細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『REDリターズ』懲りないシニア軍団の倍返し。

2013年10月11日 | Weblog

10月8日(火)13ー00 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>

M-127『REDリターンズ』RED Returns (2013) summit entertainment / di bonaventura pictures

監督・ディーン・パリソット 主演・ブルース・ウィリス <116分> 配給・W・ディズニー・スタジオ・ジャパン ★★★☆

とにかく、第一作の「リタイアード・エクストリームリー・デンジャラス」。つまり『RED』が、全世界で200億円の大ヒット。

だからして、またしても懲りない、あのジジイたちの呆れ果てる大アクション・スパイ活劇再開。あああ、ようやるわい、と思いつつ楽しめた。

これは、前作のように、リタイアした元CIAの捜査官だったブルースが、年金給付担当の女性と結婚してからの受難の日々となる。

なぜか現役時代に軽視していた水爆内蔵機密から、情報が盗まれてテロ組織に流れるのを防ぐために、またもジジイたちは残務整理にために立ち上がる。

主演のブルースと悪友ジョン・マルコヴィッチや、ヘレン・ミレンたちの顔を見なければ、これはもう007映画と同様に派手なアクションが連続する。

そこに、ロシアの美女スパイ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズと、香港の殺し屋イ・ビョンホン、謎のボケ学者アンソニー・ホプキンスが絡む。豪華なもんだ。

これはこれは、の、超ゴージャスなキャスティングで、そこらのアクション映画の3倍以上は制作費がかさんでいるのが判る。そしてそれなりの3倍返しなのだ。

ブルースの女房役のメアリー=ルイズ・パーカーまでが、良妻賢母どころか、かなり派手なアクション・シーンにも積極的に絡んでくる。

派手な銃撃戦からヘリコプターやプライベイト・ジェットまでを、湯水のように破壊しまくるハリウッド・マッドネス。

進化したヴィジュアル・エフェクトで、老人たちもボンドのように派手に暴れまくる。これならショーン・コネリーでも大丈夫だろう。

ラストで、撃墜された愛機を見て、ビョンホンは「あれって、おれのプライベイト・ジェットだぜ」とボヤクと、ブルースは返事を濁して苦笑した。

ということは、この連中、懲りずにまた、パート3も作ろうという魂胆らしい。まあ。ほんと、ようやるわい。

 

■大きな左中間のフライを、野手3人が譲り合って落球のヒット。

●11月30日より、全国ロードショー 


●『バックコーラスの歌姫たち』の果てしなき至近距離。

2013年10月10日 | Weblog

10月7日(月)13-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-126『バック・コーラスの歌姫たち』20 Feet from Stardom (2013) radius TWC / tremolo productions

監督・モーガン・ネヴィル 出演・ダーレン・ラヴ <90分> 配給・コムストック・グループ ★★★☆☆

歌手のブルース・スプリングスティーンが、この映画のタイトルを語る。「スターとの距離はたったの20フィートなんだ。」

つまり、バック・コーラスというのは、いつもスターと同じ脚光の中で、同じように歌い、同じように拍手を浴びる。

しかしギャラはそのスターの何十倍も低く、人気はなく、次のスケジュールもない。たった5メートルくらいの距離なのに。

この映画は、60年代頃から90年代にかけて、多くのタレントたちの舞台を飾っていた女声コーラスのドキュメント。

歌はうまくて、声量もあり、歌唱力抜群。しかしソロのスターにはなれない。それは何なのだろうか。・・と問う。

当然、スター性の問題だろう。器量はいいが特徴がない。見た目がポピュラーじゃない。際立った個性が乏しい・・・などなど。

つまり飛び抜けたキャラがないのだろうか。しかしソロとしてのチャンスはあった。でもそれは、ただのワン・チャンス。

ほとんどのバック・コーラス・ガールは、スター以上の才能を持ちながら、結局は、あだ花として散る運命なのか。

しかしリンダ・ロンシュタットだって、リタ・クーリッジだって、もともとはバック・コーラスだったじゃないか。

この映画では、あのマイケル・ジャクソンのバックだったジュディス・ヒルにもスポットを当てて、「スターへの壁」を叩く。

視点の結果は判っているのに、でもそこには見えない<壁>が存在しているのも、見えたようだ。

バッティング投手は、コントロールはいいが、マウンドには立てないのだ。

 

■サードの左を抜けたゴロだが、ギリギリでベースの上を抜けたヒット。

●12月、渋谷Bunkamuraル・シネマ他でロードショー 


●『セブン・サイコパス』未完成シナリオの迷走にアタマが混乱。

2013年10月07日 | Weblog

10月4日(金)六本木<シネマートB1試写室>

M-125『セブン・サイコパス』Seven Psychopaths (2011) film 4 / hanway films / blue print pictures

