星空研究Memo

ここは某天文屋の外部記憶装置である。

Nova Populations

2012-07-21 10:50:29 | 訳メモ

M. Della Valle さんの Nova Populations を読んだのでザっとメモ。
# メモなので日本語として読みにくいのはご勘弁。


[概要]
 新星の種族の割り当てに関するレビュー。銀河系と系外銀河の観測より新星には二つの種族があるそうだ。
  (1) fast 且つ明るい新星: 主に重たいWDを持つ。thin disk/spiral arm の種族に関連
  (2) slow 且つ暗い新星: 主に軽いWDを持つ。thick disk/bulge の種族に関連


[イントロ]
 星の種族、つまり種族の違いが銀河内で異なる空間分布を持つということに関しては Baade (1944, 1957) による。新星の親星の種族の割り当てに関しても、Baade の概念が役立つみたい。


[銀河系における新星の種族]
 新星の種族に関しては古くは1950年前後から議論されているそうな。例えば Kukarkin (1949) などによれば、新星の多くは銀河面や銀河中心に集中していると指摘し、それらを`disk population' に分類。一方でMinkowski (1948), Payne-Gaposhkin (1957) らは、新星と惑星状星雲(PNe)の銀経が似通った分布を持つと主張、ゆえにPNeに似た分布の新星は種族IIに分類。あと、T Sco みたいな球状星団で見つかった新星に関しても種族IIに分類さる(Baade 1958)。その他、銀河系 (太陽近傍) とM31のバルジで見つかる新星では、スペクトルが異なる (Tomaney & Shafter 1992) とか、色々と議論があったそうな。そんな中 Della Valle & Duerbeck (1993) は、M31, LMC, 銀河系における新星の種族に関して、減光率の累積的な分布の比較を行う。するとM31と銀河系では減光率の分布傾向に差異が認められないことを発見した (ちなみに M31 と LMC では有意水準で99%以上異なるそうだ)。つまり、新星の減光率 (スピードクラス)は主にWDの質量に依存するので (e.g. Shara 1981)、M31 と LMC において減光率分布が系統的に異なるのは、M31新星の種族とLMC新星の種族との間には物理的な違いがあるってことらしい。


[ディスク新星とバルジ新星]
 90年代初頭にDuerbeck (1990) と Della Valle et al. (1992, 1994, 1995, 1998) は二つの新星クラスに対する種族 (fast 且つ明るい `disk novae' と slow 且つ暗い `bulge novae') を提案して、それらを定量的に評価している。Duerbeck は銀河系における新星の出現数が一つの (唯一の) 分布に従わないと主張。つまりdisk population と bulge population という二つの分布パターンがあるのだそうだ。 さらに Della Valle 達は減光率が銀河系内における新星の空間的分布と相関していることを見出した (つまり、ディスクには速い新星が比較的多いけど、バルジには遅い新星が比較的多いのだそうだ)。
 この二つの種族 (disk novae & bulge novae) ってのは、減光率が銀経に相関していることが予想されるらしい。なるほど確かに、galactic anti-center (90°< l < 270°)には速い新星 (t3 < 20d)の寄与が大きく、galactic center (-90°< l < 90°)には遅い新星の寄与が大きい。


[減光率と銀河面上の高さとの関係]
 新星の起源がバルジとthin disk にあるなら、initial-mass/final-mass 関係 (e.g. Weidemann 1990)より、親星のWD質量は銀河円盤の高さで系統的な違いを示すということが予想されるそうな。理論によれば、新星爆発の規模ってのはWD質量に強く依存していて (Starrfield et al. 1985, Kovetz & Prialnik 1985, Kato & Hachisu 1989)、一方で、新星の極大光度は減光率に相関していると言われている (Zwicky 1936, McLaughlin 1945, Della Valle & Livio 1995)。つまり、新星の減光率の分布はWD質量の分布をも反映しているということらしい。galactic height (z) vs. 減光率でプロットした図があって、減光が速いやつほどzが小さく、減光が遅いやつほどzが大きいという傾向が確認できる。他にも galactic height (z) vs. WD質量 でプロットした図があり、WD質量が大きいほどzが小さく、WD質量が小さいほどzが大きいという傾向が示されている。
 あと、減光率 (log t2)の 度数分布なんかも示されている。分布が二峰性 (bimodal) になっており、`disk novae' が主に速い新星であるのに対して、`bulge novae' が主に遅い新星であることを示している。前者の分布は Mv = -8.7 でピークとなり、後者の分布は Mv = -7.2 でピークとなる。このような二峰性の存在は、M31 でも過去に確認されていたそうだが (Arp 1956)、あまり当時は重要視されなかったそうだ。


