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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車、120mm重迫撃砲装甲牽引車両としての先行導入

2014-02-14 23:26:52 | 防衛・安全保障

◆先ず重迫撃砲牽引車として導入する案
 四輪駆動機動装甲車、軽装甲車両の汎用車両化として掲載した提案の中に重迫撃砲牽引車を提案していますが、この点をもう少し。
 Iimg_0647 陸上自衛隊は2000年代に入り軽装甲機動車の大量配備を開始、実に約2000両を調達し、北部方面隊を除くほぼすべての普通科連隊に一個中隊を装甲化させるとともに、本部管理中隊や偵察隊へ装備、普通科以外の職種へも中隊本部車両などとして装備が進められています。軽装甲機動車は近接戦闘における最小部隊単位である小銃班を機銃組と対戦車組の二両に分乗させ、乗車戦闘を主眼とした火力の分散と集約を迅速化を計りました。しかし、それ以前、高機動車が大量配備されたことで自動車化が進んだという近代化を忘れてはなりません。
Fimg_5372  自動車化は1990年代初頭より普通科部隊へ大量の高機動車が配備開始となり、事実上普通科部隊は軽装甲機動車等の装甲車両に乗車していなければ、高機動車に乗車し、戦線近くまで進出、降車戦闘と地形防御を主体とした機動力主体の編成に以降し、機動力と一定の防御力を良質した機動運用が可能な軽装甲機動車との連携を実現しています。四輪駆動機動装甲車の提案は、この高機動車による普通科部隊の緊急展開に装甲防御力を付与し、特に機動力について降車戦闘の展開位置を戦線に近い地域において実施可能な体制を築き、部隊としての機動力を更に高めよう、というものです。
Simg_4171  さて、四輪駆動機動装甲車、現在運用している96式装輪装甲車は高価すぎ、必要な整備支援が大きく、全普通科部隊へ普及させる安価な装甲車を志向しています。四輪駆動で一個小銃班が乗車可能であり且つ安価な装甲車両という提案で、仮に軽装甲機動車をキャブオーバー型、エンジン区画を車体前部ではなく操縦区画に隣接し配置し、車体を延長することで、現在の軽装甲機動車の乗員数を4名から操縦手を含め11名の乗車を可能とする、少々無理があれば、フランス軍が1970年代半ばから大量配備を開始したVAB軽装甲車のような車両を国産で開発するか、海外製車両を自衛隊の補給体系に合致したエンジンなどに置き換えライセンス生産かノックダウン生産を行う、という提案を行っています。
Fimg_6639  その四輪駆動機動装甲車を重迫撃砲の牽引車両として応用できないか、と。重迫撃砲は高機動車を重迫牽引車として運用しています。元々高機動車は以前の107mm重迫撃砲に代えて新しく1990年代より導入する120mm重迫撃砲の牽引が主たる用途として考えられており、汎用車体として開発された高機動車がそのまま普通科部隊へ広く配備され、様々な装備品の運用車両へ汎用性を活かす事となり、広く配備されたものです。重迫撃砲ですが、現在陸上自衛隊では近接戦闘への重視へ、特科火砲の縮小を続けています。今回の新防衛大綱では特科火砲は400門から300門へ縮小されました。単に多連装ロケットシステムを特科火砲の定数から除いただけとも取れる数ですが、既に重迫撃砲は陸上自衛隊が火砲を特に直掩火力としての105mm榴弾砲を全般火力支援用の155mm榴弾砲に統合した時点で、単なる第一線火力支援用としての能力がさらに求められることとなりました。
Mimg_0200  他方で自衛隊が装備する120mm重迫撃砲RTは通常弾射程8100m、射程延伸弾射程13000mと、以前に装備していた107mm重迫撃砲M-2の4000mを遙かに凌駕していますので、それだけに期待も大きかったことでしょう。そして今日に特科火砲が縮小傾向から脱することが出来ない現在、不可欠な支援火力である重迫撃砲は一門たりとも敵の攻撃により失うことが出来ないという傾向が強くなっているという事も出来、そのために装甲車両で牽引し、脆弱性を払拭する必要があるように考えるところ。
Fimg_5467  高機動車はトラック以外の車両としては非常に大型であり、普通科部隊は近代化とともに対戦車装備の弾頭大型化や戦闘防弾チョッキの装備と暗視装置や通信機器など重量化し多種多様化する各種装備品を携行する上で余裕があり、意外な不整地突破能力を有するこの装備を大量配備した事は正解でした。しかし、重迫撃砲は直掩火力として非常に大きな能力を持つ装備ですから、機動力を支え、且つ攻撃にも曝される牽引車両についても装甲防御能力は不可欠ではないにしても望ましいことには変わりません。
Img_3726  陸上自衛隊は96式自走迫撃砲として第七師団の第11普通科連隊重迫撃砲中隊に装甲化した自走迫撃砲を集中配備しています。これは89式装甲戦闘車と73式装甲車により完全装甲化されている機甲師団の普通科連隊へ適宜必要な火力支援を行う装備として開発されました。しかし、この96式自走迫撃砲を除けば自衛隊は高機動車により重迫撃砲を牽引しているのです。ちなみに96式自走迫撃砲は120mm重迫撃砲の牽引用車輪を除き車載用とした砲機構を搭載しています、ですから車両から降ろして掩砲所に配置する事は出来ません、即ち機動力に特化した装備、ということ。
