食の旅人

~ 食べることは生きること、生きることは旅すること、そうだ食べることは旅すること~
  野村洋文

NHK総合~「三島由紀夫とノーベル賞」

2019-02-06 14:10:15 | 日記

おとといの夜、NHK総合で「三島由紀夫とノーベル賞」を放映しておりました。 ノーベル文学賞を巡る、生々しい証言として、川端康成から三島由紀夫に「 君はまだ若い。僕はもう先がない老体です。今回は、僕に譲ってくれないか」というやり取りがあったことが報道されました。 初耳でした。 賞や名誉にこだわらず、無機的に淡々と人間の美、日本の美を描き続けている感じの、川端のイメージが大きく崩れました。人間的というか、俗世間的とでも申しましょうか、川端も人の子なんだなって感じです。 三島も親ほど離れた大先輩の川端にそういう風に言われて、「いやいや、僕に譲ってください」などと返せるわけもなく、その2年後の彼の自決にノーベル文学賞が影響していたのではないか、という説も公開されました。 三島由紀夫の死について、憶測、推測、論評を挙げると枚挙にいとまがありませんが、真実は闇の中、といったところでしょう。 今回のコメンテーター、作家の平野啓一郎氏の発言が興味をひきました。「まず、彼の心の根底には、特攻隊で散った仲間に対して、自分は、戦争にすら行くことができず、生き延びてしまった、という強い負い目があります。 さらに戦後、高度経済成長を果たした日本は、大義の無い、ニュートラルな世の中になってしまった。 三島のなかで、大義の為に散っていった仲間に対しての遺憾の義が強くなってゆきます。 時代は、学生運動に代表される、まさに左翼の時代であり、日本に対しての強い危機感も彼に同調してゆきました。 一方で、40歳を過ぎるころから、作品の売れ行きも下降線をたどるようになり、彼に続く、大江健三郎などの新鋭作家に対して越されるのではないかと恐怖を抱くようになった。 行き場のなくなった三島由紀夫が、死を選んだのは当然だった」 かなりの部分が的を射ているように思えます。 仮に、三島由紀夫がノーベル賞をとっても、彼の美意識の極致、老いに対する恐怖、新鋭作家への畏怖などから、死を選んだのではないかと僕は考えます。 今回、コメンテーターとして、女優の中江有里さんも同席されておりましたが、お話の内容、平野啓一郎氏と宮本亜門氏への切り返しなど、もう全てにおいてプロの文芸評論家でした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