監督・マーティン・マクドナー 主演・コリン・ファレル <110分> 配給・クロックワークス ★★☆☆☆

おそらく脚本家で監督のマーティンが、前作のシナリオがアカデミーにノミネートされたので、焦って苦心した発想だろう。

一応、タイトルだけは決まったものの、ストーリーが思いつかないのだ。そこで悪友たちに相談するのが混乱のはじまり。

むかしジュリアン・ヂュヴィヴィエ監督が作った「アンリエットの巴里祭」が、オードリーの「パリで一緒に」にリメイクされた。

たしかティム・ロビンスの「ザ・プレイヤー」やタランティーノの「キル・ビル」なども似たような展開だ。

あれと同じ発想で、アイデアと同時にストーリーが進行する仕掛けだ。ところがこの紙上の発想は次第にリアルになり、破綻しだす。

当初は、7人のサイコパスなクレイジーたちが殺し合いをする、という単純な段取りのはずだ。

その着想をしたライターのコリンは、つい先日見たばかりの「デッドマンズ・ダウン」の、これはその前の作品らしい。

殺し屋のウディ・ハレルソンも、仲間のクリストファー・ウォーケンも、このところ新作で売れている面々。

金持ちのペット犬を盗んで、お礼金目当てに後日飼い主に返しに行って金をせびるという、セコい奴らのスケッチが前半。

ところが気軽に盗んで来たペットの子犬が、ギャングの大ボスの愛犬だったものだから、さあ大変。

とうとうハリウッドから、ネバダの砂漠までの西部の対決が大袈裟にエスカレートしていく。

ま、サム・ロックウェルも絡んでの、ハリウッド中年スターたちのお遊び追跡ごっこにおつきあい。という笑えないコメディ。

 

■ファールで粘ったものの、サードのファールフライ。

●11月2日より、新宿武蔵野館などでロードショー 


●『人類資金』の謎、どうぞ池上センセ、おしえてください。

2013年10月05日 | Weblog

10月1日(火)12-30 築地<松竹映画本社3F試写室>

M-124『人類資金』(2013)松竹映画・キノフィルムズ

監督・坂本順治 主演・佐藤浩市 <140分> ★★★

終戦時に旧日本軍部によって隠蔽された10兆円の金塊や財宝の行方の謎をめぐるエコノミック・サスペンス。

福井晴敏の原作を、社会派映画の坂本監督が、あの「亡国のイージス」に次いで大掛かりな海外ロケで映画化。

そこまではいいのだが、どうもこの犯罪か、陰謀なのか、仕組みも攻防も清算も、さっぱり解らない。

M資金と喚ばれた、その財宝がどこかに存在していたらしいエピソードは、最近も「日輪の遺産」で見たような気がする。

ここにきて、その資金が某財団から防衛省などの政府機関を通じて、外資として流出されているらしい背景を探るのだ。

しかし、もともとさっぱり信憑性のない話を、複雑な金融ブローカーの佐藤浩市が詐欺まがいの会話で密会を繰り返すのだ。

だから、ただでさえマネー・ビジネスに弱いものとしては、これはノースーパーのロシア映画を見ているように難解。

M資金からヘッジファンドとか、ウィキリークス、リーマン・ショックとか、これは当方にとってはほとんど認識外だから閉口なのだ。

まったくユーモアを疎外した厳つい男たちの、意味不明な密談。そして敵視。恐喝。ああ、これはエイリアンの映画か。

しかも香取慎吾の神妙にしてワンパターンの演技。これならアウトレイジのオヤジたちの口論の方がまだついていける。

突然、あのヴィンセント・ギャロが出て来たシーンで、いよいよ謎が四散してしまって茫然自失。

ま、裏金の流れや、政治資金の流通経路に詳しいひとなら、このスクランブル・ゲームにもフォローできるだろう。

せっかくの海外ロケや、国連でのスピーチも、「インタープリター」のいないような具合に不自由してしまった。

 

■大振りの大フライだが、当たりが詰まってのセカンドフライ。

●10月19日より、全国松竹系でロードショー 


●さすがはオリジナルの凄さに圧倒された9月のサンセット座ベスト。

2013年10月04日 | Weblog

9月の二子玉川サンセット傑作座(自宅)上映ベストテン

 

