ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

グレンチェックのスーツ

2010-04-10 04:00:00 | 白井さん


 冒頭からいきなりで恐縮ですが前回訂正を・・・

 ● サルフラ(伊)の社名について、『恐らくだけど、サルヴァドーレ・フラテッリ、だろうね。』(白井さん談)とご指摘をいただきました。フラテッリは“兄弟”という意味です。

 ● リヴァーシブルのミラノクラシックが昨今希少となっている理由は、ブルゾンのメーカー側ではなく、革のなめし屋側にあるとのこと。私はてっきりリヴァーシブルの革は裏と表で2枚の革を張り合わせていて、それに手間隙が掛かるのだと思っていたのですが、リヴァーシブル用の革は一枚の革の表と裏を表情を変えてなめしているものなのだそうです。ですから手間が掛かり高い技術が必要なリヴァーシブル用の革作製は敬遠され気味なのだそうです。

 ● “来秋サルフラのオーダー会があります!”と書きましたが、“サルフラ製のミラノクラシックが入荷予定!”の誤りです。前回の撮影で『秋にサルフラやるからね。』と白井さんから伺った私は、今年の2月にヴァルスターのオーダー会が信濃屋さんであったこともあり、てっきり“サルフラのオーダー会をやる”という意味だと思い込んでしまったのが原因です。因みに“○○やる”という台詞は信濃屋で頻繁に耳にする言葉で、どうやら“○○を仕入れる、入荷する、取り扱う”といった意味で使われているようです。

 ● 伊勢崎町→伊勢佐木町 の誤りでした。

 ● 靴磨きのおじさん→靴磨きのお兄さん(達) の誤りでした。

 今回は重要な誤りも多く大変申し訳ありませんでした。では本日の着こなしスタートします。

   

 “さて、今日の白井さんの装いは、えぇ~と~赤いオーバーペインが入った黒白のグレナカートチェック・・・ん?・・・赤いペインのグレンチェック??・・・あれ?確かつい最近もお召しになっていたんじゃ!?・・・否、ちょっと違うかな??”

 この日の私が白井さんにお会いした時の第一印象です(苦笑)。しかし、その第一印象を直接白井さんに伝えるには私は余りにも小心者。白井さんが古くからのご婦人の顧客の方を接遇されている隙を見計らって、私は信濃屋さんイチの記憶力を誇るY木さんに『今日の白井さんのスーツって以前にお召しになられていたのと同じですか?』と訊ねたところ、『いえ、今日のはカンパーニャ(伊)ですね。前回のはオリジナル(信濃屋)で、ペインの赤が今日のより強かったと思いますよ。』と教えていただきました。なるほどなるほど!やはりそうでしたか(笑)と、ほっと胸を撫で下ろした私。

 すると、やがてお手すきになられた白井さんが私に『今日着ているのは・・・あれ?これは一回着てきたかな?(ニヤリ)』との問いかけをされます(笑)。白井さん一流のいたずらタイムの始まりです(笑)。

 “白井さん、さては僕を試されてるのかな?”そう直感した私は、先ほどY木さんに確認したことは伏せて、『いえいえ、前回のはペインの赤がもう少し強かったと思います(ニヤリ)』と涼しい顔でお答えしました。

 『そうそう・・・。』白井さん、ちょっと驚いてました(笑)。ズルをして申し訳ありませんでした(汗)。改めて、季節が巡ると同じグレンチェックでも今回はあいモノに適した若干薄手の素材、そしてツーピースでの着こなし“ジャンニ・カンパーニャ(伊)”です。

 発色の良いブルーのネクタイはステファノ・ビジ(伊)。とても柔らかそうな生地感だったのでカシミアかと思いましたが100%ウールでした。白井さん曰く『ネクタイのカシミアってあんまり意味が無いよね。暖かくなる訳じゃないしね(笑)。単なる付加価値の問題だね。』とのこと。私などはつい、柔らかさや色の美しさは“ウールよりカシミアの方が上”と思い込んでいましたが、今日の白井さんのネクタイはとても柔らかく色も綺麗ですし、私が昨年からいつもお馴染み銀座天神山さんで購入しているエディ・モネッティ(伊)のウールタイも色・質感ともに素晴らしい品質を誇っていて、ウールよりカシミアの方が全ての面で優れているとい考えるのは、単なる思い込みに過ぎないということに気づかされます。

     

 さて、スーツのなぞ掛けで私に出端をくじかれた白井さん。しかし、天性イタズラ好きの白井さんはめげません。次は上着のポケットから何か取り出されて鼻の穴に突っ込んでいました。カメラのファインダー越しに覗いていた私は、それはてっきり“薬用リップ”だろうと思い込んでいました。私は白井さんがどんな理由で“薬用リップ”を鼻に突っ込んでいるのかその真意を図りかね、どんなリアクションを取ったらいいのか判らず、白井さんにそのままお好きなようにして頂くしか手がありませんでした。反応の鈍い私にガッカリされたのでしょう。白井さんは徐に私にその“リップ”を見せてくださいました。そう、それはリップではなかったのです!

 

 『“ヴィックス”だよ。樟脳の時に話してたやつ、今日持ってきたんだよ。ほら、“カンファー”(樟脳)って書いてあるでしょ。』

 “VICKS Inhaler”鼻の通りが悪いときなんかに使うアメリカ合衆国製の点鼻薬で、アメリカの古い映画にもよく登場するちょっとした気付け薬です。以前、樟脳のお話をしていただいた時に、白井さんから教えていただいていたのを思い出しました。白井さんはちゃんと憶えていてくださって、この日ご自宅からわざわざ持ってきてくださったのです。そんなこととは露知らず、申し訳ありませんでした!そして、ありがとうございました。因みにこのヴィックスですが、薬事法の関係で日本での取り扱いは無いようです。

   

 靴はシルヴァーノ・ラッタンツィのベンティベーニア。2回目の登場です!今回は更に寄っての撮影に成功しました。

 この日の撮影はこの後、白井さんがお客様との接遇にお忙しかったのであまり進みませんでした。今日はこの辺でお別れですが、この日白井さんがご覧になっていたアレン・エドモンズ(米シューメーカー)の古いカタログをリンクさせておきます。これは信濃屋さんのお馴染みのお客様“W様”がネット上で発見し信濃屋さん宛にURLを送られたページです。白井さんは特に50年代の古いイラストの靴の数々の素晴らしさを賞賛していましたので是非ご覧下さい。

 最後に、私がこの日の撮影が物足りなさそうな顔をしていたからでしょうか、Y木さんが、ロンドンハウスのマリアーノ・ルビナッチ氏が白井さんに贈られたという、イタリーにある名店ばかりを写した写真集を見せてくださいました。今日はその中からこのブログでも何度か登場したミラノの『ティンカーティ』の写真を何枚か掲載します。

 明日からは更に気温が上がるようです。白井さんの着こなしも新たなステージに突入するかもしれませんね。