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日本と世界

世界の中の日本

「団塊(だんかい)の世代」が75歳以上の後期高齢者入りし始める

2022-06-19 17:46:25 | 日記
いよいよ2022年から始まる日本の大問題

日経新聞を読まない君たちへ

いよいよ2022年から始まる日本の大問題
 
 
2022年が始まりましたね。今年も、日経新聞を読まない皆さんに向けて経済について軽く語っていきますのでよろしくおねがいします。

さて、2022年最初の話題は、「2022年問題」(2022年危機といわれることもあります)です。

「●●年問題」は毎年あるような気がしますが、今年のそれは、これからの日本社会が本格的に変わっていくそのはじまりの時期に突入したことを示すもので、私たちの生活にもすごく大きな影響があります。それってどういうことなのか、みていきましょう。

2022年は、1947(昭和22)年~1949(昭和24)年に生まれた「団塊(だんかい)の世代」が75歳以上の後期高齢者入りし始めるということを指します。

一言で言うと、社会が負担する社会位保障費の負担がぐんと大きくなり始めるということです。これが「2022年問題(危機)」です。

団塊の世代は、第二次世界大戦が終わった後の「第1次ベビーブーム」といわれた時代に生まれた人々です。

だいたい800万人くらいいます。

日本の人口ピラミッドを見てもらうととってもわかりやすいのですが、この世代と、彼らが親になり始めた「第2次ベビーブーム」(昭和46~49年)の人口が突出して多いんです。

人数の多い彼らは、戦後の日本の社会において、さまざまな局面で存在感を発揮してきました。

そしてこれから、団塊の世代は日本の高齢者の中心的な存在になろうとしています。

この団塊の世代が後期高齢者になり始めるのが2022年。

そして全員が75歳以上になるのが、2025年です。

いずれも「2022年危機」「2025年問題」などと言われています。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2025年には、日本の総人口約1億2200万人のうち、75歳以上の後期高齢者は2180万人になるそうです。

実に、人口の17.8%が75歳以上ということになります。
後期高齢者が増えると、私たちにどんな影響があるのでしょうか。

少子高齢化の影響は前からあるじゃんと言われればそうですが、現役世代のサラリーマンの負担額が今年からさらに増えます、と言われると深刻さがわかってもらえるでしょうか。

最もインパクトが大きいのは、医療や介護の負担増加です。

厚生労働省によると、高齢者1人当たりの年間平均医療費は、75歳未満は22万2000円ですが、75歳以上の後期高齢者は93万9000円になります。

歳をとると医療費がかさみますし、本人の自己負担は75歳になると1割に減るので、社会で負担する分が増えるということです。

高齢者の医療費は、社会保険料の負担として、みなさんが支えることになります。

みなさん、自分がどれだけ社会保障のお金を負担しているか、ご存知ですが。サラリーマンの場合は、給与から天引きされるかたちで社会保険料を支払っています。

社会保険とは、厚生年金、健康保険、介護保険(40歳から)、雇用保険、労災保険です。

年収に占める負担の割合(これを保険料率といいます)は年収額によって異なるのですが、年収500万円でだいたい15%くらいといわれています。

高齢化の進展によって後期高齢者の医療費が急増し、保険料率が大幅に引き上げられることになると見られています。

引き上げが予想されるのは健康保険です。

健康保険組合連合会によると、健康保険の料率は2007年は7.3%でしたが、右肩上がりで上がり続けて、2019年には9.2%になりました。

これが2022年になると9.8%に跳ね上がる見通しなんです。

ちなみに、40歳以上になると介護保険も払うようになりますが、高齢化によって当然、介護保険の負担も大きくなります。

同じく健康保険組合連合会にいよると、介護保険の両率は2010年は1.1%でしたが、2019は1.5%に、そして2022年には2.0%になるとの見通しを出しています。

給料から天引きされる社会保険の金額が大きくなると言うことです。

少ない現役世代でたくさんの高齢者を支える、社会保障の逆ピラミッド構造の問題はこれまでも指摘されてきました。

日本の医療や介護を支える社会保障制度は、「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」といわれ、若い人がお金を払って、それを高齢者が使うという形でやってきました。

