食の旅人

~ 食べることは生きること、生きることは旅すること、そうだ食べることは旅すること~
  野村洋文

須賀敦子

2014-11-02 16:55:29 | 日記
 「須賀敦子の世界展」を神奈川近代文学館で開催している。(港のみえる丘公園)大好きな随筆家のお一人。素敵だな、美しいな、と思う女性のお一人。生前刊行したエッセイはわずか5冊、僕は「時のかけらたち」「地図のない道」「ミラノ、霧の風景」の3作を過去に読んだ。どれも、彼女が暮らしたイタリアでの機微を切れ味よく筆致している。美しい情景の中に、その国の歴史、人を愛する喜び、あきらめ、哀れみ、といった日常の業が、とりとめなく織り込まれている。異国で彼女に描かれた人たち、つまり彼女が出会った人たちは、僕の記憶に忍び込み、懐かしさにも似通った透明な匂いを発散してくれた。彼女の普段着の言葉は、我々が共有する孤独という空洞を埋めてくれるには十分すぎるほどの重量感を持っている。秋の夜長、須賀敦子の言葉、呼吸に、耳を傾けられてはいかがでしょうか?