ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランソワ・オランドを潰すのは、パートナーから・・・なのか?

2011-10-07 22:49:07 | 政治
フランス人が大統領に求めるイメージは、「家父長」。国民の父として存在してほしい・・・その具体的イメージには、人それぞれ、若干の違いがあるかもしれません。どっしりとしていてほしい、危機に際して、頼りがいのある存在であってほしい、それでいて親しみがあってほしい・・・多くの要求が出てきそうです。

しかし、最低限、家父長としての大枠に収まらないと、大統領選挙を勝ち抜くのは難しいようです。敗れ去った、例えば、エドゥアール・バラデュール(Edouard Balladur)。あまりにも大物ぶり過ぎたようです。傲慢に見えてしまった。その分、国民との距離感が大きくなり過ぎたようです。社会党のリオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)は、学者然とし過ぎていた。頭のいいのは分かるが、よそよそしい。父親としてのぬくもりが不足したようです。

逆に勝者は、例えば、頼れる男、シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)、「トントン」(tonton:おじちゃん)という愛称で呼ばれ、今でも人気の高いフランソワ・ミッテラン(François Mitterrand)、気さくなジャック・シラク(Jacques Chirac)。時代が下るに従い、次第に国民との距離が縮まってきているようですが、それでも、いざという時に頼りがいのある存在、というイメージは維持されているようです。

家父長というイメージに対し、現職の大統領、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)は、“rupture”、伝統との決別を訴えただけあって、家父長というよりは兄貴的存在。やんちゃだが、行動力があり、それなりに評価できる。その点が新鮮に見えて当選したのでしょうが、しかし就任後は、その成り上がりぶりが鼻につく。しかも、大統領選の時の公約が、大風呂敷だった・・・こうしたことが一因となって、支持率も低迷しているわけです。そこで、再選を目指すには、「兄貴」から「家父長」へと変貌を遂げる必要があるようです。

そのために、まず、髪に白いものを混ぜた。染めたという噂があります。そして、極めつけは、生まれたばかりの赤ちゃんを抱く、本当の父親としての姿。カーラ夫人は、今月出産予定です。各党の公認候補が出そろうこのタイミングで、赤ちゃんを抱いたサルコジ大統領の写真が公開される・・・父親、ニコラ・サルコジ。しかし、カーラ夫人は、生まれてくる子どもを絶対にマスコミには公開しないと言っています。さて、どうでしょう。低い支持率という現状を打破するには、生まれてくる赤ちゃんに頼るしかない、とも一部では言われています。

しかし、もうひとつ、方法がある。対立候補を潰してしまうこと。たまたまかどうか、世論調査でトップを走っていたDSK(Dominique Strauss-Kahn)はアメリカで逮捕されてしまいました。訴訟が取り下げられ、フランスに戻ることはできましたが、社会党の予備選にすら立候補できなくなりました。その後、社会党候補として最も高い支持率を集めているのは、フランソワ・オランド(François Hollande)。そのオランドのパートナーをパリ警視庁が不法に捜査していたというすっぱ抜きが、週刊紙『エクスプレス』(“l’Express”)に掲載されました。フランソワ・オランドはいくら叩いてもほこりが出ない、それなら、パートナーを調べ上げろ、ということなのでしょうか。それとも、単なる「がせネタ」なのでしょうか。

4日の『ル・モンド』(電子版)が記事の概略と政界の反応などを紹介しています。

クロード・ゲアン(Claude Guéant)内相は、4日、社会党の予備選に立候補しているフランソワ・オランドのパートナーであるジャーナリスト、ヴァレリー・トゥリエルヴェイエ(Valérie Trierweiler)に対する情報機関による不当な捜査を示す証拠は見つからなかったと公表した。「もし明らかな証拠が見つかっていれば、憤慨しているところだ。そうでないということは、証拠がないということだ」と語っている。

週刊誌『エクスプレス』のサイトによれば、ヴァレリー・トゥリエルヴェイエの暮らしぶりと交友関係をはっきりさせるために、パリ警視庁の警官による捜査が行われた可能性がある。『エクスプレス』は職階の異なる複数の警官からの情報を収集し、捜査は彼女の略歴を明らかにすることが目的だったと述べている。