しかし、現役世代だって貧困だったり子育てだったり、いろいろとお金は必要です。

さらに、高齢化が進めば今後、さらに若い人々の負担が重くなります。

さすがにこれはまずいというか、現役世代としては負担が重すぎますよね。

そこで、今年から、高齢者自身の負担を引き上げる方向で調整が入ることになりました。

ある程度お金を持っている高齢者は医療費の自己負担が引き上げるということです。

75歳以上の後期高齢者になると医療費の自己負担が1割で済むのですが、2022年10月以降は、一定の所得(本人の年収が200万円以上など)がある人は自己負担が2割に引き上げられます。

この対策がどこまでの効果があるのか、そして団塊の世代すべてが後期高齢者になる2025年以降にどこまで負担が拡大するのか、まだよくわからない面があります。

ただ、このままけば、現役世代の負担が大きくなるのは避けられないでしょう。

社会保険の問題は、複雑で難しい印象があるので深く考える機会が少ないのですが、実は自分自身の生活や人生に直結しています。

そして、あなたの親や祖父母の生活にも直結しています。

長生きはしてほしいけれど、自分の生活も豊かにしたい。この難しい問題に、一人一人が向き合って、知恵を絞らなければならないんです。


ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2022年5月

2022-06-19 17:23:59 | 日記
ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2022年5月

2022~2023年度の内外経済見通し


2022.5.19

株式会社三菱総合研究所


株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二)は、ロシアのウクライナ侵攻を含む5月半ばまでの世界経済・政治の状況、および日本の2022年1-3月期GDP速報の公表を踏まえ、世界・日本経済見通しの最新版を公表します。
  • ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2022年5月(全文)[3.7MB]

最新のレポートはこちら
  • 2022年1-3月期2次QE後「内外経済見通し」改定値(2022.6.8)
  • 内外経済見通し(一覧)


世界経済

22年1-3月期の世界経済は、1月はオミクロン変異株の感染急拡大、2月以降はロシアのウクライナ侵攻が下振れ要因となり、回復ペースが鈍化した。

インフレ圧力の強まりや素原材料・部品の調達制約が、企業活動や消費の重しとなっている。

中国のゼロコロナ政策による成長減速も、中国向け輸出やサプライチェーンを通じて世界経済に波及しつつある。

今後の世界経済は、防疫と経済活動の両立が進む中で、消費や投資を中心に景気回復を持続するとみるが、世界経済の回復ペースは、ウクライナ侵攻前と比べて大幅に鈍化するだろう。

世界経済の成長率は22年が前年比+2.9%、23年が同+2.9%と予測する(ウクライナ侵攻前の2月見通しから、それぞれ▲0.6%ポイント、▲0.1%ポイント下方修正)。

予測期間における世界情勢の不確実性は高く、見通しを左右する要素として注目すべきは、次の4点である。

第一に、ウクライナ情勢である。

ウクライナ情勢の悪化・長期化は、多様な経路を通じて世界経済の下振れ要因となる。

ロシア・ウクライナからの供給不足が長引くことで、資源などの価格上昇や、世界の生産・消費への影響が本格化する。

また、西側の対ロ経済制裁が長期化すれば、ロシア事業からの撤退を決める企業が増加し、資産償却など企業の損失拡大が想定される。

さらに、資源・エネルギー価格の高騰が継続すれば、交易利得・損失の不均衡が強まり、資源輸入国を中心に景気回復の重しとなる。

第二に、物価上昇圧力である。

資源・エネルギー価格の上昇などコストプッシュ型のインフレと、コロナ危機からの需要回復がもたらすデマンドプル型のインフレが相まって、世界各国で記録的な物価上昇率となっている。

当面は、家計の過剰貯蓄が、物価上昇による消費への悪影響を和らげる見通しだが、

物価に対して賃金の伸びが鈍い状況が長引けば、コロナ危機からの消費の回復ペースを一段と弱める要因となる。

第三に、米国の金融政策である。

デマンドプル型インフレ圧力が強まっており、FRBは22年内に計2.0%ポイント、23年内に追加で計0.5%ポイントの利上げを予想する。

金融緩和の縮小は、米国の消費や投資の抑制要因となるが、上記のペースであれば、米国経済は潜在成長率を上回る成長を維持することは可能だ。

ただし、新興国経済にとっては、通貨安がインフレ圧力を一段と強め景気の下振れ要因となる。

第四に、中国のコロナ対策である。

中国はコロナの感染を抑えるべく、都市のロックダウンなど経済的犠牲を伴う厳しい防疫措置を実施している。

中国政府は、ゼロコロナ政策による経済の落ち込みを補う財政・金融政策を併せて講じるとみられるが、ゼロコロナ政策を継続する限りは、22年の成長率目標5.5%前後の達成は厳しいだろう。

