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夜間旅行者/ユン・ゴウン

2024年03月11日 | もう一冊読んでみた
夜間旅行者 2024.3.11

ユン・ゴウンさんの『夜間旅行者』を読みました。

主人公のコ・ヨナは、災害の跡地を巡る観光ツアーを企画する旅行会社ジャングルのプログラマーです。
会社に居心地の悪さを感じるヨナは、上司の勧めで、「砂漠のシンクホールのある島ムイ」へ、出張のような休暇のような旅に出ることを決意します。
旅先では、果たしてどのような運命がヨナを待ち構えていたのか......

本書は、2021年7月に英国推理作家協会(CWA)賞で最優秀翻訳小説賞を受賞しています。
ユン・ゴウンの日本初作品です。

 業務内容が少しずつ変わっていくのもイエローカードの一形態であるとは知らなかった。イエローカードの存在については人社初期から知っていた。それは警告というより、亀裂の始まりを知らせるアラームに近かった。ひとたびイエローカードを受ければ、大地がひっくり返るほどの大事件がない限り、その瞬間から始まる転落を防ぐことはできない。ヨナは本当に黄色いカードが郵便やメール、あるいは人づてに届くのではないかと思っていたが、イエローカードはそんなふうに登場するものではなかった。
どこまでも微細に巧妙に、だが当事者にとっては会社生活にはっきりと危機を感じるかたちで現れるのだった。
 イエローカードを受けた人には、そうして様変わりした業務環境で必死に働くか、それともわかりやすく反感を示すかの、ふたつの道があった。


 世の中にはハインリッヒの法則を信じる人たちもいる。ひとつの災害の背景には数百もの軽微な異常が存在するというものだ。だが、それは災害の発生に注目したものであって、災害に遭う側にそんなルールがあてはまるはずもない。災害とは、ふいに訪れるものでしかない。ある日突然足元が崩れ落ちるといった、偶然というには無念で、運命というにはやりきれない、そういうもの。それを人為的に操ることなどできるのだろうか。

    『 夜間旅行者/ユン・ゴウン/カン・バンファ訳/ハヤカワ・ミステリ 』





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