その記事に対し、パリ警視庁はコミュニケにおいて、大統領選の候補者になるかもしれない政治家のパートナーについての捜査を警察が行ったという情報をはっきりと否定した。パリ警視庁は共和国の法律と職業倫理をしっかりと遵守していることを強調するとともに、公僕たる警察の名誉を著しく傷つけるような噂の吹聴を残念に思うと述べた。そして、必要な手段を講じる可能性もあると語っている。

通信社・AFPが入手した警官の話によれば、もし情報が事実だった場合、総合情報局(les Renseignements généraux:RG)において一般捜査を担当する旧第8セクションの警官にその捜査は命じられたのではないかということだ。

RGや情報機関による政界での捜査は、捜査をめぐるスキャンダルが相次いだ数年前に禁止されている。

『エクスプレス』に出た情報についてAFPの取材を受けたヴァレリー・トゥリエルヴェイエは、疑われている捜査については知らないと述べ、「ただただ驚いている。今後の対応については、ジファール弁護士と相談したい」と語っている。彼女は、テレビ局・Direct8の政治番組“2012, portraits de cammpagne”(2012年、選挙の横顔)のキャスターを降板すると4日に発表しており、平穏を望んでいると述べている。

彼女の顧問弁護士であるフレデリック・ジファール(Frédérique Giffard)はAFPに対して、「目下のところ、追加情報はない。我々も『エクスプレス』の発表した情報しか持っておらず、あらゆる方面から情報を入手しようと試みている」と語っている。

グルノーブルに本社を持つ日刊のブロック紙“Le Dauphiné Libéré”のインタビューに応じて、フランソワ・オランドも今言われている捜査が実際に行われたのかどうか、まったく知らないと語るとともに、「私のパートナーに関して、法律の枠を超えて捜査の命令が本当に出さていたのなら、それは受け入れがたい異例な事態であり、司法の場に訴えるべきことだ。この件に関して完全なる透明性を求めたい」と述べている。

また、「内相やパリ警視庁はできる限り早く『エクスプレス』によってもたらされた情報に関わる真実を明らかにし、公表すべきだ」と、フランソワ・オランドはAFPに対し語っている。

社会党の臨時第一書記、アルレム・デジール(Harlem Désir)はそのコミュニケにおいて、重大な意味を持つ『エクスプレス』による情報について、すべてを明らかにすべく捜査を開始すべきだと語っている。

一方、与党・UMPの下院議員団長、ベルナール・アコワイエ(Bernard Accoyer)は、テレビ局・France3の番組で、「左派は問題を大きくし過ぎだ。一杯食わせるような、にせの情報なのに」と語り、左派を批判している。

2007年2月、大統領選の最中、グリーンピースの元ナンバー2であり、当時はセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)陣営のメンバーだったブリューノ・ルベル(Bruno Rebelle)が、RGの捜査対象になっているという訴えを行い、それに基づいて司法捜査が行われたことがある。RGのある捜査官が取り調べを受け、司法当局の監視下に置かれたという事件があった。

・・・ということで、大統領選が近付くと、違法捜査が行われたという情報がよく流されます。前回も、セゴレーヌ・ロワイヤルの家に空き巣が数度入ったという事件がありました。本当に空き巣だったのか、何者かが情報を取りに入ったのか、実は誰も侵入などしていなかったのか。情報戦・・・

ところで、父親らしい落ち着きを演出するために髪を染めているとも噂されるサルコジ大統領。テレビ政治の時代と言われて久しいだけあって、政治家もいろいろ考えるようです。若々しく見せようと、ベルルスコーニ首相は植毛したとも言われ、大統領選へ再出馬するプーチン首相は整形したとも噂されています。その点、オバマ大統領のめっきり増えた白髪は、苦労を如実に表しているのではないでしょうか。ご苦労様です。再選しても大丈夫なのか、心配になってしまいます、外野の大きなお世話ですが。

さて、サルコジ大統領が、カーラ夫人の声明に反して、子どもを抱いた写真を公開するのかどうか、もしかすると大統領選の行方を変えてしまうかもしれないだけに、注目されます。もう少しで、サルコジJr.の誕生です。