中国の消費や生産の停滞は、世界経済の下振れ要因となる。

先行きのリスクは、第一に、欧米での非常に高い物価上昇率の継続である。

ロシアが経済制裁への報復として非友好国とみなす相手向けの輸出を停止すれば、国際市況が一段と高騰し、欧米を中心にスタグフレーションに陥る可能性が高まる。

第二に、米国金融政策の過度な引き締めによる大幅な成長減速である。

インフレの加速により金融緩和の縮小ペースを速めすぎた場合に、金融市場の動揺や需要の過度な冷え込みを通じて米国の成長率が大幅に減速しかねない。

第三に、中国経済失速と不良債権増加の悪循環である。

ゼロコロナ政策の厳格な運用などをきっかけに、中国経済の期待成長率が大きく低下すれば、投資・消費が抑制され、成長失速と不良債権増加の悪循環に陥りかねない。
  • 総論 [1.2MB]

日本経済

日本経済は、22年度前半は防疫と経済活動の両立が進み、高めの成長を見込む。

 4-6月期には実質GDPの水準がコロナ危機前(19年10-12月期)を回復するだろう。

ペントアップ需要が一服した後も、23年度にかけて雇用・所得環境の改善に よって国内需要の増加基調が続くという 基本的な見方に変更はない。

ただし、ウクライナ情勢の悪化や円安進行による物価上昇圧力が強まることから、実質賃金と消費の回復ペースは、前回3月時点の見通しよりも鈍るとみている。

 22年度の実質GDP成長率は前年比+2.3%(前回同+2.6%から下方修正)、23年度は同+1.2%(変更なし)と予測する。
  • 日本経済 [1.6MB]

米国経済

米国経済は、22年1-3月は物流制約の緩和による輸入増もあり一時的にマイナス成長となったが、内需は堅調を維持している。

雇用・所得環境の改善持続を柱に、22年の実質GDP成長率は前年比+3.4%、23年は同+2.2%と、潜在成長率(1%台後半)を上回ると見込む。ただし、ウクライナ情勢の悪化などを背景に、先行きの不確実性は確実に高まっており、前回3月見通し(同+3.7%、+2.4%)から、いずれも下方修正する。

素原材料価格の上昇圧力の強まりに加え、構造的な人手不足により賃金上昇圧力も高まっており、FRBはインフレ抑制に向けて金融緩和の縮小ペースを加速させるだろう。金融緩和縮小の効果はタイムラグを伴って波及し、23年にかけて米国経済の成長減速要因となるだろう。
  • 米国経済 [1.4MB]


欧州経済

欧州経済は、エネルギーを中心にロシアへの依存度が高く、ウクライナ情勢の悪化による経済の下押し圧力は大きい。

脱ロシア化のコストは欧州経済に大きな負担となり、経済活動の再開で回復が期待された企業活動や消費の下押し要因となるだろう。

エネルギーだけではなく、防衛費の増額やウクライナ難民対応も、各国の財政負担となる。

ウクライナ情勢の悪化や中国など世界経済の減速が、欧州経済の回復を下押しすることから、欧州主要5カ国の実質GDP成長率は、22年が前年比+2.7%、23年が同+2.1% と、いずれも前回3月見通し(同+3.2%、+2.6%)から下方修正する。
  • 欧州経済 [830.8KB]

中国経済

中国経済は、政府のゼロコロナ政策が経済成長の妨げとなっている。

22年3月に入り深圳や上海での都市封鎖を受け、物流の停滞、生産や消費にかげりがみえている。

習政権は、22年秋の中国共産党大会で3期目入りを確かなものとすべく、相応の景気下支え策を出動するとみられるが、厳格な防疫措置の継続は、中国経済成長の勢いをそぐことになるだろう。

ウクライナ情勢悪化の中国経済への影響は限定的とみるが、22年の実質GDP成長率は、ゼロコロナ政策による成長下振れを受けて、前回3月見通しの前年比+5.0%から同+4.8%に下方修正する。23年は、経済活動の正常化進展を想定し、前回見通しと同様に潜在成長率並みの同+5.2%を見込む。



新興国経済

新興国は、ワクチンの段階的普及に伴い多くの国でコロナとの共生が進みつつあり、23年にかけて総じて成長回復を見込むが、ウクライナ情勢の悪化によるエネルギー価格上昇、世界経済の減速、米国利上げペース加速による資金調達環境の悪化という課題に直面している。 資源輸出国には資源高が成長の追い風になる一方で、 資源の対外依存度が高いインドやタイ、経済の欧州・ロシア依存度が高い中東欧諸国、経済基盤が脆弱なトルコ やアルゼンチンなどでは成長の下振れ圧力が強まるだろう。








