ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

「絆」は「政策」より強し・・・ロワイヤル、オランド支持を表明。

2011-10-13 21:51:03 | 政治
社会党の予備選第1回投票の後で、大学で政治学を専攻したあるフランス人が、自分は性差別主義者ではないが、と断った上で、次のようなことを言っていました。「2007年の大統領選挙でセゴレーヌ・ロワイヤルが敗れた一因は、自分がフランス初の女性大統領になると語ったことだ。心情的な男性優位主義者が多いフランスでは、『女性の』大統領ということを強調すると男性票が逃げてしまう。そして今、マルティーヌ・オブリは同じ轍を踏んでしまった。もはや、彼女が社会党の公認候補に選ばれることはない。」

従って、16日に行われる予備選の決選投票では、オブリ支持者の中からオランドへ投票する男性が出てくるのかもしれません。しかも、「第1回投票で敗れたセゴレーヌ・ロワイヤルは、オランド支持を表明するだろう、なぜなら、4人の子どもを儲けた元パートナーなのだから」とも語っていました。

もしその通りなら、すでにオランド支持を表明している他の2候補を加え、第1回投票の投票率では、オランド39%、ロワイヤル7%、ヴァル6%、バイレ1%と、合計で53%になり、過半数を獲得することになります。しかも、オブリへ投票した男たちの中からオランドへ乗り換える人も出てきそうですから、オランドが社会党の公認候補になることになります。

政策的には、オランドよりもオブリに近いのではと言われていたロワイヤルですが、やはりかつての絆の方が強いのでしょうか。冒頭に紹介したフランス人は、ロワイヤルは元のパートナー、オランドを支持すると、簡単に言い切っていますから、理性的と思われているフランス人も、「絆」の強さを認識しているということなのかもしれません。いや、それこそ、国の違いを超えた、「男と女」、なのかもしれません・・・

さて、セゴレーヌ・ロワイヤルは、オランド支持を公表した際、もちろん、元パートナーだからなどとは言っていません。公式に言えることではないですからね。では、どう言っているのでしょうか。12日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

得票率6.9%(184,096票)で、社会党予備選の決選投票へ進むことができなかったセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)は、12日、通信社・AFPとのインタビューで、決選投票ではフランソワ・オランド(François Hollande)を支持する、それは第1回投票で示された投票者の意向にさらに勢いを与えるためだ、と語った。

セゴレーヌ・ロワイヤルの支持表明はオランド陣営からは歓迎され、オブリ陣営には敬意を持って受け入れられた。

自分のフェイスブックで、セゴレーヌ・ロワイヤルはオランド支持を決めた理由として三点を挙げている。

① フランソワ・オランドは第1回投票でトップに立ったが、投票者によって示されたその声を敷衍させることは正当なことだ。

② 昨夜、フランソワ・オランドは、私が主張してきた公約を、候補者としての政策をまとめ際に加味すると確約してくれた。つまり、私が2008年以来提案し、今日すべての社会党議員が同調してくれている銀行改革を実行に移すこと、政治家が複数のポストを兼職することをすぐにも止めること、エコロジーに配慮した経済活動へと方向転換すること、などだ。

③ 右翼にいかなる隙も与えないよう、社会党の公認候補にしっかりとした勢いをもたらすべきだ。

そして最後に、セゴレーヌ・ロワイヤルは、次のように語った。「我々には、市民の力を統合し、人間の価値が財政システムの冷笑よりも優位を占める新たな将来を創り出す義務がある。フランソワ・オランドなら、フランス国民を一つにまとめあげ、そうしたことを実現してくれると確信している。」

ロワイヤルの広報担当であるナジャ・ヴァロ=ベルカサン(Najat Vallaud-Belkacem)は、水曜午後、ロワイヤルがマルティーヌ・オブリに決選投票ではフランソワ・オランドを支持するという彼女の決断を知らせたことを認めた。

「セゴレーヌ・ロワイヤルは決選投票に臨む二人の候補者とそれぞれ話し合った。その後、彼女の決断と彼女の現状を知らせるべく、マルティーヌ・オブリに連絡を取った。その際、私はロワイヤルの下した決断を受け入れてくれたマルティーヌ・オブリの尊敬すべき態度への称賛を伝えた。」

セゴレーヌ・ロワイヤルは信念を持ってオランド支持を決めたのであり、水曜夜、テレビ局・France2の番組で行われる二候補者による討論の前にその決断を発表した方がよいと判断したのだ。

・・・ということで、「絆」は「政策」より強し・・・そう言えば、「ペンは剣より強し」という言葉は、Edward Bulwer-Lytton(エドワード・バルワー=リットン:19世紀イギリスの作家・政治家、第一次アヘン戦争当時の駐中国主席外交官、有名なリットン調査団の団長・ヴィクター・バルワー=リットンの祖父にあたります)の戯曲、“Richelieu ; Or the Conspiracy”(リシュリュー、あるいは陰謀)が出典とか。リシュリューは、ご存知、ルイ13世の宰相として、陰謀渦巻くフランス政界を生き抜いた人物。21世紀のフランス政界で勝ち残るのは、誰になるのでしょうか。

元パートナーからの支持を受けたフランソワ・オランドが社会党の公認候補になるのでしょうか。もし、政治姿勢が近く、予備選で3位の得票を得たアルノー・モントゥブールの支持を獲得できれば、マルティーヌ・オブリも票を半数前後まで延ばせる可能性があります。16日の決選投票、そしてその勝者とサルコジ大統領との来春の決選本番。あるいは、その間に割って入る「第三の男」あるいは「第三の女」が登場するのでしょうか。しばらく、フランス大統領選から目が離せませんね。