
私の先輩のお父さんが50歳代で前立腺肥大になり、多少漢方の心得があったためこの八味地黄丸をずっと飲んでいたとのことです。八味地黄丸は腎虚の薬で糖尿病の臓器である膵臓も東洋医学では腎臓の中に入り、八味地黄丸は糖尿病にもよく出される漢方です。そのお父さんは100歳まで開業医をして103歳で亡くなりました。要するに八味地黄丸は糖尿病の薬で、不老長寿の薬なのです。糖尿病とガンが無ければ人間は長生きするのです。ですからこの漢方はどの漢方会社も持っています。私は本来の丸薬のかたちをした内田生薬の7番を飲んでいます。この漢方に使われている生薬は地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)の文字通り7生薬で構成されています。


実は八味地黄丸の中の牡丹皮と桂皮には強烈な中枢神経抑制作用や鎮静作用があります。他の生薬にも間接的にそれらの作用があります。さすが4000年の東洋医学の奥の深さが分かりました。糖尿病は漢方医学ではある種の心の病であるということが分かっているのです。すごい!すごい!漢方は全体を治す医学、わが統合医療には欠かせません。
私は9歳で父をがんで亡くし、医師になり現在統合医療を小規模ながら実践しているのですが、縁あって人生最後の論文が糖尿病の論文となってしまいました。しかも自分で言うのは何ですが、糖尿病の心理的原因の発見としては10年先を行きました。だから誰も評価してはくれません。研究には20年以上かかったかと思います。論文の何回もの査読や修正、再投稿など死ぬ前に論文が完成するのだろうかと本当に思いながら再提出し、やっと今年の論文になりました。
論文内容は難しいと思うので私が大手企業の機関誌に投稿している論文の一部を分かりやすくした記事を載せます。関心のある方はお読みください。参考までに英文の抄録を載せました。
Abstract
A psychological pathogenesis of patient with type 2 diabetes
-a comparison with major depression using a Multi-faceted Life Stress Questionnaire-
The number of diabetic patients has increased continually in recent years. A Multi-faceted Life Stress (MLS) Questionnaire was administered on patients with type 2 diabetesic subjects to discover detect a psychological pathogenesis of diabetes. The same questionnaire was administered also on patients with major depression and on healthy subjects, and the results of the three groups were compared and evaluated. Next, correlation between HbA1c and each scale was investigated on the group of diabetic subjects to find out identify the cause of various mental symptoms, pathological characters and deteriorated life satisfaction of diabetic patients, i.e., whether such symptoms are attributed to diabetes or to an incidental result due to the development of diabetes. Furthermore, the new scales such as the serotonergic neurotropic scale, the dopaminergic neurotropic scale and the noradrenergic neurotropic scale were established based on temperaments and behaviors of the subjects figured out from the answers of the questionnaire, and differences between the three groups were investigated for each scale. At the same time, correlation between the new scales and HbA1c was investigated on in the diabetic group.
The diabetic group and the depression group showed higher pathological scales including a tendency of depression, while showing lower level of life satisfaction that indicates the level of happiness than the healthy group. On the other hand, unlike the depression group, the diabetic group had relatively low level of excessive personality adaptation and high level of aggressive personality. These two personalities were not correlated with the severity of diabetes. As a result of a comparison with the healthy group using the new scale, the diabetic group and the depression group showed lower serotonergic neurotropic scale and dopaminergic neurotropic scale, but showed higher noradrenergic neurotropic scale in diabetes, which was also found to have no correlation with HbA1c.
From this investigation, psychological symptoms of diabetes, deteriorated life habits and satisfaction and their degrees can be a secondary effect of diabetes., hHowever, it is considered that the primary causesreasons of psychological pathogenesissymptoms of diabetes are attributed to aggressive personality and its associated hyperfunction of noradrenergic nerve. Therefore, a comprehensive approach for each phase of diabetes focusing on behavioral therapy is necessary while administering the (Multi-faceted LifeStress) Questionnaire when we provide diabetic patients with lifestyle guidance and psychological advices.
