ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

君よ知るや、自分の国を「くそったれの国」と呼ぶ首相のいる国を。

2011-09-10 21:28:29 | 政治
『50歳のフランス滞在記』で何度か書いたと思いますが、小学校時代の愛読書は、「少年少女世界の文学」シリーズ。その中でも、特に好きだった本の中に、『クオレ』と『君よ知るや南の国』の2冊があります。ともに、イタリアに関係した本で、前者はエドモンド・デ・アミーチス(Edomondo De Amicis:1846-1908)の“Cuore”で、舞台がイタリア。後者はご存知ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe:1749-1832)の『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』(Wilhelm Meisters Lehrjahre)のミニョン登場部分。南の国とは、アルプスの南、イタリアのことですね。

君や知る、レモン花咲く国
暗き葉かげに黄金(こがね)のオレンジの輝き
なごやかなる風、青空より吹き
テンニン花は静かに、月桂樹は高くそびゆ
君や知る、かしこ。
かなたへ、かなたへ、
君と共に行かまし、あわれ、わがいとしき人よ。
(高橋健二訳)

イタリア大好き、という方も多いのではないでしょうか。イタリア料理、サッカー、映画、デザイン、カンツォーネ・・・世界遺産もたくさんありますし、訪れたい街は、それこそ枚挙にいとまがありません。

そのイタリアで、長年、政界・メディアのトップに君臨しているのが、言わずと知れたベルルスコーニ。しかし、芳しくない風聞ばかりが伝わってきます。首相がこれで、イタリアのイメージに悪影響はないのだろうかと思ってしまいますが、政治とは関係なく観光客も多いままのようですし、何しろ、ベルルスコーニは「イタリア人」を体現している、とも言われますので、イタリア人はやっぱりそうなんだと、変に納得してしまう向きも多いのかもしれません。

「イタリア人の幸福とは、愛人とパスタを食べながらサッカーを見ている時。」(『世界の日本人ジョーク集』)こうしたイメージが広く伝わっているのでしょうね。 因みに、「日本人の幸福とは、食事をさっさと終えて再び働き始めた時。」だそうですが、変わってきているような気もしますが、さて、どうでしょう。

そのイタリア、ベルルスコーニ首相に関する記事が、9月1日の『ル・モンド』(電子版)に出ていました。「ベルルスコーニがイタリアを『くそったれの国』と呼ぶ時」(Quand Berlusconi qualifie l’Italie de “pays de merde”)・・・

イタリア首相のシルヴィオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)がイタリアを「くそったれの国」と呼んだことが、1日、通信社ANSA(Agenzia Nazionale Stampa Associata)によって公表された。首相が7月に側近との電話でそう話していたそうだ。

「私は隠し立てをしない性分で、行動も清廉そのものなので、何事にも心配する必要はない。犯罪だと見做されるようなことは何もやっていない。だから、私が誰と寝たとか、そんなことしか人は言えないのだ。自分の仕事に集中するために、しばらく消えるつもりだ、さもなければ、吐き気を催すような、このくそったれの国から出ていくしかない」と、7月13日、ベルルスコーニは、ヴァルテール・ラヴィトーラ(Valter Lavitola)との電話での会話中、力を込めてそう語ったそうだ。

新聞の編集者で、現在は外国に滞在中のラヴィトーラには逮捕状が出され、イタリア警察が行き先を追っている。1日朝にすでに逮捕された実業家のジャンパオロ・タランティーニ(Giampaolo Trantini)とともに、ベルルスコーニをゆすったのではないかという嫌疑がかけられているのだ。

ベルルスコーニとの一夜を録音し、公開したことで有名な高級売春婦、パトリツィア・ダッダリオ(Patrizia D’Addario)とのスキャンダルに関わっていたタランティーニは、2009年当時、2008年の9月から2009年の1月にかけて、ローマとサルデーニャ島にあるベルルスコーニの家で行われたパーティに性的サービスを行う女性30人ほどを送り込んだことを認めていた。しかし、「彼女たちを自分のガールフレンドだと紹介した。自分が彼女たちに支払っていることをベルルスコーニには伝えなかった」と語っている。

ベルルスコーニ一族が経営権を握っている週刊誌『パノラマ』(“Panorama”)が伝えるには、ベルルスコーニ首相は一時金として50万ユーロ(約5,400万円)を、そして毎月、それよりは少ない額をタランティーニに支払い、若い女性たちが売春行為の対価として支払いを受けていたことをベルルスコーニは知らなかったと言い続けるように、またベルルスコーニにとって都合の悪くなる電話での内容を公表しないようにと、金の力でタランティーニに圧力をかけているに違いないと、ナポリ検察は睨んでいるそうだ。

ラヴィトーラに対し、イタリアの司法は、ベルルスコーニからタランティーニへの支払いの仲介を務め、しかもその一部を個人的に着服していた容疑をかけている。

・・・ということで、「レモン花咲く国」は、21世紀の今日、金とセックスにまみれているようです。ただし、横並びの国ではないのでしょうから、全員が、というわけではないと思います。ただ、誰もが、多少は、その傾向を持っているのかもしれないですが。

日本にいて、今、身近に感じるイタリア人と言えば、サッカーの日本代表を預るザッケローニ監督とコーチ陣。Jリーグと海外で活躍する日本人選手の試合は、すべて見ているそうです。また、毎週、どこかのスタジアムに足を運んで、直接、選手の動きを確かめてもいます。日本人監督よりも、勤勉なのではないかと思えてしまいますが、それだけカルチョ(サッカー)が好きだということなのでしょうし、監督やコーチに対する要求がそれだけ厳しいということなのでしょう。

また、新たな選手を見出すと、試合で使うことに躊躇せず。代表チームの監督はフランス語で“selectionneur”、つまり「選ぶ人」であって、各クラブ・チームの監督“entraîneur”、「鍛える人」とは当然仕事が異なります。試合のために、いかにベストのメンバーを選ぶか、いかにその時点でチーム・コンセプトに最もフィットする選手を選出するかが、代表監督の仕事。過去の実績や貢献度よりも、その時点で最も優れたプレーができる選手を見出す眼力が必要なのでしょうね。この点でも、さすが、カルチョの国の監督です。

財政赤字にもかかわらず、遊び呆けているイタリア本国の政治家は無視して、ザッケローニとコーチたちをぜひ応援したいものです。君と共に行かまし、2014年のブラジルへ!

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