国家間競争時代に突入した国際社会

2022-06-19 17:02:49 | 日記
2022年コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所(CJEB)
年次東京カンファレンスにおける林外務大臣基調講演
日本外交の課題~国家間競争時代における日本外交のフロンティア
令和4年5月25日
英語版 (English)





動画この基調講演は2022年5月20日に収録されたものです。

0 冒頭
 ワインシュタイン所長、御出席の皆様、

 3年ぶりとなるCJEB年次東京カンファレンスの開催を心からお祝い申し上げます。

 昨年11月に外務大臣に就任して以来、国際情勢の変化はその速さを一段と増し、従来の外交では対処できない事態が次々に生じています。このような状況の中、「不確実な世界のなかの日本」という時宜を得たテーマの下、本年の会議のトップバッターとして基調講演を行う機会を頂き、大変光栄です。

 本日は、「国家間競争時代における日本外交のフロンティア」と題して、日本外交の課題についてお話しします。



1 国家間競争時代に突入した国際社会
(1)国際情勢
 まずは日本を取り巻く国際情勢から見ていきましょう。

 現在世界は、20世紀末の冷戦終結以来の転換期を迎えています。冷戦終結後、米国はその圧倒的な政治力・経済力・軍事力によって、法の支配に基づく自由で開かれた安定的な国際秩序を支えてきました。その下で、中国、新興国は力を蓄え、政治的・経済的な勃興を果たしてきました。これは同時に、主要先進国の影響力の相対化をもたらしたのです。このような国際社会のパワーバランスの変化により、米国が単独で世界の平和と繁栄を支える時代は終わりを迎え、国際社会は国家間競争の時代に本格的に突入したと言えます。

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、この時代の転換を誰の目にも明らかなものとしました。ロシアによるこの侵略行為は、冷戦後の秩序のみならず、人類が過去1世紀にわたり築き上げてきた国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。また、このロシアの侵略は、世界のエネルギー・食糧供給にも混乱をもたらし、当事国、地域に留まらない経済問題を表面化させています。

 このような暴挙に対し、国際社会が結束して毅然と対応し、国際秩序を守り抜けるかが次の時代を占う試金石となります。



(2)日本外交の課題
 では、このような時代において、日本外交が取り組むべき課題とは何でしょうか。

 私は、外務大臣への就任時に、日本外交の新しいフロンティアを切り拓くことを宣明しました。これは、新たな国際社会の現実、すなわち国家間競争時代の始まりのなかで、日本、そして世界の平和と繁栄にとって望ましい国際秩序を擁護し、強化するための外交を展開する決意を述べたものでした。この半年間はその実現に向けて、各国のカウンターパートと、オンラインを含め、積極的に会談を重ね、また、先日のドイツでのG7外相会談への出席を始め、対面外交を再始動させています。

 ここでいう国際秩序の根幹には、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値がなければなりません。これらの価値は、戦後日本が一貫して擁護し、今日の日本への「信頼」の基礎となっているものです。岸田総理が外交の基本方針として掲げている3つの「覚悟」の筆頭も、この普遍的価値を守り抜く覚悟です。

 そしてまた、力による一方的な現状変更の試みが平和と繁栄を破壊している現実を目前にして、日本が擁護する国際秩序は、このような暴挙を許さない、法の支配に基づく国際秩序である必要があります。国家間競争の時代においても、法の支配に基づく国際秩序への支持を広げていくことが世界の平和と繁栄のための不可欠の条件です。

 日本外交がこうした国際秩序を擁護し、強化していくためには、第一に、力による一方的な現状変更の試みを許さない新たな枠組みを再構築し、国際社会における法の支配に基づく秩序への支持を拡大・強化する努力を主導せねばなりません。そして第二に、新たな現実に対応する、日本自身の対処力や強靱性も強化していく必要があります。

 この2点について、更に、具体的に述べていきましょう。



2 法の支配に基づく秩序の強化
(1)秩序を支える枠組みの再構築
 目下の世界において、法の支配に基づく国際秩序の最大の脅威となっているのはロシアによるウクライナ侵略です。この暴挙に対し、国際社会が結束し、ロシアの一連の行動に高い代償が伴うことを示していけるかが、新たな時代の進路にとって極めて重要です。