誰もが分かる心療内科その23
こういう人が糖尿病になるー糖尿病は心の病か?-
日本での糖尿病患者数は平成22年度の調査では潜在患者を含めると2210万人でしたが、平成24年度はなんと2800万人に増加の予測です。糖尿病は薬代だけでも2千~3千億円かかっており、糖尿病全体の医療費としては1兆2千億円を超えている状況です。さらに糖尿病の合併症からくる脳梗塞や心筋梗塞または失明や糖尿病性腎症からくるところの透析の費用を含めると、その医療費は相当なものと考えられます。現在企業の健康保険組合はすでに赤字のところも多く、3年後には積立金が消失するところも多くあるといわれています。これは日本の企業にとっても深刻な問題なのです。
現在、糖尿病の新薬がどんどん出てきていますが、糖尿病が減る傾向は全くありません。これは糖尿病の心理的な面及びそれを考慮した予防対策が全く考えられず、薬物療法ばかりが優先されているため、糖尿病を根本的に防いだり治すことができないためです。たとえば糖尿病になるとうつがひどくなってきます。またうつ病患者にも糖尿病が伴うことが多くあります。このように糖尿病は身体的治療だけでなく、その経過において心身両面の治療をしなければなりません。
しかしながら糖尿病の心理的要因について究明することに関しては、研究者の間で昔から「糖尿病の性格は証明されておらず、この方面の研究は非生産的である」と言われているように大変困難なこととされています。しかし今年、私は長い研究でそれを世界で初めて明らかにすることができました!まずストレスで糖尿病になるのか、糖尿病になったため心理的な問題が二次的に出たのかを明らかにしました。それを明らかにするため、まず糖尿病の重症度を示すHbA1cと様々な精神症状との相関を取ったのです。そうするとうつ状態や神経症的な性格は、糖尿病の重症度(HbA1c)が上がると悪化することが分かりました。ところが、攻撃型性格は重症度を示すHbA1cとは全く相関がなく、糖尿病の原因性格であることが分かりました。要するに糖尿病になる人は元来攻撃型のタイプA型性格で仕事熱心な人が多く、付き合いも多くなり飲食が多く、睡眠時間も短くなり糖尿病になり易いのです。この性格は糖尿病が悪くなっても変わりません。企業でも糖尿病の患者さんは、保健師や産業医の言う事を聞かない傾向にあります。重症になると二次的なうつ状態と性格的な攻撃性が重なって、益々言うことを聞かなくなり糖尿病が重症化して行くのです。
糖尿病の専門医はせいぜい糖尿病の合併症を説明し、なんとか糖尿病治療を受けさせるまたは継続させようとします。しかし、大切なことはこの糖尿病患者の心理的な事実を、すなわち糖尿病を放置するとうつ病や心理的に大変な状況になることを知らせるべきです。糖尿病が進行すればするほど、抑うつ状態や失感情症となり、意欲も低下し病気を治したいから治せないに状態に変わってしまうからです。糖尿病の患者さんは人生や仕事に積極性がありますが、糖尿病を治すことにも積極的で行動的にならなければなりません。それが実際は真の成功者となる早道なのです。
次に、私は人間の行動パターンのタイプを糖尿病とうつ病患者、それと健常者の3群間で調べてみました。人の行動パターンは3つの脳内アミンすなわち神経伝達物質(神経の働きを活性化するアミン)でコントロールされています。セロトニンは幸福感や安心感、ドーパミンは好奇心や快感、ノルアドレナリンは興奮、緊張や持続性を司っています。これらの性格は表の問診表(私の作った問診表ですが)によって、明らかにすることができます。それを3群間で比較し調べたものが下記の図です。糖尿病患者はうつにはなりますが、本当のうつ病とは異なりノルアドレナリンが活発に働いています。攻撃的な「元気の良いうつ病」というのが糖尿病のうつ状態と言えます。ですから、糖尿病患者がうつ状態になってもそれらしく見えず、仕事ができます。しかしその反面糖尿病はどんどん悪くなっていきます。皆さんもこの問診表をされ、大うつ病のような本当のうつ傾向なのか、それとも糖尿病のように元気の良いうつ状態なのかをチェックしてみて下さい。3つの神経伝達物質が少し高い所にあるのが理想的ですが、両方が低くどちらかと言うとノルアドレナリンが高い人は、将来糖尿病になる危険性もありますので、注意が必要な場合もあります。字数の関係で表を出しませんが、幸福感を表すセロトニン、好奇心を表すドーパミンの低下は糖尿病が重症になると二次的に低下しますが、このノルアドレナリン活性は糖尿病の重症度と相関がなく、糖尿病の原因と考えられます。攻撃型性格は社会や企業で成功するために絶対必要です。しかしそれは成功のための必要条件ではあっても十分条件ではないということを知っておいて下さい。


上の問診票をしてみて下さい。幸福のセロトニンは11点、好奇心のドーパミンは11点、興奮活力のノルアドレナリンは6点のところに平均値があります。図を参考に自分の状態を調べてください。ややセロトニンとドーパミンが正常値より高いところにあればベターです。セロトニンとドーパミンがそれほど高くないのに、ノルアドレナリンが高ければ少し注意です。