[ディスクと thick disk/バルジ 間の分光的な違い]
 Williams (1992) は新星を二つのスペクトルクラス (Fe II novae と He/N novae) に分類した。Fe II class は膨張速度 (FWZI) が 2500 km/s 以下の遅いスペクトル進化を示し、極大あたりでバルマー線以外ではFe II の輝線が卓越する。He/N class は膨張速度が2500 km/s 以上の速いスペクトル進化を示し、極大あたりではバルマー線以外にヘリウムや窒素の輝線が卓越している。あと Fe II から He/N へ進化するハイブリットな新星もあり (e.g. V1500 Cyg) 、それらはFe II-b として分類される (ここで `b' とは輝線幅が広いという broad を意味する。物理的には Fe II クラスよりもむしろ He/N クラスに関連深いみたい)。
 さてここで、Williams の分類に従って分けられた Fe II クラスと He/N クラス (Fe II-b も含む) の度数分布を galactic height (z) でもって見てみる。すると He/N クラスは銀河面の近くに集中する (z < 150pc) のに対して、Fe II クラスは z~1000pc にまで至って (均一的に) 分布しているそうな。一応 K-S 検定では二つの分布が > 95% のレベルで異なるみたい。つまり、かつて disk novae や thick dsik/bulge novae として分類された新星というのは、それぞれ Williams の分類 He/N や Fe II に一致する傾向にあることがわかる。速い且つ明るい新星の約70%が He/N クラス (+ Fe II-b) に属し、遅い且つ暗い新星は大部分が Fe II クラスに属する。He/N クラスのスペクトルは、激しい爆発によって放出されたシェルで形成されるので、He/N 新星が一般に重たいWDを持つであろうというのが尤もらしい。つまりHe/N 新星が重たい WD を持つということは、先ほどの、速い新星ほど z が小さいという話と、重たい WD を持った新星ほど z が小さいという話に帰結するそうな。


[系外銀河における新星の種族]
 銀河系内での新星の種族を考える場合、観測のバイアス (主に星間吸収、銀河内での我々の位置) がどうしても気になってくる。こういった効果は系外銀河における新星の種族を研究すれば小さくすることが可能だそうだ。特に 1) 空間分布、2) MMRD、3) ハッブルタイプが異なると新星の出現率がどう違うか、など。
 LMC, SMC, M33, M101, M51, M31, M81, NGC5128, NGC1316, M87, Virgo なんかの年間出現率、銀河のトータルB等級、色 (B-K)、距離指数、規格化された新星出現率、ハッブルタイプがテーブルで示されているが、ここでは割愛 (データは Shafter et al. 2000 などより)。テーブルを見た感じでは、新星の出現率が色とかハッブルタイプに関係していそう。


[空間的分布]
 (保留)


[極大 (絶対) 等級 vs. 減光率関係 (MMRD)]
  LMC, M31, Virgo の新星に対する MMRD 関係の図が載っている (Della Valle & Livio 1995)。この図を見ると、LMC に出現する新星が、速い且つ明るいものに偏っているように見られる。それに対して M31 の新星は顕著に遅いものが多く見られるそうだ。
(以下保留)


[新星の出現率は母銀河のハッブルタイプに依存するか?]
 Della Valle et al. (1994) は、母銀河のK (Hも) luminosity (銀河のハッブルタイプ) によって、新星の出現率が系統的に異なるかもしれないと提案した。つまり晩期型 (渦巻銀河寄り) ほど新星の出現率が高く、早期型 (楕円銀河寄り) ほど新星の出現率が小さいそうな。先ほどから言われているように、ディスクの新星ってのは重たいWDを持つものが多いので、より短い時間で新星爆発を繰り返すことになる (Truran 1990)。つまりディスクがある銀河では新星の出現率がより高くなるってことみたい。しかしこの傾向は、M51 と M101 の新星出現率を研究した Shafter et al. (2000) によって疑問の声が挙げられている (see also Sharov 1993)。

# WD 質量が重いほど爆発に必要な質量が少なくて済む。
# Warner (1995), Hellier (2000) などにレビューがある。


[結論]

