仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*コーラ・ディ・リエンツォー: ⑸

2022年05月19日 08時25分04秒 | *現代ドイツ短篇選


   コーラの一族は、今や称号や官職を与えられ、世界貿易のことや都市交易など喋り合っていたが、ガブリーニのことも気にかけていた。 あるとき食事の際、食堂に鳥籠を携えてきてはならぬ、まして、食卓に置くことなど罷りならぬといわれた。衣服についてもことあるごとに、なんだかんだと云ってはガブリーニのことを当て擦り、口やかましかった。

 また、或る祝いの際に、宮殿前のローマ教皇の銅像の馬の鼻腔から赤と白のワインが流され、自由に飲めるよう趣向が凝らされたことがあった。ガブリーニももちろん、皆に混じってお相伴した。が、一族の者は彼を叱責していうのだった。:そんなに酔い痴れて、少しはわきまえなくてはいけないと。

馬の鼻腔から流されたワインは最高級なものとは言えなかったが、お喋りしともに飲むことは楽しかったし、羽目を外し鱈腹飲んだことも事実だが、彼はこんなことも言われた。:     おまえさんときたら、挨拶もなっていないし、品もないんだね。・・これを聞くと、ガブリーニは流石に腹が立ち、一族の者とは相交えず避けるようになった。宮殿内は広く、それも叶ったのだ。
   
    ベルゲングリューン作「鳥の小皿」より・
    W.Bergengruen : Das Vogel-Schalchen

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする