■燃える部屋/マイクル・コナリー 2019.4.8=1
2019年版 このミステリーがすごい!
海外篇 第16位 燃える部屋
流石はマイクル・コナリー、派手さはないけど渋いミステリを書いてくれました。
いろいろと楽しく読めました。
ボッシュは、いまわの際の悪党にかって、 「おい、悔い改めて天国に行ったらどうだ」 という場面がある。
「糞食らえ」
これなんて、将に、キリスト教の世界感ですよね。
だれもが価値がある。さもなければだれも価値がない。
これは、ボッシュの言葉なのだが、見事にパクられる。
その時、ボッシュの取った行動とは。
これがなかなか面白い。
ボッシュは、若き新米女性刑事ルシア・ソトと組むことになる。
ソトはメキシコ系アメリカ人。
四人の武装強盗と対峙し、二人を撃ち倒すが、その時、パートナーは殉職するという過去がある。
その後、刑事に昇進した彼女は、未解決事件班に配属される。
ボッシュは、ソトの教育係となる。
「走る男」のなかで、マイクル・コナリーは次のように書いている。
悪党は正体が突き止められ、捕まり、正義が果たされるのです。だれひとり逃げおおせた者はいなかった。
それらの作品は、世界の灰色の領域を扱っており、そこでは正義の裁きを受ける者もいれば、より大きな倫理的犯罪を犯しながら逃げおおせる者もいます。それらの本がわたしに語りかけ、わたしの人生を変えました。
若き新米女性刑事ルシア・ソト
ソトはメキシコ系アメリカ人であり、英語とスペイン語を流ちょうに話した。また、ピコ=ユニオンの酒屋で武装強盗との生きるか死ぬか銃撃戦ののち、一夜にしてマスコミのセンセーショナルな報道の的になったことで、刑事への乗車券にハサミを入れてもらえた。彼女とパートナーは銃を持った四人の男と交戦した。彼女のパートナーは撃たれて死亡したが、ソトは強盗のうちふたりを倒し、残るふたりをSWATが到着して、逮捕するまで、路上に釘付けにした。銃を持った男たちは、ロサンジェルス市を縄張りとしているもっとも凶悪なギャング団のひとつ"サーティーンス・ストリート"の構成員だった。……
市警察本部長グレゴリー・マリンズは、市警勇士勲章をソトに授けた。
「ハリー、わたしは警官であり、警官としてふるまいます。完全にプロとしてふるまう。あいつに激昂したりはしません、 いい? これは正義の話なの。復讐の話ではなく」
「……彼女と話をして、当時、彼女が警察に伝えていなかったかも知れないことを思い出せるのかどうか、確かめたいのです。記憶にどれほどたくさんのことが刻まれて、時を経て表面に浮かび上がってくる傾向があるのを知れば、驚かれると思います」
ボッシュの教育。
よい警官はみな、心のうちにぽっかり空いた穴を持っている。そこでは絶えず炎が燃えている。なにかを求める炎。求めているのは正義かもれない。知る必要性かもしれない。邪悪な者たちが暗闇のなかに永遠に隠れていられるわけではないと信じる信念かもしれない。結局のところ、ロドリゲスはよい警官であり、ボッシュがなにを求めているのか知りたくなった。もしそれでオルランド・メルセドが報われるのであれば、ロドリゲスはいつまでも怒りつづけ、黙ったままでいつづけることはできなかった。
「そんなふうになるな」ボッシュはつづけた。「いい刑事になりたいのなら、外に出て、ドアをノックしろ」
「返事が返ってくると期待するなよ」ボッシュは言った。「事件捜査は、辛抱と微々たる進捗でおこなうものだ。電撃的な解決なんてない」
「わかってる」
「もちろん、おれは間違ったことがある。だれも十割バッターにはなれない。だが、だからといって、いまここで正しいと感じていることを変えはしないんだ」
渋いですね。
「……きみにはやらなきゃならないことがあるんだ、ルーシー」
ソトはうなずいた。
「わかった」ソトは言った。「泣きそうよ」
「泣くな」ボッシュは言った。
男性の口は開いていて、声を出さぬ悲鳴を上げていた。目は上を向き、神に慈悲を乞うているかのようだ。心の奥底で、死者は死者であり、もはや生の残酷さを被っていないのをボッシュはわかっていたが、それでも、もうたくさんだろう、と言いたい気がしていた。いつになったらこれは終わるのだろう、と問いたかった。死は生の苦しみからの解放であるべきではないのか?
「実際には、本人が、石に刻むのですけど。彼女は自分の葬儀の指示書にそれを書いていました。こういう言葉になる予定です----『シスター・エスター・ゴンザレス、彼女は子どもたちに子どもたちへの償いを見出した』。すてきな言葉でしょう?」
ボッシュはうなずいた。
だが、これは、何を意味しているのか..........
『 燃える部屋(上・下)/マイクル・コナリー/古沢嘉通訳/講談社文庫 』
2019年版 このミステリーがすごい!
