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この星の忘れられない本屋の話/ヘンリー・ヒッチングズ編

2024年04月08日 | もう一冊読んでみた
この星の忘れられない本屋の話 2024.4.8

古書屋と立ち読みにまつわるアンソロジーです。

 『この星の忘れられない本屋の話』は、世界の本屋を紹介するガイドブックではない。過去一〇〇〇年にわたって、最も多くのことを伝えた“書物”というアイテムと、それを手に入れるための特別な場所----本屋----にまつわる、個人的な体験を集めたアンソロジーである。そこは薬局の役目も果たすし、いろいろなものが混在する奇跡の場所になり、秘密の花園になり、イデオロギーの火薬庫になり、陳腐で饒舌な世界に異議申し立てをおこなう舞台になり、安全と正気を保証する場にもなる。そして、光の射さない穴蔵であると同時に闇を照らす灯台でもあるという、ほかに類のない場所なのだ。

 本屋とは新たな欲求を永遠に生み続ける場所であって、欲求の種をわれわれの中にいつまでもばらまき続ける。そして、長いあいだ休眠状態にあったその種が、ある日突然芽を出す----これが本屋のマジックなのだ。インスピレーションが周りを浮遊し、セレンディピテイが未知の欲求を目覚めさせ、夢が膨らみ、啓発が魂を輝かせるのである。

 この本のインタビュアーはビオイ=カサーレスに、「執筆中は生活がストップしてしまうのですか?」という質問をしていて、ビオイ=カサーレスはそれに「ノー」と答えている。「きっとその反対だと思うよ。私はみんなに、どんどん書きなさいというアドバイスを送りたい。なぜなら、書くという行為は、人生という家に部屋をひとつ付け足すようなものだからだ。人生について考えるという行為は、人生とは別物であって、人生を濃密に生きるもうひとつの方法になるんだ

 最高の本屋とは、偶然の発見がきらきら輝きながら勝手に転がり込んでくる、そんな場所である。自分に必要な本が、そうとわかる前に見つかってしまう。そして、読者との出合いもまた、このような幸運な偶然の賜物なのだ。

 都市がクールでなきやいけない理由がわからないし、クールな都市を具体的にイメージできたとしても、ベルリンがクールだとする意見は、この町を過剰に美化した主張だと言わざるを得ない。実際のベルリンは、人間味がなくて醜悪だけど、それでも最高に楽しいんだ。人は誰だって、いろんなものや人や場所や生き方の中から、自分に必要なものや、興味を惹かれるものを見つけ出すものなんだよ。

    『 この星の忘れられない本屋の話/ヘンリー・ヒッチングズ編/浅尾敦則訳/ポプラ社


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