 同時に、この時代の先を見据えた外交を進める上では、ロシアの行動を止めることができなかった、現在の秩序を支える既存の枠組みの問題点を直視し、新たな暴挙を許さないための枠組み、グローバル・ガバナンスのあり方を検討することも急務です。

 現在国際社会においては、今回のロシアによる侵略以外にも、力による一方的な現状変更の試みや他国の政策の変更を企図した経済的威圧、更には偽情報の拡散やサイバー攻撃といった新たな課題が生じています。これらは国連憲章にも裏付けられた国際社会の基本的ルールへの挑戦です。こうした挑戦に対し、これを予防・抑止し、ひとたび事態が生じれば、迅速に対処し、影響を最小化させる仕組みを強化していくことが重要です。

 第二次世界大戦の終結以降、このグローバル・ガバナンスの中心を担ってきたのが国連です。そして、今回の国連安全保障理事会の常任理事国による露骨な侵略行為は、国連や安全保障理事会に内在する限界を改めて露呈したにとどまらず、国連憲章という大前提すら覆しかねない事態であり、国連システムのあり方を見直す差し迫った必要性を示すものです。国連が今後もその普遍性と正統性を維持しながら、国際社会の平和と安定、課題の解決に貢献できるようにするためには、その限界を補い、改革し、強化しなければなりません。日本が重視する安保理改革はもちろんです。しかし、それだけではなく、国連総会の更なる活用、紛争予防の視点の導入などを含め、国連を全体として強化していくことが重要です。



(2)秩序そのものの強化
 ア 同志国の結束、輪を広げる
 秩序を支える枠組みを強化すると同時に、法の支配に基づく秩序そのものを強化していくことも重要です。秩序の強靱性とは、それを支える国々の数とその意思の強さです。したがって、日本としては、秩序を支える強い意思を共有する同志国との連携を強化しつつ、その輪を広げていく必要があります。

 力による一方的な現状変更の試みへの対抗を共に主導するパートナーとして、今回のロシアによる侵略に対し最も有効に対応してきたのはG7です。本年だけで既に7回というかつてない異例の頻度で、G7外相会合が開催されています。先日のドイツでの会合では、ウクライナ情勢のみならず、インド太平洋における諸課題等、様々な論点についてG7のカウンターパートと率直な議論を行いました。今後とも、戦略的課題に対処していくに当たり、G7を中心としたパートナー国との連携を強化し、共に指導力を発揮することが重要です。

 さらに、G7以外の同志国とも連携を深めていかねばなりません。従来、地域の安全保障については、集団防衛を担う機構であるNATOを有する欧州に対し、アジア太平洋では、各国が米国との二国間同盟を結ぶという、いわゆる「ハブアンドスポーク」が地域の安全保障を担ってきました。

 先月、私は日本の外相として初めてNATOの外相会合に出席してきました。私からは、欧州とアジアの安全保障を切り離して論じることは出来ないことを強調し、参加国と認識を共有することが出来ました。また、NATOのアジア太平洋のパートナーとの関係強化の取組を歓迎し、日NATO間の具体的協力の推進も確認できました。

 このように地域をまたいだ安全保障協力、更には安全保障を越えた幅広い協力を、日本が主導力を発揮する形で進めており、共に国際秩序を支える意思を持つ同志国との連携強化に取り組んでいます。

 最後に、同志国を広げていく努力も必要です。3月の国連総会緊急特別会合での「ウクライナに対する侵略」決議と「ウクライナに対する侵略の人道上の影響」決議は、共に140か国以上という多数の賛成を得て採択されました。国連憲章、そしてそれによって支えられた秩序を擁護する意思が幅広い国々に共有されていることを示したものと言えるでしょう。しかし、賛成した国々の中には、新型コロナの影響により苦境にある国や、ウクライナ情勢に起因する経済危機に苦しむ国も含まれています。こうした国々の主張に耳を傾けることも、秩序への支持の裾野を広げていく上で欠かせません。
 イ ルールに基づく国際秩序への支持拡大
 今日、21世紀の国際社会に、独自の世界観、歴史観に基づき外国に政策や体制の変更を要求し、それが実現しないと見るや武力の行使も厭わない指導者が存在することは否定できない事実です。また、秩序への挑戦には至らないまでも、既存の国際秩序に懐疑的であったり、反発したりする国々も存在します。このような国際社会で、独善的な体制に対抗し、幅広い支持を得る秩序とは、普遍的な魅力を有する包摂的な秩序である必要があります。

