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「渇きと偽り」 いずれ終わる

2018年02月19日 | もう一冊読んでみた
渇きと偽り/ジェイン・ハーパー  2018.2.19

    2018年版 このミステリーがすごい!
    海外篇 第7位 渇きと偽り


    早川オンライン渇きと偽り

ベストセラー作家のディヴィッド・バルダッチは本作を「これまでに読んだなかで最も衝撃的なデビュー作のひとつ」と絶賛しているが、同様の感想を持たれた読者も多いのではないだろうか。(訳者あとがき)

    正にその通り。

ぼくも同様の感想を持ちました。
面白い小説を心ゆくまで堪能しました。
もっとも終盤になるまで、誰が犯人なのか特定出来なかったが。
「誰かな誰だろう」、と犯人を消去法で探しながら読み進むのも結構楽しかったです。

面白いミステリーですが、青春小説としても読めます。

 「ふたりは喧嘩をしたか?」
 「恒例行事のようにな。ひとりが店にいるときに、もうひとりが来ると、おれは気が滅入ったものさ。あのふたりは----なんと言うか、磁石みたいだった。シャム双生児とか、嫉妬深い元恋人同士とか、そんな具合さ。どちらも相手をほうっておけなかった」


みずみずしい感性のひらめきが随所に見られます。

 フォークは、つややかな唇とすらりとした手足の持ち主だったティーンエイジャーのグレッチェンが、だれよりも若さの悦びを享受していたことを知っていた。けれども、こうしてワンピース姿のグレッチェンを見つめていると、エリーが死んですべてが変わるまえの日々がグレッチェンのいちばん幸せな時代だったのかも知れないという考えが浮かんだ。そうでないことを願った。それからも幸せな日々があったことを願った。

 グレッチェンは肩をすくめた。「ここの人たちがダウやディーコンのような厄介者に我慢しているのも同じ理由からよ。それがキエワラ。住みにくいところだけど、わたしたちは一蓮托生なの。あなたは町から出ていった。ルークは残った。だからあなたが悪いことにされた」

ユーモアのセンスも持ち合わせています。

 視線の先が三つの棺から最前列の会葬者へと移っていた。遺族の席だ。そこなら友人や隣人のだれよりもまえにすわれる。友人や隣人のほうは遺族の後頭部見つめ、そこにいるのが自分でなくてよかったと神に感謝する。

 「ですが、助言をするよう甥御さんから頼まれていますので----」
 「なんだ? 胸がでかい女はばかなだけじゃなく耳も遠いのか?」
 長い沈黙が流れた。ひとりですわっていたフォークは、笑いを噛み殺した。昔ながらの女性蔑視ほど、無知な人間を正しい助言者から遠ざけるものはない。これで警告されなかったとはディーコンも言えまい。


このミス7位の作品ですが、面白さ抜群。 是非、ご一読下さい。

  『 渇きと偽り/ジェイン・ハーパー/青木創訳/ハヤカワ・ミステリ 』


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