  1. 銀河系における新星の数と減光率の解析→新星の種族には disk と bulge/thick disk の二つが存在するということが導かれた。典型的な disk 新星は速い進化をし、極大で絶対等級は -9 等とかになり (t2 < 13d, t3 < 20d)、滑らかに減光していき、スペクトルは He/N ( or Fe II-b) を示す。 分布は 主に z < 150pc にあり、故に Population I に関連がある。 WD はそこそこ重たいものを持つ (1太陽質量以上)。一方で、典型的な bulge/thick disk 新星は遅い進化をし、極大で絶対等級は -7.2 等とかになり (t2 > 13d, t3 > 20d)、しばしば複数の極大を示したり、ダスト形成が起こったり、極大で standstill が見られたりする。スペクトルは Fe II を示す。分布は主に z が1000pc にまで広く分布しており、故に Population II に関連がある。WD は平均として軽いものを持つ (1太陽質量以下)。
  2. LMC, M31, Virgo の新星に関する MMRD 解析は減光率の分布具合が異なる。LMC における新星の80% は明るくて速く、故に平均として重たい WD に関連がありそう。しかし M31 における新星は、明るくて速いタイプは25% 以下になり、LMC と M31 では分布が明瞭に異なる (K-S 検定で > 99%)。空間的な分布 (nova population) は、M31 と M81 ではディスクとバルジが混合していそう。LMC と M33 では主にディスクから生じており、それに対してM87 と NGC1316 では主にバルジから生じていそう。
  3. 先の結果は、ディスク新星とバルジ新星における progenitor の年齢による違いが存在していることを示唆している。このことは最近だと Subramanian & Anupama (2002) によって証明された。彼らは LMC に現れる新星の周辺領域での星形成史を研究し、fast nova と slow nova の progenitor における種族が、それぞれ1-3 Gyr 以下、3-10 Gyr 以上であると主張した。
  4. ディスク新星とバルジ新星間の幾つかの違いというのは、理論をベースに推測される (Kolb 1995, Starrfield et al. 1998, Kato 1997)。
  5. LMC, M31, Virgo における MMRD の解析により、MMRD 関係から1等以上は外れる幾つかの (< 5%) super-bright novae というグループがあることがわかった。一つの可能性ある解釈としては、``super-nova'' 爆発が CV の障害の最後に起こるのかもしれないということである (Iben & Tutukov 1992, Iben & Livio 1993)。Nova LMC 1991 の研究によれば、金属量がこのような振る舞いを説明するためのパラメーターになるかもしれいそうだ。



[今後の課題]
 新星の発生率が母銀河のハッブルタイプに依存するかどうかはまだ残された問題。 (以下保留)



Symbiotic Novae

2012-05-15 16:33:46 | 訳メモ
Symbiotic nova については Warner (1995) の p.303 に解説があります。
昔読んだのでちょっとメモメモ。


共生星ではときにゆっくりとした爆発現象が見られ、
そのとき晩期型星の吸収線とか H I, He I などの輝線を同時に示すみたい。
爆発中にスペクトル型は A 又は F へと変化、あるいは星雲線が次第に現れてくるそうだ。

1世紀くらいの期間に渡って非常に長い爆発を示すようなやつもいるそうで、
こういったのを symbiotic novae (sN) と称すらしい (Allen 1980)。
代表的なやつとして RR Tel など。
ちなみに RR Tel は very slow nova としても知られている。
Payne-Gaposhkin (1957) は共生星 (symbiotic star) のことを一般に symbiotic nova
と言ったみたい。詳しくは Galactic Novae の p.216 より。

# なんだか共生星の発見とか分類などの歴史的な経緯を含め
# symbiotic novae ってのは人によって分類の仕方も微妙に異なる印象を受けます。

Warner (1995) の表5.10 にこの時点で知られている sN がリストされてます。

 V1016 Cyg, V1329 Cyg, V2110 Oph, AG Peg, HM Sge, RT Ser,
 RR Tel, PU Vel, FG Ser, AS 338

てな感じ。どいつもこいつも数年単位でのゆっくりとした変化を示します。
爆発開始から極大に達するのも1~数年。
極大から1等暗くなるのに、数年~1世紀以上(ひぃ;

かつて Webbink et al. (1987) は V4047 Sgr を T CrB サブクラスの回帰新星として
提案したそうだけど、Allen (1984) は共生星として分類。
おそらく sN なんだろうとのこと。