 近年日本が掲げ、多くの国から支持を得ているビジョンが、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPです。その目的は、地域全体の平和と繁栄を実現することです。包括的かつ透明性のある方法で、インド太平洋にルールに基づく国際秩序を確保する、そして、そのような自由で開かれた秩序を発展させていくことをめざしています。「法の支配」は、まさにそれを支えるものです。

 日本は、各国の発展段階が異なることを前提とした上で、すべての国にとって重要なことを一緒に発展させていく、こうした考えの下、ビジョンを共有するいずれの国とも協力してFOIPの実現に向けた取組を進めています。米国は、このビジョンを実現していく上で最も重要なパートナーです。また、このメッセージの収録後になりますが、日米豪印でも、今月24日に、ここ東京に米国、豪州、インドの首脳を招待して、日本が日米豪印首脳会合を主催し、改めてFOIPのビジョンへのコミットメントを東京から発信します。

 FOIPを実現する上で、要となるのがASEANです。日本は、一貫してASEAN一体性及び中心性を支持しています。2019年には、ASEANはFOIPと本質的な原則を共有する「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を採択しました。今月の岸田総理の東南アジア歴訪でも、FOIPの実現に向けた連携を各国の首脳と確認しました。

 私自身、先に触れたNATO外相会合において、NATOのインド太平洋への更なる関与に向けた具体的協力を進めるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を確立するため、FOIPの実現に向けた連携を強化していくことを確認しました。更に、4月から5月にかけての「中央アジア+日本」対話・第8回外相会合やカザフスタン、ウズベキスタン及びモンゴル訪問、フィジー、パラオ訪問といった機会にも、こうした国々との間で連携の強化を確認するなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携が着実に拡大しています。
  ウ より広範な外交課題の解決の主導
 日本が、同志国と共に、国際秩序の強化を主導していくには、我々の掲げる秩序そのものの普遍性のある魅力に加え、世界の国々が直面している課題に対し、解決の道筋を示し、新たなルール、スタンダード作りを主導していくことも重要です。

 ロシアによるウクライナ侵略は、世界各地でエネルギー、食糧需給の逼迫や急激な物価上昇をもたらしています。中東・アフリカ諸国の中には、穀物の多くをロシアやウクライナからの輸入に依存している国々もあり、食糧安全保障上の危機が生じています。日本は、G7や国際機関などとも連携しながら、食料価格の安定化や脆弱な国への支援に取り組んでいます。本件については、先日のG7外相会合でも議論し、「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界の食料安全保障に及ぼす影響に関するG7外相のコミットメント」を確認しました。

 世界経済をめぐっては、経済的威圧や不公正な貿易慣行を排し、自由で公正な経済圏の拡大によって、新型コロナからの回復、新たな成長を実現していくことも重要です。日本は自由貿易の旗振り役として、TPPのハイスタンダードの維持や自由で開かれた多角的貿易体制の礎たるWTOの再活性化に引き続き取り組んでいきます。

 ウクライナにおける危機に世界の関心が集まる一方で、気候変動や国際保健といった人間の安全保障をめぐる課題に対する取組も歩みを緩めてはなりません。元々脆弱性を抱える国々にとって、新型コロナによるダメージが、そしてロシアの侵略に起因する困難が加わったことで、危機は一層差し迫ったものとなっています。こうした国々にとって、我々がこれらの喫緊の課題に真剣なコミットメントを継続することが、我々の掲げる秩序に対する信頼の基盤となります。日本は、戦略的・効果的なODAの活用等を通じて、持続可能な開発目標、SDGsの達成や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を加速していきます。

 さらに、ロシアによる核兵器使用の可能性への言及や北朝鮮による引き続きの核・ミサイル開発といった現実を受けて、「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の取組も困難に直面しています。G7外相も、先の会合において、「本年中に開催されるNPT運用検討会議において意義のある成果を収めることが我々の優先事項であることを改めて表明」しました。日本は、唯一の戦争被爆国として、立場の異なる国々の間の橋渡しに努め、日本の安全保障も考慮した、現実的・実践的な取組を積み重ねていきます。



3 日本の対処力・強靱性の強化
(1)日本を取り巻く脅威の多様化
 ここまで、国際社会における秩序の強化を主導する日本外交の取組について述べてきました。一方で、時代の転換期における変化の波は、日本にも等しく押し寄せています。続いては、新たな時代に日本自身が抱えるリスクへの対応について見ていきましょう。

