百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

百休気まぐれ 8泊旅(21)【信州】【無言館(2)】

2010-08-18 16:48:02 | 日記
 絵描きを志している若者が、100パーセンント近い確率での 死 を覚悟
せざるを得ない出征にあたり、いったい何を遺そうとするであろうか考えたとき、 
愚生は、描いて遺しておきたいということ自体 あくまで二義的なものとなり、
上手下手なんてことも もうどうでもよくなって、それよりか、描くことにより、
その隅から隅までを、己が脳裏に 深く沁みこませ刻み付けておきたいもの、
つまり 己が一番愛する人を描こうとするのではないか と思うのであります。

この場合、必然的に 妻または恋人・子供・母親など が その対象となる
のでありましょうが、この設定自体 やり場のない極めて辛い悲しい悲壮な
ものであるのですが、敢えてその中に救いを見出すとしましたら、そのとき
若い身空であります故 子供は無理としましても 伴侶もしくは恋人がいたか
どうか、であります。(でも実際はどうなのか、判断不能です。辛すぎて)

本館および別館【傷ついた画布のドーム】も会わせまして、ざっと見まして
半数ぐらいが「婦人像」であったでしょうか、そして 妻もしくは恋人と思わ
れる絵は 内数で 約 5 名の方、裸体画も 5名の方でありまして、
少なすぎるというのが 愚生が一層 胸を掻きむしられる因となっております。

そして こららの絵のなかで、一番強く 惹きつけられましたのが、
先のブログの写真でお示ししました ヌードの絵 でありまして、これは
日高安則氏(享年27歳)が、出征直前 モデルを務められた恋人を描かれた
(未完成です)ものでありますが、

不安いっぱいで落ち着こうとしても落ち着けず、初心者ゆえ ぎこちなく
決めきれないポーズ、時間がない・・・でも、
「この人のために しっかりしなけりゃ」という 悲壮な キリッとした気持、
そういったことが画面によく表われておりまして、愚生は 心から
感じ入っているのであります。

もし 愚生らの時代に そういった環境になったとしましたら、
おいらは 何を描いたでありましょうか。恋人は描こうにも 多分不在ですから、
若かりし「イングリッド・バーグマン」でも描いて、ぶん殴られていたのでは
ないかと思われます。 



コメント
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