銀河寄り) ほど新星の出現率が高く、早期型 (楕円銀河寄り) ほど新星の出現率が小さいそうな。先ほどから言われているように、ディスクの新星ってのは重たいWDを持つものが多いので、より短い時間で新星爆発を繰り返すことになる (Truran 1990)。つまりディスクがある銀河では新星の出現率がより高くなるってことみたい。しかしこの傾向は、M51 と M101 の新星出現率を研究した Shafter et al. (2000) によって疑問の声が挙げられている (see also Sharov 1993)。
# WD 質量が重いほど爆発に必要な質量が少なくて済む。
# Warner (1995), Hellier (2000) などにレビューがある。
[結論]
- 銀河系における新星の数と減光率の解析→新星の種族には disk と bulge/thick disk の二つが存在するということが導かれた。典型的な disk 新星は速い進化をし、極大で絶対等級は -9 等とかになり (t2 < 13d, t3 < 20d)、滑らかに減光していき、スペクトルは He/N ( or Fe II-b) を示す。 分布は 主に z < 150pc にあり、故に Population I に関連がある。 WD はそこそこ重たいものを持つ (1太陽質量以上)。一方で、典型的な bulge/thick disk 新星は遅い進化をし、極大で絶対等級は -7.2 等とかになり (t2 > 13d, t3 > 20d)、しばしば複数の極大を示したり、ダスト形成が起こったり、極大で standstill が見られたりする。スペクトルは Fe II を示す。分布は主に z が1000pc にまで広く分布しており、故に Population II に関連がある。WD は平均として軽いものを持つ (1太陽質量以下)。
- LMC, M31, Virgo の新星に関する MMRD 解析は減光率の分布具合が異なる。LMC における新星の80% は明るくて速く、故に平均として重たい WD に関連がありそう。しかし M31 における新星は、明るくて速いタイプは25% 以下になり、LMC と M31 では分布が明瞭に異なる (K-S 検定で > 99%)。空間的な分布 (nova population) は、M31 と M81 ではディスクとバルジが混合していそう。LMC と M33 では主にディスクから生じており、それに対してM87 と NGC1316 では主にバルジから生じていそう。
- 先の結果は、ディスク新星とバルジ新星における progenitor の年齢による違いが存在していることを示唆している。このことは最近だと Subramanian & Anupama (2002) によって証明された。彼らは LMC に現れる新星の周辺領域での星形成史を研究し、fast nova と slow nova の progenitor における種族が、それぞれ1-3 Gyr 以下、3-10 Gyr 以上であると主張した。
- ディスク新星とバルジ新星間の幾つかの違いというのは、理論をベースに推測される (Kolb 1995, Starrfield et al. 1998, Kato 1997)。
- LMC, M31, Virgo における MMRD の解析により、MMRD 関係から1等以上は外れる幾つかの (< 5%) super-bright novae というグループがあることがわかった。一つの可能性ある解釈としては、``super-nova'' 爆発が CV の障害の最後に起こるのかもしれないということである (Iben & Tutukov 1992, Iben & Livio 1993)。Nova LMC 1991 の研究によれば、金属量がこのような振る舞いを説明するためのパラメーターになるかもしれいそうだ。
[今後の課題]
新星の発生率が母銀河のハッブルタイプに依存するかどうかはまだ残された問題。 (以下保留)