1・『不眠症(インソムニア)』97(エリク・スクジョルベアルグ)ステラン・スカルスガロ VHS

  アル・パチーノ主演でリメイクされたノルウェイ版のオリジナルだが、シャープなアングルで見せる映像のサスペンスは上等。

 

2・『悪人と美女』52(ビンセント・ミネリ)カーク・ダグラス VHS

  いちどは絶交したプロデューサーのオファーに耳を貸す、女優と監督と脚本家。そこにハリウッドの魅惑と地獄が見えてくる秀作。

 

3・『捕われの街』52(ロバート・ワイズ)ジョン・フォーサイス DVD

  地方都市で起きた変死事件が、警察で揉み消されてしまい、通報者は次第にウラ組織などに狙われる恐怖を描いたノワールの凄み。

 

4・『ミルドレッド』96(ニック・カサベテス)ジーナ・ローランズ DVD

  高齢で一人暮らしの老女に、息子夫婦は都会での優雅な同居隠居をすすめたが、彼女は自分のための余生のために一人旅に出る。

 

5・『幽霊と未亡人』47(ジョセフ・L・マンキウィッツ)ジーン・ティアニー VHS

  海辺の一軒家に引っ越して来た未亡人は、海風とともに現れるオーナーだった船長のゴーストと恋におちて、幸福な最期を迎える。

 

6・『夏の嵐』54(ルキノ・ヴィスコンティ)アリダ・ヴァリ LD

7・『日曜日が待ち遠しい』83(フランソワ・トリュフォ)ジャン=ルイ・トランティニアン LD  

8・『裏切りの街角』49(ロバート・シオドマーク)バート・ランカスター DVD

9・『ヴェンジェンス』54(マーク・スティーブンス)マーサ・ハイヤー VHS

10・『マーニー』64(アルフレッド・ヒッチコック)ティッピ・ヘドレン DVD

 

★その他に見た傑作

●『男性の好きなスポーツ』63(ハワード・ホークス)ロック・ハドソン

●『洋上のロマンス』48(ドリス・デイ)

●『湖水に消える』06(トム・セレック)

●『カナディアン・エクスプレス』90(ジーン・ハックマン)

●『トゥルー・カラーズ』91(リチャード・ウィドマーク)・・・・・などでした。 


●9月はリベラーチェの嫌らしさに圧倒された。

2013年10月03日 | Weblog

9月に見た新作映画試写ベスト5

 

1・『恋するリベラーチェ』(スティーブン・ソダーバーグ)マイケル・ダグラス ★★★★

  60年代に活躍したゲイのピアニストの偏執的な日々を描きながら、ベトナムやエイズやロックの時代を哀しく見つめる。

 

2・『ルノアール・陽だまりの裸婦』(ジル・ブルドス)ミシェル・ブーケ ★★★☆☆☆

  戦火を避けて緑の陽だまりの裸婦たちと生きた画家と、軍人として負傷した息子ジャンとの厚い温情。何ともカメラの美しさ。

 

3・『ブリングリング』(ソフィア・コッポラ)エマ・ワトソン ★★★☆☆☆

  ハリウッド郊外のセレブ邸宅ばかりの居留守を狙った女子学生たちの陽気な窃盗団。これが実話だったというドラマの衝撃。

 

4・『鑑定士・顔のない依頼人』(ジュゼッペ・トルナトーレ)ジェフリー・ラッシュ ★★★☆☆

  広場恐怖症の美女からの依頼で、価値のある美術品を鑑定していたベテラン、オークショ二ストがはめられた情欲の地獄罠。

 

5・『The Iceman・氷の処刑人』(アリエル・ブロメン)マイケル・シャノン ★★★☆☆

  実在したプロの殺し屋の不屈の20年。その見事なまでの殺しのプロ意識には、凄まじいほどの計算と決定力が唸っていた。

 

●その他の傑作は

★『利休にたずねよ』市川海老蔵

★『2 GUNS』デンゼル・ワシントン

★『マラヴィータ』ロバート・デ・ニーロ

★『デッドマン・ダウン』コリン・ファレル

★『ダイアナ』ナオミ・ワッツ・・・・などでした。 


●『鑑定士・顔のない依頼人』美しすぎる肖像画には、ご用心。

2013年10月02日 | Weblog

9月30日(月)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-123『鑑定士・顔のない依頼人』The Best Offer (2013) pack cinematografica /uni credit deluxe