Img_2603  自衛隊が96式自走迫撃砲を開発した際、120mm重迫撃砲を開発したフランスでは自走迫撃砲を有していませんでしたが、海外への輸出需要を見込み装輪装甲車へ120mm重迫撃砲を搭載したものを市場に供しました。もちろん、自走迫撃砲というものは珍しいものではありません、米軍では107mm重迫撃砲M-30をM-113装甲車の改造車両に搭載しM106自走迫撃砲として広く配備しましたし、後継として米軍が採用した120mm重迫撃砲をM120も-113装甲車に搭載されM1064とし、ストライカー装甲車にも搭載されM-1129として制式化されました。
Img_4423  それでは自衛隊が採用した120mm重迫撃砲を開発した開発国であるフランス軍ではなぜこうした自走迫撃砲が開発されなかったか、と問われれば、フランス軍ではアクマット社製VLRA汎用車両が120mm重迫撃砲の牽引用に使用されているのですが、このほかに機械化部隊の軽装甲部隊等ではVAB軽装甲車が120mm重迫撃砲の牽引車両として採用されているのです。VABは10名の歩兵を輸送でき、車載能力は少なくとも乗員数で高機動車と同等です、VABは120mm重迫撃砲を牽引し、射撃位置に展開すると120mm重迫撃砲を切り離し、射撃地に展開します。重迫撃砲は大きな火力である分大きな目標となりますので、敵砲兵の反撃から装甲車隊が操作要員を防護しますし、遊撃隊と遭遇した際には重機関銃で制圧することも出来るでしょう。
Img_3613  オランダ軍もかつて、120mm重迫撃砲をYP-408装甲車により牽引していました。YP-408装甲車はオランダ軍が自国向けに開発した8輪式装甲車で、1960年代に開発した装備です。YP-408装甲車の重迫撃砲牽引仕様はPW-MTとされていましたが、迫撃砲操作要員7名と50発の砲弾を搭載し運用していました。もちろん、射撃時は操作要員が車外に展開しますので、この瞬間に砲兵攻撃を受ければ車内に急ぎ退避しなければ多大な損害が、自己鍛造弾などの対装甲砲弾で攻撃されたならば被害は免れませんが、機動運用時ならば多少の攻撃からは乗員を防護できます。
Gimg_6155  車載式の重迫撃砲であれば、乗員は射撃時にも狙撃などの脅威にさらされず射撃が可能です。特に市街地戦闘などでは直掩火力である重迫撃砲の重要性が高いという部分、アメリカ軍がイラク戦争において証明していますし、イスラエル軍もその重要性を市街地戦闘において認識し実践しています。しかし、M-120と比べ自衛隊が運用する120mm重迫撃砲RTは大型であり、更に車載しますと、降車展開できる構造ではありません。これは、車体の動揺等で汎用車体を用いた自走迫撃砲には命中精度に影響しますし、装甲車は大型ですので暴露しやすいという欠点から逃れられません。
Img_6430  高機動車による120mm重迫撃砲の牽引時は、射撃位置に展開しますと、要員と砲弾にコリメーター等を射撃位置に残し、高機動車は待機位置に避退します、これは敵に高機動車の車体が発見され、重迫撃砲の展開位置を暴露しないようにするものです。装甲車に車載してしまいますと車載運用に固定されてしまうため、こうした運用が出来なくなりますし、車両から射撃する際には懸架装置の強化かジャッキの追加などを行わなければ命中精度に影響が出てしまいます。この点で、装甲車に牽引する、という選択肢はある意味非常に合理的と言えるでしょう。
Aimg_2495  ただ、かならずしも利点だけではありません。四輪駆動機動装甲車はヘリコプターで空輸が難しく、例えばフランスのVAB軽装甲車であれば全備重量は13t、軽装甲機動車の4.5t、4.5tは自重のような気もするのですが、CH-47輸送ヘリコプターは11.3tまでしか吊下輸送できませんので、高機動車を重迫牽引車として使用した際のように、空中機動させることが出来ないのです。7.5t以内で四輪駆動機動装甲車を設計することが出来、VABは全高2.06mですが、これをCH-47の機内に収容できる高機動車と同程度の1.85m以内に収められれば別なのですが、まあ、国産するのであれば要求仕様にCH-47機内に収容できるよう要求すればいいのですけれども。
 Mimg_1407 四輪駆動機動装甲車の重迫撃砲牽引車両という提案は、重迫撃砲の牽引用として最適な選択肢といえるかもしれません。また、逆に重迫撃砲牽引車両として四輪駆動機動装甲車を整備し、しかる後に普通科部隊へ配備するという選択肢もあり得るのかもしれません。既に見積りで、普通科連隊の軽装甲機動車を装備していない三個普通科中隊に四輪駆動機動装甲車を装備し、本部管理中隊などの所要を含めた場合は50両の四輪駆動機動装甲車が必要となる試算を行いました。しかし、装甲化を暫定的に一個普通科中隊所要と重迫撃砲中隊のみ、とするならば、一個普通科連隊所要は30両となり、施設大隊への配備等を加えても一個師団所要100両で対応できます。
Oimg_0294  重迫撃砲中隊から四輪駆動機動装甲車を装備し、高機動車が重迫撃砲牽引車として普通科部隊へ提示されるとともに大量配備へ進んだ道を再度踏襲する方策で一挙に自衛隊の装甲化を推し進める、重迫撃砲牽引車は四輪駆動機動装甲車の派生型一案として提示したものなのですけれども、逆転の発想でこうした方策を行えば、かつてなかなかトラック軌道から離れる事が出来ず自動車化の端緒を探していたところを高機動車が果たしたような、そうした用途が、期待できるかもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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13 コメント