それから いくつかの sN でv(exp)~100 km/s での質量放出が、
可視と電波観測の両方から明らかになっているそうで、
複数のシェルをなんかも伴っているそうな(Kenyon 1986)。
でも FG Ser とか AS338 では質量放出の証拠がないらしい。
つまり L(max) < L(Ed) ということみたいで、FG Ser みたいな爆発は
単に白色矮星の光球のゆっくりとした膨張と収縮なのかもしれないらしい。
質量放出があるような爆発では、モノが巨星の wind によって作られる星周ガスの中へと
突っ込んでいき、10^7 K 程度のショックが起こるそうだ。
ショック領域では v(exp) > 700 km/s とかになるらしい。


(続く... かも)

TOCP の日本語訳

2011-10-07 01:30:34 | 訳メモ
このページの荒削りな訳メモ。
instructions のページはまた後日 (^^;

===== ===== ===== =====

多くの種類の一時的な天文現象(例えば、彗星、新星、超新星など)の発見は伝統的に
CBATへ報告されます。 この事務局は、「彗星」、「超新星」、
「銀河系の新星 (galactic novae)」のような天体の呼称を割り当てる役目を担います。

このウェブページはこれまでの10年間、そこそこ首尾よく行われてきた "Unconfirmed
Objects Page" という前身に代わるものです (2011年1月1日からの活動のために2010年
に構想された)。その前身はこれまで CBAT のスタッフ達によって手作業で更新されて
きました。それとは対照的に、この新しいウェブページは自動で更新されるための
作業を世界中の天文学者 (観測者) 達が行い (CBAT を通して)、必要に応じて手作業で
CBAT スタッフによって行われ、この両方が自動で更新されるように設計されています。
このページは天文コミュニティにおいて興味深い新しい突発天体を即座に掲示し、
それに対する確認観測を呼びかけるための強い要望を載せます (従って、確認観測を
掲示するための場を提供し、将来的に複数の天文台での不必要な観測を防ぐのに役立つ。)

TOCPは静止している天体 (太陽系外の天体) についてのみ用いられるように設計されて
います。 データはユーザー登録した人だけによって直接 TOCP に投稿できます。
そして、登録ユーザーは RSS フィードにアクセスすることができ、新しい投稿メールを
受け取ることもできます。 TOCP へのアクセス (又は投稿) の会費代金はありません。
いったん情報 (items) が TOCP へ投稿されると、それらは RSS フィードとして
利用されるでしょう (CBET と IAUC に対する2009年以降のケースと同様)。
TOCP に投稿される発見報告は VOEvent システムに標準的な XML フォーマットで
自動的に送られるでしょう。

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ければなりません。登録についての指示と、このウェブ・ページへの投稿はここへ。

===== ===== ===== =====

訳メモ

2011-04-28 00:07:24 | 訳メモ
昔、訳したWarner (1995)のT Pyxの章の部分をメモがてら残す。
原文を見直すときの補助てきなものなので、変な日本語が多々あります。

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5.9.1 The T Pyx Subclass
   T Pyxは回帰新星の中でもユニークである。短い軌道周期を持ち(2.38時間)、そして爆発後比較的ゆっくりとした減光を示す。T Pyxは平均してT_R = 19年で、最も規則的な回帰新星である(他の爆発は遅れている。訳注1:1966年以後爆発の記録がない。爆発の記録は1890、1902、1920、1944、1966年となっている。訳注2:2011年に45年ぶりの爆発が確認)。T Pyxの全爆発において、この星は7日でm_V = 7.8まで立ち上がり、次いで20~30日という時間でm_V = 6.5まで異常な増光を示し、それからゆっくりと減光した(Payne-Gaposchkin 1957; Eggen, Mathewson & Serkowsli 1967)。極大から50~70日後の振動的な振る舞いは(Landolt 1970)、古典新星におけるトランジション・ステージに似ている。
   極大で、T Pyxは輝線スペクトルを持ち、A型星の吸収線はなく(Catchpole 1969)、小さい質量放出を示す。nova shellの解析からWilliams (1982)は近似的にソーラーアバンダンスを見つけた。約850km/sと2000km/sの膨張速度は爆発中にCatchpoleによって見つけられた。2重の星雲シェルが観測され、外側のシェルは約5秒角の半径を持ち、約350km/sで膨張していて、そしてそれは1944年の爆発に関係しているだろう。内側のシェルは約2秒角の半径を持ち、そしてこれは恐らく1966年の爆発の結果である(Shara et al. 1989)。放出されたシェルの質量は≲ 1×10^-4 M☉である。
   T Pyxまでの距離とM_V(max)は非常にはっきりしない。古典新星に対するM_V(max) – t2の関係を使うと、d = 2.1 kpcとなる。1944年起源の外側のシェルに対する計算だとd ~ 1 kpcとなる(Shara et al. 1989)。