ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

Autolib’、パリを走る・・・Autolib’って、何?

2011-10-08 22:01:55 | 社会
Vélib’に乗ったことはありますか。“Vélo en libre service”、つまりセルフ・サービスのレンタサイクル。リヨン市では2005年5月からサービスを始めていたサービスですが、パリでは2007年7月15日に開始されました(詳しくは、『50歳のフランス滞在記』2007年7月17日をご覧ください)。

サービス開始当時は、年間パス、週間パス、一日パスのいずれかを購入して利用。パリ市内750か所の駐輪場のどこで借りて、どこで返してもOK。利用料金はカードから引き落とされる、ということでしたが、今では駐輪場もかなり多くなっているのではないでしょうか。環境対策と渋滞解消を目指したレンタサイクル・サービスですが、大成功しているようです。パリの石畳を自転車で走ると、見慣れた景色も違って見え、新鮮な経験になるかもしれないですね。

そして、自転車の次は、自動車だ! というわけで、この度、パリ市がセルフ・サービスのレンタカー事業を始めました。しかも、環境に配慮して、すべて電気自動車。EVです。EVによるセルフ・サービスのレンタカー。やたらとカタカナが多いので、漢字で表記すると、電気自動車共同利用事業。名前は“Auto en libre service”を略して“Autolib’”となったようです。そして、ニックネームは“Bluecars”。「ブルーカー」なのですが、“bleu”ではなく“blue”、そう、なぜか英語です。外国からの観光客に利用してほしい、ということなのでしょうか。それとも、パリもここまでアメリカナイズされてしまっている、ということなのか。たぶん、前者なのでしょうね。

さて、何台くらいで、利用方法は、また特徴は・・・2日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2007年に始められたレンタサイクル“Vélib’”に倣った電気自動車のセルフ・サービス・レンタカー事業、オートリブ・ブルーカー(Bluecars d’Autolib’)の第一陣、およそ60台が10月2日、パリとその郊外の道を縦横に走り始めた。

パリ市内にある10ヶ所のステーションで利用可能だ。まだ試験運用期間なので、60台、10ステーションになっているが、12月5日の正式な運用開始に合わせて、少なくとも250台に、そしてステーションは来年6月までに2,000か所に増やすことになっている。

9月30日にボロレ・グループ(Bolloré:運輸、エネルギー、製紙、自動車、テレコム、メディアにまたがる一大コングロマリットです)によって紹介された、都会的イメージのブルーカーは、カラーはアルミのグレーで、イル・ド・フランス地方の46市町村で利用でき、利用方法もいたって簡単だ。現在イル・ド・フランス地方で2万台が利用されているという、大成功を収めた“Vélib’”に倣ったシステムが採用されている。契約者は、どこのステーションで借りて、どのステーションに返してもOKだ。

このプロジェクトの目指すところは、クルマは必要な時に一時的に借りるという習慣を取り入れ、マイカーの削減を推進することだ。経済的であるとともに、環境に優しい事業であり、パリ周辺の騒音と排気ガスの減少が期待されている。

こうした自動車のセルフ・サービス・レンタカー事業はほかの大都市、特にニューヨークやオランダの都市ですでに始まっているが、パリの場合はすべて電気自動車だという点が革新的だ。しかもリチウム・メタル・ポリマー(lithium-métal-polymèr:LMP)電池を搭載しているが、この新世代バッテリーの充電量は、従来の電気自動車用バッテリーの5倍に達している。

ボロレ・グループによれば、この新世代バッテリーのお陰で、ブルーカーは市街地で250km走行でき、郊外では400km走ることができるそうだ。最高速度は時速130km、時速60kmまで加速するのに6.3秒かかるということだ。

ボロレ・グループ会長のヴァンサン・ボロレ(Vincent Bolloré:家業の傾きかけていた製紙会社を、一大コングロマリットに育て上げた実業家。2007年、大統領選に当選した直後のニコラ・サルコジに、プライベート・ジェットと豪華ヨットの使用という便宜を提供したことでも有名。ここから、サルコジ大統領の派手な生活ぶりが耳目を集めるようになりました)は、「我々は、180℃にならないと発火しないバッテリーを製造している世界で唯一の会社だ。他社のバッテリーは70℃で燃え始めてしまう」とメディアに対して語っている。ボロレ・グループはこの電気自動車の開発に150億ユーロ(約1兆5,500億円)を投資しており、製造はイタリアのピニンファリーナ(Pininfarina)社と共同で行っている。

ヴァンサン・ボロレが見積もる損益分岐点を超え、利益が出るようになるには、8万人の利用者が必要になる。そのため、“Autolib’”は安い利用料金を強調し、多くの利用者を獲得しようとしている。年間契約をした場合、ひと月の基本料金は12ユーロ、最初の30分の利用料金は5ユーロですむ。ドラノエ(Bertrand Delanoë)パリ市長は、自家用車にかかる費用が家計にとってますます重荷になっていることを強調しつつ、「ブルーカーがターゲットとして狙っているのは興味を持ちそうな30代に限らず、すべての住民だ」と語っている。

・・・ということなのですが、利用料金について追加すると、
(年契約)基本料金:ひと月12ユーロ
     利用料金:最初の30分5ユーロ
          次の30分4ユーロ
          それ以降30分ごとに6ユーロ
(一日券)基本料金:10ユーロ
     利用料金:最初の30分7ユーロ
          次の30分6ユーロ
          それ以降30分ごとに8ユーロ
となっているようです。旅行の時にも、利用できそうですね。その際には、くれぐれも、国際運転免許証をお忘れなく。

マイカーを手放してブルーカーを利用してほしい。しかも、環境のことを考えて、その利用はできれば短時間にしてほしい。そのような気持がこめられた料金設定になっているようです。

日本でも、カーシェアリングの利用が進展しています。EVの割合も増えていくことでしょう。しかし、その進展スピードは国によって違いがあるのかもしれません。特に政治は、単に環境対策だけを考えるのではなく、エネルギーや自動車など産業界の事情も考えるのでしょう。日本の政治は、はたして、どのくらいのスピード感で、EVによるカーシェアリングへと舵を切り、実現していくのでしょうか。そして、産業界は・・・