石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

「1945年のクリスマス」お勧めです!

2013-05-06 23:13:38 | 活動レポート

1945年のクリスマス:日本国憲法に『男女平等』を書いた女性の自伝」を、ゴールデンウィークを利用して一気に読了しました。とっても価値のある本でした。お勧めです。もう読まれた方もおられると思いますが、まだの方、ぜひ読んでみて下さい! 表紙はこちら(出典:柏書房さんホームページより)
 


この本は、戦後、日本国憲法草案(の素案)がGHQ民政局によって作成されたときに、その草案づくりに携わったベアテ・シロタ・ゴードンさんの自伝です。ベアテさんは、当時、若干22才。担当したのは人権についてのセクション。彼女は、戦前、日本で子ども時代を過ごし、日本社会における女性の弱い立場を身をもって知っていたので、とりわけ「女性・母性の権利」について憲法にしっかり明記すべきだという立場で草案づくりに参加されたのです。

結論から言えば、彼女が提案した女性・母性の権利の個別条項の多くは、最終的に憲法には含まれませんでした。あまりに具体的な規定は憲法には馴染まないという理由で落とされたのです。しかし、彼女の提案の一部は24条などで具現化され、さらに人権条項全般において男女平等が基本原則として普遍化されることにつながりました。つまり、シロタさんの提案とがんばりがなければ、女性の権利は憲法に書き込まれなかった可能性があったということですね。

さて、この本の目次は以下の通りです:

プロローグ 再会―1945年12月24日
 焦土の日本に帰る
 父と母の町・ウィーン
 乃木坂の家の日々
 大戦下のアメリカで暮らす
 日本国憲法に「男女平等」を書く
 既婚女性とやりがいのある仕事
 新しい道 アジアとの文化交流
エピローグ ケーディス大佐と日本を訪れて―1993年5月


何と言っても、第5章の「日本国憲法に『男女平等』を書く」がメインなのですが、それ以前の章も、戦前の様子や、終戦後間もない頃の東京の荒廃した様子などが描かれていて大変参考になります。そして第5章では、なぜ、憲法草案がGHQの民政局メンバーによって作成されることになったのか、どういうメンバーがどういう思いを持ってこの草案を作成したのか、そして9日間に及ぶその作成のプロセスが克明に描き出されています。

いろいろ得るところの多い本でしが、その中で、私がとっても大事だと思ったことを、以下、3点だけメモしておきます。

まず、もしあの時、憲法草案の作成が純粋に日本政府側(当時の権力者)だけの手に委ねられていたら、その結果出来上がった憲法は、ほぼ明治憲法(大日本帝国憲法)と同じようなものになっていたであろうということです。最初に日本政府が独自に作成した草案は、ほぼ明治憲法と同じ内容であったという事実、そして、GHQの草案に対して政府側はさまざまに抵抗を試みたという事実からもそのことが分かります。つまり、GHQ草案が無ければ、立憲主義も、国民主権も、基本的人権の尊重も、平和主義もない、相変わらず国が国民を統制する国家体制になっていた可能性が大であったというわけです。

第二に、原案を起草したGHQのメンバーは、当時のあらゆる国の革新的な憲法を参照した上で、立憲主義を基本に、日本国民のために、とりわけ女性のために、個々人の権利と幸福が最大限に尊重される理想的な憲法を策定しようと努力されたということです。結果、憲法全体の約3分の1が人権に関する条項になった(=憲法103条のうち、31条が人権条項)わけですが、これだけ国民の権利が憲法上、保障されているというのは、世界的にもまれなことで、誇るべき素晴らしいことなのです。もちろん、9条によって戦争の放棄を宣言したことも!

そして第三に、憲法の作成過程においては、日本側の関与が最初から最後まであったのだ、ということです。草案(原案)を作成したのは結果的にGHQになったわけですが、GHQはその作成にあたって、当時の日本の法律学者・専門家らが作成した憲法草案を相当に参考にしていた、とのことです。そして、GHQの草案原案から最終的な憲法になるまでの間には、それなりのプロセスがあり、議論があり、さまざまな修正が加えられていたのです。つまり、日本側の関与は確かにあったのです。

「現行憲法は押しつけられたものだ」という主張がありますが、実は、押しつけられたと文句を言っているのは国(=権力者)の側であって、国民ではないのです。当時も、そして今も、国民の側は、立憲主義に基づき、国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義(戦争放棄)を日本のあるべき姿として定めている日本国憲法を歓迎しているのではないでしょうか。

私にとっても、あらためて多くのことを勉強させてもらった本でした。憲法改正問題が議論されている今だからこそ、皆さんにもぜひ読んでいただきたい本です!


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です (羽山治美)
2013-05-07 13:42:11
 石橋様 憲法論議、参考になります。特に全文に対する貴兄の見解に、全面的に同感です。よろしければ、そのまま学習会等の資料として使わせていただきますがよろしいでしょうか?
「1945年のクリスマス」買って読みます。
ありがとうございました。
>同感です (羽山治美) (石橋)
2013-05-07 23:07:26
羽山さん、コメントありがとうございます。どうぞどうぞ、ぜひ資料としてお使い下さい。今後も憲法問題についてアップしていきますので、またご意見などお寄せいただければありがたいです。

引き続き宜しくお願いします。

石橋

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。