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初めてコメントさせていただきます。 (PAN)
2014-02-15 01:55:55
初めてコメントさせていただきます。

120mmRTの牽引車両に装甲性を持たせる必要性については同意しますが、そのための牽引車両として設定されている四輪駆動機動装甲車は、そう簡単にはいかないんじゃないでしょうか?

次期装甲車両を考えるなら、IED対策は必須でしょう。となると、シャーシなどの基本構造から見直す必要があります。また、室内容積も高機動車並みの広さを確保するには、単に車体の延長だけではすみません。当然搭載するエンジンも現行の160馬力からかなり引き上げないと、大幅に伸長化された車両+120mmRT牽引にはアンダーパワーとなります。
そうなると、おっしゃるように四輪駆動機動装甲車を軽装甲機動車の改造で製作することはかなり無理が生じます。おそらくシャーシから新しく設計する、新規車両にならざるを得ません。ブログ主様が意図されているように、比較的安価な車両になることは、難しいのではないでしょうか?

そこで当座は、現行で大量配備されている軽装甲機動車に最低限の改造を加え、2両6名で1ユニットとすることを考えてはいかがでしょうか?
軽装甲機動車に牽引具を備え、さらに後席1名分の座席を外し即応分の弾薬を搭載します。その1両で120mmRTを牽引し、もう1両で弾薬トレーラーを牽引します。

またCH-47での空輸を考えると、1ユニットにヘリ2機を擁してしまうという欠点はあるものの、空輸が可能になります。なにより、非常に安価に、しかも時間をかけずに、装甲化された重迫撃砲ユニットを実現できるプランだと思いますが、いかがでしょうか?