 今日、日本を取り巻く脅威は多様化しており、新たな現実に対応する対処力と強靱性の強化が喫緊の課題となっています。  第一に、東アジアの安全保障環境は、その厳しさを一層増しています。現在起きていることを俯瞰すれば、ロシア、中国、北朝鮮という3つの課題に日本は直面しています。ロシアによるウクライナ侵略に対処しつつ、いかなる主体にも一方的な現状変更の試みや挑発的な行動を進める機会の窓が開いたと誤認させてはなりません。

 第二に、拡大する情報空間におけるリスクの高まりがあります。重要インフラに対するサイバー攻撃やSNS等を通じた偽情報の拡散など、ハイブリッド戦の脅威は、今回のウクライナ侵略で一層明らかとなってきています。とりわけ、2014年のロシアによるクリミア併合や2016年の米国大統領選挙への介入疑惑を契機に広く知られるようになり、現在のウクライナ危機をめぐって、深刻な脅威として顕在化しています。これは、有事・平時を問わず、民主主義社会の根幹に対する挑戦です。

 第三に、経済領域における安全保障リスクの拡大、すなわち経済安全保障が挙げられます。AIや量子といった最先端の技術も、軍事転用されることで安全保障上のリスクとなり得ます。また、新型コロナや今回のウクライナ危機により、世界のサプライチェーンが持つ偏りが、安定的な物流に脆弱性をもたらすことが明らかとなりました。エネルギーや食糧といった基幹物資の供給の混乱は、急激な国際価格の高騰をもたらし、安全保障上もリスクを生じさせています。経済的な依存関係を利用した威圧を躊躇しない国が存在する事実は、こうしたリスクが一過性のものでないことを示しています。



(2)日本の取組
 こうした情勢に対応した日本の取組は着実に進展しています。

 一層厳しさを増す安全保障環境においても、日本外交・安全保障の基軸が日米同盟であることには変わりはありません。私自身、就任以来、ブリンケン国務長官との間で、電話も含め累次の外相会談を実施するなど、史上かつてなく強固なものとなっている日米同盟の抑止力・対処力を一層強化すべく、緊密に連携しています。

 同時に、日本自身の防衛力の抜本的な強化も必要です。そのためにも、新たな国家安全保障戦略などの策定に取り組んでいます。  経済と安全保障を横断する課題についても、日本は、国家安全保障上の新たな課題である「経済安全保障」として広く認識し、優先課題として取り組んでいます。今次国会で成立した法案については、明後日の小林大臣の講演に譲りたいと思いますが、経済安全保障の取組には、同盟国・同志国との連携も不可欠です。

 外務省としては、日米豪印の連携やG7などの枠組を活用し、東南アジア諸国を含む同志国との協力の拡大・深化を図ってきています。これは、経済構造の自律性の確保や技術優位性の獲得といった経済安全保障のための取組が外交上も重要であるためです。今般のウクライナ情勢を踏まえ、このような同志国との連携・協力は益々重要なものになっています。引き続き、安全保障政策や対外経済関係、国際法を所管する立場から、同盟国・同志国との連携強化や新たな課題に対応する国際規範の形成などに積極的に取り組んでいきます。



(3)内なる脆弱性の克服
 ここまで、変化する国際社会の、いわば外在的なリスクへの対応を見てきました。しかし、新たな時代の外交を進める上では、我々自身の内に抱える脆弱性にも対処する必要があります。

 新自由主義的な考え方の下で実現した急激な経済成長は、一方で国内の格差や貧困を拡大させ、中間層を縮小させました。また、デジタル化の進展は、生活の利便性の向上という恩恵と共に、グローバル化の負の側面を加速化する結果を生み出し、また、人々に自らが欲する情報のみを与えるという選択を許容することで、分断を助長している側面もあります。こうして生じる社会の分断は、国民の理解を得て進めるべき民主主義政府の外交にも影響を及ぼしています。そしてここに、権威主義的な考えが付け入る隙も生じています。さらに、こうした分断が民主主義社会の弱さと見られることで生じるリスクも看過できません。

 経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、「神の見えざる手」を説いた『国富論』の対となる著作として、共感を基礎とする市民社会の秩序、道徳に関する『道徳感情論』を著しました。すなわち、資本主義経済は、共感に支えられた健全な市民社会なくしては成立しないとしつつ、過度の富の追求が社会の秩序や繁栄を毀損する危険に警鐘を鳴らしています。

