細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「PROMISE/プロミス」の武芸アクション・オペラ

2005年12月13日 | Weblog
●12月13日(火)13-00 日比谷<ワーナー試写室>
M-170 「PROMISE/プロミス』Moonstone Pro.,中国
監督・チェン・カイコー 主演・真田広之 ★★★☆
未来における3000年前のアジア。
歴史ものでも近未来でもない幻想の世界。そこで三人の男とひとりの女性が波乱の恋ものがたりを繰り広げる。
チェン・カイコーの幻想世界は面白いが、昨日「キングコング」を見たばかりなので、VFXのテクニックの無理が目立って幻滅のモブシーンが続く。せっかくのファンタジーなのだから、スキルの可能な範囲でヴィジュアルを作れば良かったのに、恐らく監督のイメージが大きすぎたのだろう。幻滅の特撮の多いファンタジーは、味のないデコレーション・ケーキ。
はたまた味の薄い五目チャーハンの大盛りのように、胃にもたれてしまった。
せっかくの真田広之も「ラスト・サムライ」を幻想にしてしまった。

●「キングコング」のネオ・クラシック美学。

2005年12月12日 | Weblog
●12月12日(月)12-00 有楽町<東京国際フォーラム・Aホール>
M-169 「キングコング」King Kong (2005) Universal 米
監督・ピーター・ジャクソン 主演・キングコング、ナオミ・ワッツ ★★★☆☆☆
圧倒的なVFXのパワーで3時間の上映時間は退屈しない。
さすがは「ロード・オブ・ザ・リングス」三部作の監督の自信と力量である。
とくにアカデミー主演男優賞のノミネートも間違いない(?)キングコングの名演技は素晴らしい。
ノスタルジックな1933年のニューヨークの再現も素晴らしく、オールド・ファンにとっては映像美に魅了された。
しかし、髑髏島での恐竜や巨大害虫とのアクション・シーンが長過ぎるので、肝心のキングコングと美女の情愛が、どうも納得づくで進行しモンタージュもオリジナルを後半で急追するのが気になった。
初めてこのクラシックなアドベンチャーを見るひとは、ストーリーのスクラップぶりについて行けないのじゃないだろうか。
本来は人間の自然破壊や、大衆娯楽の稚拙さを批判したテーマなのに、今回はとにかく土迫力の恐竜アクションに終始した印象だ。しかし、スピルバーグも唸る「ジュラシック・パーク」大破壊シーンは凄かった。
ピーター・ジャクソンの映像技術は呆れるばかりのテクニックで圧倒する。
この技量は否定できない。

●フランク・シナトラ・ビッグ・パーティ

2005年12月10日 | Weblog
●12月10日(土)12-30 銀座<十字屋ホール>
FRANK SINATRA BIG BIG BIG PARTY part 4

フランク・シナトラ・ソサエティ・ジャパンの恒例のパーティは銀座の十字屋ホールで今年も盛大に開催された。
総勢20人近いライトハウス・ビッグバンドの演奏するシナトラ・ナンバーのスイング・ジャズは、いまや中々聞けない爽快なサウンドだけに、狭いホールで身近に聞ける快感は、圧倒的で心地いい。
ヴォーカルのまきみちるサンは「ナイス・アンド・イージー」「センチメンタル・ジャーニー」「ヒヤー・トウ・ザ・ルーザー」など、シナトラ好みの曲を熱唱して、シナトラ誕生日90年のパーティを盛り上げ、めったに味わえないスイングジャズの魅力に時間を忘れてしまった。もう、来年のパーティが楽しみである。

●「寝ずの番」のハッピー・フューネラル

2005年12月08日 | Weblog
●12月8日(木)13-00 紀尾井町<角川ヘラルド試写室>
M-168 「寝ずの番」A Hardest Night (2005) 日・角川ヘラルド映画
監督・マキノ雅彦 主演・中井貴一 ★★★☆☆
俳優の津川雅彦さんが満を持しての監督作品。
上方落語の名匠が亡くなり、お弟子さんや通夜の客たちは寝ずの番で故人を偲ぶ。
作品はきわめて明るく楽しく人情味のある通夜のファンタジーとなる。
日本映画ペンクラブの先行試写で、監督ご自身も懇談の席に出席されたが、もともと監督として映画を作る夢は昔からあったそうで、さすがに俳優としてのキャリアがベースになっていて、俳優たちの個性がよく活かされていて、楽しいお葬式コメディとして成功している。伊丹十三監督「お葬式」よりもミュージカル・ファンタジーとしての持ち味がブラックながら上品で、大いに楽しめた。またしても日本映画に、楽しみなコメディ監督が登場した。

●「リトル・ランナー」の奇跡とサンタクロース

2005年12月05日 | Weblog
●12月5日(月)13-00 六本木<GAGA試写室>
M-167 「リトル・ランナー]Saint Ralph (2004) カナダ
監督・マイケル・マクゴーワン 主演・アダム・ブッチャー ★★★☆☆
父親を亡くし、母親も重病でコーマという最悪の状況なのに、ラルフ少年は陽気でのびのびとしている。
このままでは孤児の施設に入れられる。神学校では、奇跡は現実には起きないもので、母親の意識が戻るのは奇跡に近いという。そこで、自分で奇跡を起こそうとした少年ラルフはボストン・マラソンで優勝すべく練習をはじめる。
1953年のボストン・マラソンを、忠実な時代背景で再現しようとする、監督のセンスはいいが、リアルよりもファンタジーとしての奇跡のドラマを狙っているので、韓国のチョン・ユンチョルの「マラソン」ほどシリアスではない。
少年の応援として、奇跡のシンボルのサンタクロースが並走したりするシーンが嬉しい。
さわやかな青春ドラマとして好感は持てる。

●「プライドと偏見」の本格若草物語。

2005年12月02日 | Weblog
●12月2日(金)13-00 東銀座<U.I.P.試写室>
M-166 「プライドと偏見』Pride and Prejudice (2005) Universal英国
監督・ジョー・ライト 主演・キーラ・ナイトレイ ★★★★☆
このシーズンになると、次回のアカデミー賞最有力、というキャッチコピーの作品が多くなる。
しかし、この作品は作品賞、主演女優賞、助演男優賞、美術賞はノミネートされそうだ。
ジェーン・オースティンの原作は過去にもよく映画化されていて、「ジェーン・エア」とか「嵐が丘」のようなイギリスのクラシック女性ドラマの定番。どうしてまた今になって再映画化するのかが危惧されたのだが、キーラを主演にしたことと、監督の映像と音楽のバランス感覚が新鮮なので、古典的「若草物語」も飽きさせない。
いまや晩婚時代が深刻だが、この主人公エリザベスの「傲慢と誤解と偏見と我がまま」は大いに共感する筈だ。
キーラが「ドミノ」では将来が心配だったが、ここではオードリーの再来のような輝きを見せている。
意外に充実の女性映画だ。

●「フライトプラン」のサスペンス・プラン

2005年12月01日 | Weblog
●12月1日(木)13-00 六本木<ブエナビスタ試写室>
M-165 「フライトプラン」Flightplan (2005)Touchstone 米
監督・ロベルト・シュヴェンケ 主演・ジョディ・フォスター ★★★☆☆☆
飛行機パニック映画というよりは、航空機内誘拐事件という新種のミステリーとして面白い。
ヒッチコックの「バルカン超特急」のように、目の前にいた我が子が消える。
子供だから広いジャンボ・ジェットの中なら、かくれんぼをしようとすれば隠れ場所は多い。
しかし、どうしても見つからないから、これはジョディの神経性の記憶喪失かと思わせる。
制作が「8 mile」や「ビューティフル・マインド」のブライアン・グレイザーだから、そんな単純なプロットじゃない。
案の上、後半は意外な展開となり「肝っ玉かあさん」のジョディ・フォスターが、ここぞと本領の大暴れを始める。
たしかにプロローグのシーンにトリックはあったのだが、よく練られたアイデアである。
ドイツの新人監督のセンスが随所に光った拾い物サスペンスだった。