返信する
PAN 様 はじめまして、コメントありがとうござい... (はるな)
2014-02-15 11:47:20
PAN 様 はじめまして、コメントありがとうございます

この四輪駆動機動装甲車に関する記事は過去に五回連載しているものでして、その部分を冒頭に書くべきでした、片手落ちで申し訳ない

その過去記事に、仕様と要求水準もいろいろと書いています

元々は、動的防衛力が求められる中で戦車という機動打撃力の根幹が削られ、軽装甲の機動戦闘車に置き換えられる現状に鑑み、普通科部隊に配備されている高機動車について、その後継車両とし、軽装甲車両を広範に配備し、置きかえられないか、というものです

まずは、過去五回の記事をお読みいただければ、と



2014-02-01:榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車の普通科連隊、基盤的防衛力の動的運用をめざして

2014-02-02:榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車、国際貢献任務での軽装甲機動車中隊との協同

2014-02-03:榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車,大量配備大量運用へ求められる最小限の仕様

2014-02-04:榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車、装甲汎用車としての各種派生型を模索する

2014-02-05:榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車、臨時中隊戦闘隊を軽装甲機動車小隊と共に

・・・、と、こういったかたちで何度か掲載しています、四輪駆動機動装甲車という名称で分かりにくいのですが、軽装甲機動車の車体とは別物ですし、高機動車の改造型でもありません

四輪駆動機動装甲車、フランスのVAB装甲車のような装甲車、82式指揮通信車の車高低減四輪駆動型、というような想定を考えていまして・・・詳しくは・・・

2014-02-03日付記事で提示した部分ですが



車内は小銃班10名が携帯火器とともに収容できる容積

3t半トラック旧称73式大型トラック用エンジンいすゞ直列6気筒6UZディーゼルエンジン285馬力を搭載

前部に操縦区画を置き、後部に人員区画、降車扉は側面ではなく後部に配置

機動力は100km/h程度、登攀力は60‰、転覆限界は35‰

車体は全幅2.5m以内、現在の道交法や道路運送車両法に配慮

車高は2.25m、74式戦車の車高と同程度以内

防御力はNATO防弾規格STANAG 4569に換算した場合、2から3

追加装備に鳥籠状のスラッド装甲を追加できるよう、固定器具基部を車体に配置

一両当たり初期生産分で4000万円程度、量産が軌道に乗った際には3500万円程度

・・・、と、いうような仕様を提案しました
返信する
はるな様 (PAN)
2014-02-15 14:31:21
はるな様

過去記事を読まずに書き込みし、すいませんでした。てっきり、現行の軽装甲機動車の改造で安価な車両という話だと勘違いしてしまいました。

その上で改めてコメントさせていただきます。
まずフランスのVABに準拠した四輪駆動機動装甲車の構想そのものは、要求スペック等は妥当だと思います。また、この車両を120㎜RTの牽引車両とすることにも、異論はありません。
ですが、この仕様の車両を、おっしゃるような4000万円程度で造ることは難しいんじゃないでしょうか?特に海外のIED対策を施した車両が、軒並み100万ドルオーバーであることを考えると、国産にした場合どんなに安く見積もっても、1~2億はかかると思われます。

一方で、陸自では現在、96式の後継で(おそらく)IED対策等を施した装輪装甲車(改)の開発が進んでいます。これはおそらく8輪でしょうが、価格の面を抜かせば、ブログ主様が想定する車両と、実はそうスペックが変わりません。はたして似たような人員を運ぶ装甲車両を複数装備することが現実的でしょうか? それならば装輪装甲車(改)の数を少しでも増やして、余剰となった96式装輪装甲車を四輪駆動機動装甲車で想定されている役割に振り向けるという考えの方が効率的ではないでしょうか? 例えば120mmRTの牽引車両としては、後部ハッチを改造すれば使えるでしょうし、場合によっては車載自走砲への改装も可能ではないでしょうか?

