ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

社会党予備選、決選投票へ・・・合従連衡のエサは?

2011-10-11 22:19:02 | 政治
9日に行われた、来年の大統領選挙における社会党(PS)と左翼急進党(PRG:centre-gaucheでsocial-libéral)の統一公認候補を選ぶ予備選挙。6人が立候補しましたが、誰も過半数を得ることができず、上位2名、フランソワ・オランド(François Hollande)とマルティーヌ・オブリ(Martine Aubry)による決選投票が16日に行われることになりました。

今回の予備選、従来の党員による選挙から、一般に広く門戸を広げた選挙に様変わりしました。投票したい人は、1ユーロ(104円)以上を支払い、左派支持を誓って登録すれば、投票することができます。従って、投票者数は、以前が20万人前後でしたが、今回は250万人ほどに急増。その結果、事前に繰り返された世論調査とは異なる、驚きの結果も現れました。

どのような驚きがあり、各候補、社会党、与党・UMP(国民運動連合)はどのような反応を示しているのでしょうか。10日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

投票自体は大成功だったが、社会党には決選投票へ向けて難問が残った・・・これが、社会党と左翼急進党合同の予備選第1回投票を終えた9日夜の情勢だ。

<投票・・・社会党の新たな試み>
社会党はフランスで初めての試みに成功した。250万人ほどの投票者数が物語るように、門戸を一般に開放するという社会党の公約は守られ、実際多くの関心を集めた。

UMP幹事長のジャン=フランソワ・コペ(Jean-François Copé)が気に入って何度か言っているように、250万人という数字はフランスの全有権者の5%に過ぎない、とはいうものの、フランス全土で多くの人々を投票所へと向かわせたというイメージを作ることには成功した。特に人口の多い地域では、棄権の多い選挙に慣れた立会人を驚かすに十分な投票者数となった。この投票者数は、社会党、そして決選投票の勝者に勢いをもたらすことになる。また、ちょっとしたトラブルはあったものの、投票につきものの不正も報告されていない。UMP幹部たちもこの新しい予備選の方式を称賛している。

<トップは、オランド・・・しかし、圧倒的勝利とは言えず>
最終的な得票率が判明するのは月曜日だが、日曜夜の時点での社会党の予測によれば、フランソワ・オランドは39%を獲得し、間違いなくトップになる。事前の世論調査同様、優勢な情勢にあるのだが、圧倒的な勝利というレベルには達しそうもない。決選投票でも勝利できると確信できるほどの得票率とはならないだろう。

フランソワ・オランド自身、そのことは認識しており、投票終了後の演説で、他の立候補者たちの名前をあげて、彼の下にできるだけ多くの人が結束するよう呼びかけた。候補者の一人、マニュエル・ヴァル(Manuel Valls)はすでに、決選投票でオランドに投票すると表明している。オランドは、1年以上の選挙戦を通して獲得した今の勢いを徹底的に活用し、さらなる展開を、と急いでいる。決選投票の相手であるマルティーヌ・オブリが、オランドは優柔不断で、システムに容易に妥協するという非難を繰り返していることは承知している。党の第一書記を長く務め、統合・融和を得意とするオランドは、16日の決選投票で勝利するには、政策的にマルティーヌ・オブリに近い他の候補者に投票した人たちの票を獲得する必要がある。つまり、アルノー・モントゥブール(Arnaud Montebourg)とセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)の支持者たちだ。日曜夜のスピーチで、オランドはこの二人の健闘を称賛した。

<オブリ、後塵を拝す・・・しかし、勝算なきにしも非ず>
期待外れの結果だったかもしれないが、実際はそれほど深刻なものではない。日曜夜の時点での予測で31%の支持率となっているマルティーヌ・オブリは、フランソワ・オランドに次いで2位だが、彼女の周囲によれば決選投票で十分挽回可能な小差だ。

直前まで第一書記だったオブリは、投票終了後、いかにも政治家らしい演説を行った。世論調査の影響を指摘するとともに、難局に直面している時にフランスを導いていくには、社会党が投影するフランスの一体感というイメージを超えて、明確なビジョン、進むべき道筋、明らかなプロジェクトを持つことが必要不可欠だと語った。彼女は第1回投票で他の候補、特にアルノー・モントゥブールへ投票した人の票を多く獲得できる立場にいる。演説の中で、左派有権者のさまざまなカテゴリーの名をあげ、オランドの政治的立ち位置が中道寄りであることを明確にしようとした。彼女は選挙戦を戦う気持ちがないのではないかとしばしば批判されていたが、「2012年、自分がニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)に勝利する」と高らかに宣言した。

<モントゥブール、立場はキング・メーカー>
アルノー・モントゥブールが17%の得票率を獲得し、セゴレーヌ・ロワイヤルを10ポイントも上回って3位に入ったことは、第1回投票の大きな驚きのひとつだ。選挙事務所としたパリ20区にあるベルヴィロワーズ(Bellevilloise)公会堂で、支援者たちへ向けて、「世論調査が誤っていたことを明らかにし、党の第一書記経験者である二人の候補者の得票率を50%以下にし、自分の主張である『デモンディアリザシオン』(démondialisation:グローバル化とは異なる道を進むこと)を選挙戦の争点にすることに成功した。戦い続けるという決意にいささかの迷いもない。誰もが理解したように、私はもう少しで決選投票に進めるところまで支持を広げることができたのだ」と、胸を張って語った。

17%という多くの得票により、キャスティング・ボードを握ったアルノー・モントゥブールは、まだ決選投票でどちらの候補者を支持するかを表明していない。しかし、選挙事務所に詰め掛けたモントゥブール支持者のほとんどが、マルティーヌ・オブリへ投票する意向を示している。フランソワ・オランドとマルティーヌ・オブリ陣営からは、すでにモントゥブールとその支持者たちへ秋波が送られている。オブリ支持であるローラン・ファビウス(Laurent Fabius)元首相(在任期間は1986-88年と20年以上前ですが、現在でもまだ65歳)は、オブリとモントゥブールは多くのテーマで一致を見ることができると語っている。一方、フランソワ・オランドは、モントゥブールの提唱する革新の必要性を理解していると演説で述べている。

<涙のセゴレーヌ・ロワイヤル>
アルノー・モントゥブールが高い得票率を獲得した一方、セゴレーヌ・ロワイヤルが7%しか獲得できなかったことも大きな驚きの一つだ。7%は4位のマニュエル・ヴァルを辛うじて上回るに過ぎない数字で、2007年の大統領選挙で党公認候補として1,700万票を獲得した実績や、選挙戦を通してやはり有能だという声が多くから寄せられていたことを考えれば、明らかな敗北と言える。

投票終了後の演説の中で、フランス中で多くの支援者とともに繰り広げた手ごたえのある選挙戦からすれば、がっかりする結果であったことを認めている。開票が進むに従い、感情を抑えきれなくなったロワイヤル。決選投票でどちらの候補を支持するかは明かさなかった。周囲によると、態度を今週中に表明するだろうということだ。

日曜の夜、社会党は好対照をなす表情を見せた。新しい投票スタイルをトラブルなく実施できたことや、党としてまとまったイメージを醸し出すことができたこと、候補者による冷静でオープンな討論を実施することができたことなどを、誇らしく語った。その一方で、多くの投票者を含むオープンな投票制度ゆえに、決選投票へ向けて、今週、様々な裏工作が行われ、緊張が増大する可能性が指摘されている。

・・・ということで、フランソワ・オランドとマルティーヌ・オブリの間で戦われる、16日の決選投票。第1回投票で敗れた4候補の票を奪い合うことになります。すでに、6%を獲得したマニュエル・ヴァルと、左翼急進党の党首で、1%弱を獲得したジャン=ミシェル・バイレ(Jean-Michel Baylet)がオランド支持を表明したようです。これでオランドの支持率は46%ほど。あと5%です。わずか5%ですが、これが、問題。

もし、モントゥブールとロワイヤルの支持者がこぞってオブリ支持に流れれば、54%対46%で、マルティーヌ・オブリの勝利となり、フランス初の女性大統領が誕生する可能性が出てきます。モントゥブールとロワイヤルがオブリ支持を表明する可能性はありそうです。焦点は、第1回投票で二人に投票した人のうち、どれくらいまでがその指示に従ってオブリに投票するのか、はたまた、どれくらいが自分の判断でオランドに投票するのか、ですね。

一方、与党・UMPにとっては、世論調査が正しければ、オブリの方が組み易し。サルコジ大統領の再選の目が出てくるかもしれません。

さて、今週、どのような合従連衡が行われるのでしょうか。そして、そこにまかれるエサは? ポストなのでしょうか、それとも、将来的な後継指名なのでしょうか。あるいは、フランスならではの、他のエサがあるのでしょうか。16日の結果が楽しみです。
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