 資本主義経済の揺籃期から指摘されてきたこの難題の解決に、今世界各国が取り組んでいます。米国のバイデン政権は、ボトムアップとミドルアウトからの経済成長を掲げ、大型の経済政策を通じて、中間層の成長を支援しています。EUでも、新型コロナ後の経済復興計画である「次世代のEU」を通じ、格差の是正を含む経済・社会の変革も達成しようとしています。

 そして、日本では、岸田内閣の下、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、持続可能な経済社会を実現する取組を進めています。分厚い中間層を取り戻し、国民の皆さんへの丁寧な説明を通じて、国民と共にある外交・安全保障を推進していきます。



4 結語
 二度の世界大戦を経験した人類は、このような惨禍を二度と繰り返すことのないよう、紆余曲折を経ながらも法の支配に基づく国際秩序を築き上げてきました。日本もまた、この秩序の下で、第二次世界大戦からの復興と繁栄を実現してきました。今再び、世界は新たな時代への岐路に差し掛かっています。不確実性を増す国家間競争の時代において、それでも、同志国の輪を広げ、法の支配に基づく国際秩序を擁護していくことが、その恩恵の下で発展してきた日本の使命だと考えています。

 日本は、戦後一貫して平和国家としての道を歩み、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定に貢献してきました。人間の安全保障に立脚した途上国への開発協力を行うとともに、国際的なルール作りに取り組んできました。軍縮・不拡散や国際的な平和構築の取組にも貢献してきました。こうした努力により得た世界からの「信頼」こそが、新たな時代に、日本外交がそのフロンティアを切り拓く力の源泉となっています。先人の思いと遺産を引き継ぎ、そこに同志国との連携を始めとする新たな力を積み重ねることで、世界に平和と繁栄をもたらす秩序への支持を広げ、強化していく外交を主導していく決意です。

 御清聴ありがとうございました。








「韓国経済の3大リスクはサプライチェーン・家計債務・中国経済」

2022-06-19 16:28:08 | 日記
「韓国経済の3大リスクはサプライチェーン・家計債務・中国経済」

登録:2022-05-16 21:04 修正:2022-05-17 06:46

全経連、商経系列教授150人にアンケート調査 

3大リスクにサプライチェーン・家計債務・中国経済 
スタグフレーション、製造業の萎縮も

米中貿易戦争は、韓国の輸出に赤信号を点している。釜山港埠頭に輸出入コンテナが積まれている/聯合ニュース

 商経系列の教授たちが韓国経済の3大リスク(危険要因)として、サプライチェーン(供給網)の混乱・家計債務・中国経済のハードランディングを挙げた。
 全国経済人連合会(全経連)は16日、首都圏の大学の商経系列教授150人を対象に新政府が留意すべき経済リスクをアンケート調査(3月4日~3月27日)した結果、このような危険要因の発生確率と危険性が最も高かったと明らかにした。

今回の調査は、発生確率と危険性を掛けて分析したが、これら3つのリスクの強度はすべて9点(10点満点)と推定された。

 回答者は、米中軋轢の激化とロシア-ウクライナ戦争などにより、グローバルサプライチェーンの混乱が長期化する可能性とその危険性が最も高いと診断した。

対応策としては、主要な原材料の輸入先の多角化(42.2%)、エネルギー利用効率向上のための産業構造改善(16.5%)、海外資源開発の拡大(15.3%)などを提示した。

 家計債務の不健全化による金融発の経済危機に対する憂慮も高かった。解決方案としては、基準金利の引き上げ基調維持(28.5%)、雇用拡大を通じた家計の金融防御力強化(17.1%)などを挙げた。

 不動産バブルと過剰な企業負債による崩壊、新型コロナ封鎖などで中国経済がハードランディングする可能性が3番目のリスクに選ばれた。

対応策としては、輸出先の多角化支援政策(47.0%)が最も多く挙げられ、安定した金融システム防御力の構築(29.5%)、対中依存度の高い産業に対する支援強化(18.6%)などが提示された。

 この他に、過去のオイルショックの時のようなスタグフレーションの発生と温室ガス縮小負担による製造業萎縮も強度6点水準のリスクに挙げられた。

 全経連のチュ・グァンホ経済本部長は「新政府は対内外の不確実性の高まりによる複合的な経済危機状況の中でスタートすることになった。

政策的力量が制限されているので、サプライチェーンの混乱の深刻化などが発生する可能性が大きく、韓国経済に及ぼす波及の影響が大きい対内外リスクから優先して管理する必要がある」と話した。