海外篇 第16位 燃える部屋
流石はマイクル・コナリー、派手さはないけど渋いミステリを書いてくれました。
いろいろと楽しく読めました。
ボッシュは、いまわの際の悪党にかって、 「おい、悔い改めて天国に行ったらどうだ」 という場面がある。
「糞食らえ」
これなんて、将に、キリスト教の世界感ですよね。
だれもが価値がある。さもなければだれも価値がない。
これは、ボッシュの言葉なのだが、見事にパクられる。
その時、ボッシュの取った行動とは。
これがなかなか面白い。
ボッシュは、若き新米女性刑事ルシア・ソトと組むことになる。
ソトはメキシコ系アメリカ人。
四人の武装強盗と対峙し、二人を撃ち倒すが、その時、パートナーは殉職するという過去がある。
その後、刑事に昇進した彼女は、未解決事件班に配属される。
ボッシュは、ソトの教育係となる。
「走る男」のなかで、マイクル・コナリーは次のように書いている。
悪党は正体が突き止められ、捕まり、正義が果たされるのです。だれひとり逃げおおせた者はいなかった。
それらの作品は、世界の灰色の領域を扱っており、そこでは正義の裁きを受ける者もいれば、より大きな倫理的犯罪を犯しながら逃げおおせる者もいます。それらの本がわたしに語りかけ、わたしの人生を変えました。
若き新米女性刑事ルシア・ソト
ソトはメキシコ系アメリカ人であり、英語とスペイン語を流ちょうに話した。また、ピコ=ユニオンの酒屋で武装強盗との生きるか死ぬか銃撃戦ののち、一夜にしてマスコミのセンセーショナルな報道の的になったことで、刑事への乗車券にハサミを入れてもらえた。彼女とパートナーは銃を持った四人の男と交戦した。彼女のパートナーは撃たれて死亡したが、ソトは強盗のうちふたりを倒し、残るふたりをSWATが到着して、逮捕するまで、路上に釘付けにした。銃を持った男たちは、ロサンジェルス市を縄張りとしているもっとも凶悪なギャング団のひとつ"サーティーンス・ストリート"の構成員だった。……
市警察本部長グレゴリー・マリンズは、市警勇士勲章をソトに授けた。
「ハリー、わたしは警官であり、警官としてふるまいます。完全にプロとしてふるまう。あいつに激昂したりはしません、 いい? これは正義の話なの。復讐の話ではなく」
「……彼女と話をして、当時、彼女が警察に伝えていなかったかも知れないことを思い出せるのかどうか、確かめたいのです。記憶にどれほどたくさんのことが刻まれて、時を経て表面に浮かび上がってくる傾向があるのを知れば、驚かれると思います」
ボッシュの教育。
よい警官はみな、心のうちにぽっかり空いた穴を持っている。そこでは絶えず炎が燃えている。なにかを求める炎。求めているのは正義かもれない。知る必要性かもしれない。邪悪な者たちが暗闇のなかに永遠に隠れていられるわけではないと信じる信念かもしれない。結局のところ、ロドリゲスはよい警官であり、ボッシュがなにを求めているのか知りたくなった。もしそれでオルランド・メルセドが報われるのであれば、ロドリゲスはいつまでも怒りつづけ、黙ったままでいつづけることはできなかった。
「そんなふうになるな」ボッシュはつづけた。「いい刑事になりたいのなら、外に出て、ドアをノックしろ」
「返事が返ってくると期待するなよ」ボッシュは言った。「事件捜査は、辛抱と微々たる進捗でおこなうものだ。電撃的な解決なんてない」
「わかってる」
「もちろん、おれは間違ったことがある。だれも十割バッターにはなれない。だが、だからといって、いまここで正しいと感じていることを変えはしないんだ」
渋いですね。
「……きみにはやらなきゃならないことがあるんだ、ルーシー」
ソトはうなずいた。
「わかった」ソトは言った。「泣きそうよ」
「泣くな」ボッシュは言った。
男性の口は開いていて、声を出さぬ悲鳴を上げていた。目は上を向き、神に慈悲を乞うているかのようだ。心の奥底で、死者は死者であり、もはや生の残酷さを被っていないのをボッシュはわかっていたが、それでも、もうたくさんだろう、と言いたい気がしていた。いつになったらこれは終わるのだろう、と問いたかった。死は生の苦しみからの解放であるべきではないのか?
「実際には、本人が、石に刻むのですけど。彼女は自分の葬儀の指示書にそれを書いていました。こういう言葉になる予定です----『シスター・エスター・ゴンザレス、彼女は子どもたちに子どもたちへの償いを見出した』。すてきな言葉でしょう?」
ボッシュはうなずいた。
だが、これは、何を意味しているのか..........
『 燃える部屋(上・下)/マイクル・コナリー/古沢嘉通訳/講談社文庫 』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます