Kanaheiのデンマーク生活

糖尿病の勉強をしたくてきたデンマークでの紆余曲折な生活を日記として残しています。

老後について考える

2006年08月13日 | わたくしごと
 デンマークといえば高福祉で、揺りかごから墓場まで安心して暮らせる社会と言われており、そんな話をデンマーク人(主に男性)としていると時々、彼らは「よかったね、この国にいられて」とか、結婚した外国人配偶者に対して「君はこんな国に嫁いで来れてラッキーだ」というようなことをはばかる様子もなく口にすることがありますが、最近は特にそんなことを彼らが言う場面に出くわすたびに、たとえそれがジョークだったとしても「Neeeeeeeeeeej!!!!!!どあほうめ!!」と言いたい衝動にかられます。

 確かに児童手当がもらえたり、教育費がかからないやら、失業時や老後の保証や、医療費がタダだったり、休暇や就労時間が法律でしっかり保護されていたり、日本も少しはこうなったらなあと思うこと多々なのですが、でもまだ結婚もせず、子供もおらず、この先デンマークに住むかどうかもわからない状況の外国人として、「こんだけ納めて還元されるものはあるんだろうか?」と思うし、デンマークの福祉は、彼らデンマーク人がデンマーク人のために作り上げたもので、外国人にとっては必ずしも彼らデン人が言うほどいいものではないと思うのです。

 そんな風に考えるようになったのも老人ホームに通い始めてからで、確かに外側から見ればゆったりとした個室を与えられ、年金もそれなりに給付され、寝たきりの人も少ないし(無理矢理にでも起こされるから)、日本の福祉現場で疲れ気味の人が見たら「なんてすばらしい!」と感動するものはあるかもしれません(私もそうだった)。でも働いてみて入所者のお年寄りをみて思うのは、実はそんなに日本の老人ホームのお年寄りとも変わらない、ということ。

 個人主義の国の国民として、自立している(せざるを得ない)ので、子供と離れて暮らすのは当たり前、子供は子供の人生があって親の面倒をみないのも当たり前(日本とデンマークの老人ホームの大きな違いとして、面会に来る家族がデンマークは著しく少ない)、そんな当たり前の中で生きていても、やっぱり加齢による淋しさはいくら福祉が充実していても、家族にも経済的にも恵まれていた人にも同じでしょうし、「淋しいけど一人で暮らさなきゃいけない」というのは日本のお年寄りと同じです。自由がきくうちは一人で気楽に暮らすのもいいだろうけど、そうじゃなくなった時は淋しいだろうなあ、と。特にデンマークは。どうせ同じだったら母国で日本語で、馴染んだものを食べて老後は暮らしたい…。

 あと日本でだったら高齢者がやや依存傾向になるのも当たり前、デンマークはサービスは十分提供されるものの、結局のところどうするかなど判断はその人にゆだねられスタッフもやけにすっぱりしてて、特に精神的依存は日本に比べて受け入れられない雰囲気があります。
 延命や積極的医療や周囲の高齢者の健康に対しての配慮といい、日本と比べてデンマークは非常に稀薄なところもあり、そこにはなんとなく「仕方ないよね」という妙にキッパリとした諦めすら感じます。
 噂によると、デンマークでは入院もしくは入所している高齢者の予後(急変時にどこまでの医療を施すか、食事が摂れなくなったり機能が低下してきた時どうするかとか)に関して、日本のように家族が決めることはほっとんどなく、本人が明確な意思を残さない限りたいがい自然の成り行きに任せられるのだそうです(実際どうなの?デンナース多永ちゃん?)。
 「このまま自然に…」というのも、日本のように時として苦痛を長引かせるだけの、ただ家族や医療者側の自己満足的治療(引いては日本の医療財政にも影響するし)に比べていいような気もするのですが、でもそういう日本の医療に慣れているものとしてこっちのは「え?!諦めるの早くない?!」とびっくりします。
 発言が国を動かすこと、税金の使い道に多いに反映されるので、若者や働き盛りの人や子持ちの人の方に傾くのでしょうがないのかもしれませんが。

 先日、ちょっと年配の日本人の方のお宅へお邪魔し、お酒を飲みつつそんなようなお話をしました。彼女はもう20年近くデンマークに住んでいて、お子さんも自立され、すっかりデンマークが彼女の人生の場となっており、「もう日本に戻りたくても戻れないだろうな」と言っていました。彼女は近々、第2の人生を歩み出そうとしており、別にデンマークにいる必要もこだわることもないそうなのですが、現実的、経済的にも、日本へはもう帰れない、と。
 確かに、私も日本の厚生年金なんて払ってないし、「墓場まで安心」なこの国では税金で搾り取られていくため貯金をするのも難しく、家計だって夫婦で分け合っていくわけだし、自分のために老後を日本で過ごすためのまとまったお金など作れないでしょう。子供達はデンマーク育ちだったら、もちろん「将来お母さんのことよろしくね」なんてことは言えないし(息子でしかもデン人の嫁なんて来たあかつきには絶望的だ)、今は自分で和食を作ったりできますが、老人ホームに入ったらほぼ365日黒パン、肉、じゃがいも、ブラウンソースな同じ食事(この時いたみんなで「これが一番の不安要素だ!」という意見で一致)。

 人生何があるかわからないわけで、もしかしたらこのままヨナスと結婚して、老後もラブラブ、デンマーク生活にもすっかり根を下ろし、デンマーク語だけでデンマーク人社会で暮らし、子供ともクリスマスと誕生日の時くらいにしか連絡取らず、365日黒パンと肉の塊とじゃがいもだけで、デンマーク人のように、もしくはデンマーク人として満足に暮らせるかも知れません。それかもしかしたら、子供がやや大きくなった頃にでも離婚とか再婚とか、日本に帰って老後を過ごしたくなるかも知れません。もしくはもしくは南スペインとか移住したくなるかもしれません…。

 まああれこれ書きましたが、今現在できることを含めての結論として、外国人として、大変だろうけど老後の蓄えは必要かなと。パートナーが当てになるとは限らないし(というかシングルマザーの母の影響でそういう考えは私の中にナイ)。27才として60年後くらいのことを心配するのもどうなのかとも思いますが、老人ホームにいて、「ああ、私もいつかは…」と考えてしまったもので。他の人はどう考えてるんでしょうかね?

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8 Comments

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Unknown (satomi)
2006-08-13 23:13:17
そっかそっか。やっぱり老後って心配だよね。さとみもそう思います。特に、デンマークに暮らすおばさんを見ていると、とっても心配です。だってだって、具合が決していいとは言えないJohanessを抱え、子どももなく、日本には自分の兄弟姉妹しかおらず、今後どうしていくのか。もしも、自分だけがデンマークで残り、生きていくことになったとき、どうなっちゃうんでしょう・・・何をしてあげられるのか。自分の祖父母以上に心配です。デンマークに飛んでいってあげたいくらい・・・
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Unknown (michiaki01)
2006-08-14 00:01:33
誰であっても、どこに暮らしていても、存在する問題ですね。



とかいう前に、うちの親、具合が悪くなったらどうしようか、というのが真っ先の問題で...。
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Unknown (さわさわ)
2006-08-15 00:48:02
なるほどぅ。

あんまり考えるとシワが増えそうだけど何があっても大丈夫な精神力とある程度の蓄えはしといたほうがいいんかな。外国に住んでるぶん心配事も大きいだろうねぇ。
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Unknown (Kanahei)
2006-08-15 00:49:00
satomiちゃん*

そうだよね、おばさんにとってはけっこう目の前の問題だよね。

だってさ、同じ日本に住んでても地方出身の人とかって「老後は田舎に帰りたい」とか言うでしょ?(人にもよるけど)

それと一緒で、年をとってくると色んなことが淋しくなって、「帰りたい」想いって強くなると思うんだよね~。まあ、帰っても問題はあるだろうけど。



michiaki01さん*

うちもです~。今は「介護が必要になったら帰ってくるよ」と言ってるけど、でも実際介護が必要になったらと思うと、不安です。学校や仕事がちょうど軌道に乗った時だったりとか、それだけならまだしも、子供がいた時のことを考えたら、こりゃー大変だ、と。
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Unknown (Kanahei)
2006-08-15 00:52:14
さわさわさん*

そうなんですよ~う。もう、シワどころか白髪まで生えちゃいそうです。

まあ案じてばかりいないで、とにかく働け!稼げ!そして貯めとけ!ってことですね。
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Unknown (あや)
2006-08-15 17:12:19
老人ホームに入ってからの食事…私もそのことが一番気になります。トルコ系移民の人々が今後たくさんホームに入ったときに、どうなるのか(新しいサービスができるかも?)とか気になってます。



まぁどこで暮らしても結局不安な老後。私個人としては、自分は延命されずに自然の成り行きにして欲しいと思ったりしています。こういうのって少数派なのかもしれないけど。でも自分の親だとやっぱりねぇ。複雑だね。
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Unknown (halfkids)
2006-08-15 17:25:10
私もいまだ老後のことをしっかり考えられないでいるのだけど(年齢的にそろそろです)、外国に住む場合、または外国人との結婚の場合はいろいろなケースが可能性がある分、考えちゃいますよね。

デン人・デン人カップル、または日本人・日本人カップルだったら、子どもの教育についても自分達の老後についても、また年を取ったときに食べたくなるものについてもだいたい同じような感覚でしょうが、私達の場合もそうはいかないのでしばしば議論になるところです。



今はあまり先のことを考えても仕方ないという半ばあきらめの気持ちを抱えつつ、とにかく育てていかなくてはいけないのは「子ども、愛情、そしてお金」かななんて思っています。

どこの国のどういう施設で最後を迎えようとも、家族の愛があればかなりなんとかなるし、幸せに死んでいけると思います。そのための愛をきちんと育てられればいいなー、と。

そして一方で大切なものはお金です、やはり(笑)。私もこれから老後の資金作りにはげみたい、なんて考えていますが、全然貯まりませんっ!

Kanaheiさんもきっと30代半ばくらいには人生が見えてきて、もっと具体的に人生設計が立てられ、お金のこともどのくらい必要なのか、見えてくるのではないかな~?と思いました。

普通は20代では見えてこないのは当たり前だと思うし、見えてこない分、不安になっちゃうのかもしれませんね。

ただどこの国でも共通だと思いますが、子どもがいるととーにーかーく、お金がかかるので、私はすべての独身の方に貯金をお勧めしたいと思います! あー、私もちゃんと貯めておけばよかった~と後悔しております。ほとんど貯蓄なしだったもんねー。
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Unknown (Kanahei)
2006-08-16 08:43:05
あやさん*

みんなとも話してて、さすがに宗教系の食事は出してくれそうだけど、米を毎回炊いてくれるようなことはないだろうね、って。しかも日本の米の炊き方でなんて…。

でも今寿司ブームで、もちょっと我々が入所するころには米や日本食も普及してるかなあ、なんて。



halfkidsさん*

子供・愛情・お金、まったくその通りだと思います。

とにかく何かあってもお母さんのこともすこ~しは頭に残していてくれるような、家族を大切(社会の最小単位ですもんね、家族って)にできる子供に育てつつ、虎の子もちょこちょこと…。

ああ、それにしてもお金を貯めるのって難しいですね~…。私もオペアを始めた当初はつき1万円は給料の中から貯金しようと思ってたのに…。結局マイナスでずっと来ちゃったっすよ。
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