百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

ふらりデッパリ備忘録(8)【【山本作兵衛さん炭坑画】その2】

2012-02-16 14:42:23 | 旅行
 今回の【山本作兵衛コレクション展】は、作品のカテゴリー毎、シリーズに、各30枚の原画を展示するという催しでありますから、折角訪ねたとしましても あるカテゴリーの ほんの一部の絵しか見られないということでありまして、オイラが如き 430Km以上も離れた所にいる人間にとりましては、誠に辛い方式の展示会であります。

そこでオイラは その代替手段としまして思い切って、6,825円もする【海鳥社】さん発行の作兵衛さんの画集【筑豊炭坑絵巻】およびこちらは 2,000円でありましたが【 田川市石炭・歴史博物館/田川市美術館】さん発行【山本作兵衛の世界】を買って帰ったのでありますが、この場で これら画集の代表的?な作品を16点 撮影させていただき、無断転載をご寛容願うこととしまして、以下 並べさせていただこうと思うのであります。
              炭坑に入り手伝う 7歳の作兵衛さん↓








      ↓ ヤマを訪れた行商人         作兵衛さんの8歳時回想絵 ↓

   ↓ リンチ                       ↓ 見せしめ

     ↓ 喧嘩 2態                 ↓ 仲直り 2態 

              ↑ これなんぞ 我が家と まるで 同じでありますがな・・・

如何です?皆さん、すーっと引き込まれてしまうでしょう。もし これらのモチーフが写実的な油絵で描かれていたとするなら こうはいきません。暗さ・息苦しさ・深刻さのバリアーが高過ぎて、これを超えることは相当に 難しいのではないでしょうか。現在の視点からですと、とてつもなく過酷で悲惨な労働・生活実態が描かれているのでありますから、誰しも目を背けたくなるはずです。

ところが作兵衛さんの絵は、これぞ氏の人間性の成せる技でありましょうか、生来の明るさ・愛情の大きさ・使命感・大局観・サービス精神・遊び心等と、60年以上に亘り溜まりに溜まり熟成されていた絵を描きたいという情熱 および 美意識 とが程よくブレンドされることによって、このような 実に親近感溢れる極めて人間に優しい、言葉は過ぎますが、楽しい絵 とも感じられるほどの絵となって現出したのでありましょう。

錦絵のようだから好いのです。7歳から手伝いとしてヤマに入り、14歳で「後山」、16歳で「先山」として入坑、 63歳で閉山・解雇となるまでの、その約50年間の実労働体験に基づいた真実の絵だから良いのです。誰しも納得させられるのです。氏は 66歳になられたときから本格的に、当初 5年間ほどは墨絵でありますが、絵を描き始められ、昭和59年(1984) 92歳で逝去されるまで、実に1000枚以上 お描きになられたということであります。「後世に炭坑(ヤマ)の真実を伝えたい」、その一心で描かれたとの由。まさに ここに 厳然たる絵の原点がある と言えるのではないでしょうか。  

どの絵の顔もホレボレするほどの美男・美女。いいですねぇ。背筋がピンと伸び、役者が見得を切ったときが如くキリリと引き締まって、侠気といいましょうか、男っぷり・女っぷりの好さが滲み出ております。まさに 命を張った仕事をしているからでありましょう。気迫が漲(みなぎ)っております。

これらの絵は全て画用紙に描かれております。もしも これらを年代別・カテゴリー別に整理し、連続した用紙に編集したとするなら、それは モノスゴイ絵巻物 となるのでありまして、これは【源氏物語絵巻】【伊勢物語絵巻】【一遍上人絵伝】【法然上人絵伝】等の国宝の絵巻物に匹敵する、それぐらいのモノではないだろうかと オイラには そう思えるのであります。作兵衛さんは それぐらいスゴイお人であります。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ふらりデッパリ備忘録(7)【【... | トップ | ふらりデッパリ備忘録(9)【北... »

コメントを投稿

旅行」カテゴリの最新記事