石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

大学の後輩と保育所と待機児童問題について議論 その1

2010-01-16 23:57:45 | 政策
昨日、大学時代の後輩K君と久しぶりに会って話をしてきました。私が大学時代に、中央大学プロデュース研究会という企画系サークルに入っていたことはプロフィールでも紹介していますが、そのプロデュース研究会で私の次の代表をやってくれたのが、このK君です。

卒業後、しばらくそっちの業界で仕事をしていたK君ですが、今、親御さんの仕事を継いで私立保育所の運営に携わっています。昔の彼を良く知っている私たちには「えっ?」という感じなのですが、本人は違和感なく、とても楽しんで仕事をしているようです。

かねがね、待機児童問題が深刻な首都圏で「なぜ認可保育園が増えないのか?」という点に疑問を持っていた私としては、K君は格好の相談相手! 昨日も、久しぶりに会ったにもかかわらず、時間のほとんどをこの保育所と待機児童問題についての話に費やしてしまいました。

それだけ、K君の話は興味深い内容だったのです。さすが、現場の最前線で保育所の運営に携わっているだけはあります。

例えば、認可保育所の定員について(東京都の例)。認可保育所の定員は一応、60名以上ということになっていて、その上で各保育所毎に定員数が定められています。ところが、この定員数には「弾力化」が認められていて、4月1日の時点では定員の115%まで、5月は125%、10月以降は無制限(ただし、面積と職員配置基準の枠内で)に定員以上の児童を受け入れることが可能なのだとか。これって不思議です。それだけ受け入れ枠に余裕があるなら、4月1日の時点からもっと定員を引き上げておけばいいのではないかと思うのですけどね(年度途中から転入してくる児童のことを想定して余裕を持たせているのかも知れませんが、結局次の年の4月1日になると、また115%以内に児童数を収めなければならなくなります。だから不思議な仕組みなのです)。
(参考:国の基準を元にして策定された東京都の認可基準

また、待機児童問題が社会問題化している今日、役所の仕事はとにかく「待機児童数をなるべく少なく見せること」なのだとか。

例えば、昨年の保育所待機児童数は約2万5千人(詳細はこちら)とされていますが、これは4月1日時点での話。この数字を少なく抑えろ!というのが上からの指導なのです。そのテクニックがまた面白い。例えば、認可保育所への入所を希望する場合には第一希望から第三希望(または第四希望)までの希望を出さなければならないのですが、送り迎えが可能な保育所が一カ所しかないなどの理由で第一希望しか出さなかった場合、そこに入れなかったとしても「自己都合(自分の勝手)」とされて待機児童数には算入されないとか。また、家から離れたところにある保育所に空きがあって、そこを紹介された時に「遠くて送り迎えできないから」と断りを入れると、これも「自己都合」となって待機児童から除外されるとか・・・。

そもそも、「待機児童数の定義」そのものが変更されているのです。

以前の定義(旧定義)は、「認可保育所への入所申込みをしており、入所要件に該当しているが、入所していない児童の数」でした。ところが現在の定義(新定義)は、「旧定義に該当するもののうち、認証保育所・保育室・家庭福祉員・自治体独自の施策等で保育を受けている者、及び近くに入所可能な保育所があるにもかかわらず、保護者の都合で入所しない者を除いた児童の数」になっています。

現在発表されている待機児童数といのは、この新定義の下での数字で、旧定義を使えばその数は格段に大きくなるのです。

役所の申込窓口には、地域の認可保育所の一覧が張り出されているのですが、その一覧ではほとんどの保育所が定員一杯か、すでに多くの希望者が待っていることが示されていて、「希望しても無理ですよ~」という雰囲気がつくり出されているのだとか。申込にはやたら面倒くさい手続きが必要なので、それで申請を断念する親御さんも多いでしょう。

こういう状況って、実際にお子さんを認可保育所に預けようと試みて断念された方々はみな経験してらっしゃることなのでしょうね。実態としては「85万人の潜在的待機児童がいる」というのも肯ける話です。

結局は、「財政難」という大義名分の下で、認可保育所に今以上の予算を付けたくないという自治体側の都合が大きいということなのでしょうか。既存の認可保育所の定員を増やしたくないのも(増やせば補助金の額が増える)、待機児童数を少なく見せたいのも(多くなれば保育所を増やせという圧力がもっと強まる)、補助金額を抑えたいという自治体の思惑からなのでしょう。2004年に公立保育所の運営費が一般財源化されたことが大きかったのかも知れません。

結局、認可保育所に入れなければ、あきらめる(=両親のいずれかが就業を断念する)か、利用料が格段に高い(かつ基準の甘い)認可外保育所に預けるか、余裕がある場合には延長保育を充実させている私立の幼稚園に入れるか、という選択肢しかないわけです。ここでも、親の財政的な状況によって、子どもの保育に格差が出てくるわけですね。

(つづく)