監督・ジュゼッペ・トルナトーレ 主演・ジェフリー・ラッシュ <131分> 配給・ギャガ ★★★☆☆☆

古典的で非情にトリッキーなミステリーで、デュヴィヴィエやヒッチコックのタイプの妄執と受難がテーマ。案外に面白かった。

ローマのベテラン美術鑑定士のジェフリーは、手際のいい美術オークションの司会者で人気があった。

しかし孤独な壮年独身生活で、豪華な自宅マンションの隠し部屋には、オークション偽装で落とした美人画を隠していた。

ある日、事務所に若い女性からの電話で、亡くなった親の残した古い館に多くの美術品があって、それを鑑定して欲しいという。

しかし依頼人は広場恐怖症の統合失症で、会って話すことができず、ドア越しの交渉となったが、多くの美術品は貴重なもので高価だった。

依頼人に興味を持った鑑定士は、ある日ドアに隠れて、その依頼人の姿を確認したが、思いのほかの美人なのにジェフリーはご執心。

ここからは、やっぱり「めまい」のジェームズ・スチュワートか、「氷の微笑」のマイケル・ダグラスと同じように情欲の罠にはまっていく。

ま、ミステリーなので、これより先の意外な展開は書けないが、かなり一人称的ではあっても、見事なストーリーテリングで飽きさせない。

ジェフリーの信頼するアンチィーク修復士のジム・スタージェスと、友人の美術収集家のドナルド・サザーランドが微妙に絡んでくるので注目。

終わってみれば、どうも納得のできない部分も多くて、レトリックには不満は多い。しかし、これは監督の主観だから、しょうがない。

映画もミステリー小説と同様に、どうも不審な部分はあるのだが、それを言っても切りがないのだ。単純に騙されることが礼儀であろう。

さすがは、トルナトーレの話術の巧みさで、とくに埃だらけのセット撮影と照明の見事さに、単純に騙されなくては、この映画を楽しめないだろう。

「ローラ殺人事件」や「飾窓の女」のように、美女の肖像画に惚れ込むと、ろくなことにならない、という実証を思い出した。

 

■ライトの前身守備の頭上をぬくクリーンヒットで、まんまとスリーベース

●12月、全国ロードショー 


●『2GUNS』2ガンズの無敵漫才バディ・アクションの痛快さ。

2013年10月01日 | Weblog

9月27日(金)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-122『2 GUNS/(2ガンズ)』(2013)tristar pictures / stage G films / universal pictures

監督・バルタザール・コルマクール 主演・デンゼル・ワシントン+マーク・ウォールバーグ <109分>配給・ソニー ★★★☆☆

いまハリウッドの映画では、デンゼル・ワシントンの出演する映画が一番、面白い。「デンジャラス・ラン」「アンストッパブル」・・・然り。

しして2番目に面白いのは、マーク・ウォルバーグ」の出る作品だ。「テッド」「ハード・ラッシュ」・・・然り。

ジョニー・デップもブラッド・ピットもマット・デイモンも、面白いが作品にムラがあるのだ。

というより、ぶっちゃけた話、わたしはズーーーっと昔から、デンゼルのビッグファンだからだ。

軽い言い回しと、あの声がいい。そして長い腕のブラつきが、ヤンキースのリベラ投手のように美しい。

今回は、またしてもワケありの麻薬捜査官だが、暗黒組織との調達専門アンダーカバーのベテラン・アウトロー。

そして漫才コンビのように、減らず口をたたいて絡んでくるワルがマークだが、ウラ組織の流通に詳しく女性を見ると追いかける。

ところが、グルで奪った田舎の銀行の大金が、実はウラ組織の埋蔵金で、もともとはマフィアの収益を隠蔽していたCIAの裏金でもあったから、さあ大変。

ふたりは麻薬カルテルと、海軍とマフィアとCIAなどから追われるハメになってしまった。ま、よくある鬼ごっこアクションだ。

でも漫才コンビのふたりは、実は政府筋の捜査官だったものだから、役者が違う。

そしてメキシコの国境を挟んで、「ノー・カントリー」のように灼熱の砂漠を行ったり来たり。

ラストは「OK牧場の決闘」のワイアット・アープと、ドック・ホリデーのように、背中合わせで悪玉組織の連中を迎え撃つ。

監督はアイスランドの出身だが、マークが「ハード・ラッシュ」で組んで以来の仲らしく、これが爽快なタッチで正解だ。

言って見れば,漫才コンビのバディ・ムービーだが、あのデ・ニーロの「ミッドナイト・ラン」のように笑わせながら逃げまくる。

ま、他愛のないおとなのお遊び作品だが、ゾンビもマジシャンも理屈屋も出てこない、健全なる騙し合いアクション・コメディなのである。

 

■狙い澄ました左中間への痛烈なライナーは、らくらくのツーベース。

●11月、全国ロードショー