また高機動車のような、無装甲であるがゆえに汎用性が高く機動性も併せ持つ車両は、軍隊にとって欠かせないものです。いわば日常の馬車馬のようなもの。
特に自衛隊の場合は、戦闘任務以での後方任務が多く、その場合少しでも軽量で積載能力が高い車両が重宝されます。高機動車が無装甲だからといって、活躍する場が少ないわけじゃないでしょう。餅は餅屋であり、汎用車両があって兵站が確保されてこその、戦闘車両だと思います。
ですから高機動車の後継は、装甲車両化へのバージョンアップを念頭に置いた汎用車両であるべきでしょう。底部のIED対策などを考慮したシャーシのベース車両にし、必要に応じてベース車両をもとに装甲を施したファミリー車両を造れる幅を持たせるというのが、自衛隊の場合理想的じゃないでしょうか?ただしその場合は、収容スペースは乗員含め8名程度に減る可能性が高いですが。
ベースの汎用車両が1両3000万円前後、エンジンを強化しNATO防弾規格2から3に対応したファミリー車両が7000万~1億円前後といったところでしょうか?場合によっては、ベース車両にアットオンできる、簡易装甲キットの開発を最初から視野に入れてもいいかもしれません。

現用の高機動車は、その基本性能の高さゆえに、様々な装備を積んだベース車両となっております。その後継車も、まずは汎用性の高さを念頭に置くべきだと考えます。
長々失礼いたしました。
返信する
PAN 様 こんばんは (はるな)
2014-02-15 22:30:40
PAN 様 こんばんは

先日掲載しましたが、実は“榛名防衛備忘録”とは、多忙期に備え事前備蓄してある記事群を示していまして、高機動車との関係というご指摘の部分、既に作成してあります、本日これから掲載いたします。

装輪装甲車(改)ですが、全普通科連隊と施設科部隊等の一部に配備するには2000両が必要となります、装輪装甲車(改)では少々高すぎるのではないか、と。即ち着眼点は取得費用の低減です。

取得費用ですが、MRAPに代表される耐爆車両は英軍採用の開放型戦闘室のものも含め軒並み100万ドル以上、100万ポンド台のものばかりです、しかし、フランスが2000年代初頭まで提示していた四輪駆動のVAB-Mk2ですと、なんとか邦貨換算で4000万円台に収めているものがありますし、96式装輪装甲車は量産が進み単価は9000万円台、軽装甲機動車は2700万円程度にまで圧縮されていますし、90年代後半には毎年10両程度の生産であった82式指揮通信車が6000万円程度に抑えられています、長期生産計画と年間の量産数によっては、3500万円程度の装甲車、というのは不可能なものでしょうか。

高機動車の汎用性についてはご指摘の通りです。そして、高機動車は非装甲であっても用途は広い点には同意なのですが、第一線機動、軽装甲機動車と共に敵火砲の射程内における彼我混交の競合地域に展開することは、不可能です。現状では戦域より後方数kmから十数kmの距離で降車し、徒歩で地形防御を利用しています。軽装甲機動車であれば、不整地突破能力限界の地域まで、降車戦闘から近接戦闘まで1km以下の地域まで前進可能です、この随伴と協同を念頭に提示しましたのが、この一連の特集、というもの。

汎用車の装甲化ですが、当方は余り実用性は無いのではないか、という立場をとっています。実用性があるのは輸送車両の護衛など、路外機動を一切無視できる状況のみで、汎用車に装甲を追加すれば確実に不整地突破能力が落ち、肝心の第一線機動能力が低下するため、より強力な火器の攻撃から機動力での回避が不可能となってしまうわけです。

ですから、第一線用の装甲車は専用設計でなければならない、と考える次第です。
返信する
はるなさま、PANさま (ドナルド)
2014-02-16 01:00:05
はるなさま、PANさま

横から済みません。

装輪装甲車(改)は、装輪IFVのベース車体ともなるもので、VBCIやボクサー、パルティアAMVをイメージして開発されていると理解しています。私見ですがその単価はAPC型でも2億円は行くのではないでしょうか。96式APC+89式IFVの後継として、製造されるとしても、おそらく数は整備できない。(ハッキリ言って96式から半減する可能性が高い)

(はるなさんと同じ思いかは分かりませんが)私が考えるのは、はるかに「格下」のもので、「軽装甲機動車」の後継となる、「軽装甲APC」です。軽装甲機動車が2両で8名を運び3000万円 x2 = 6000万円かかるときに、同じ装甲厚で1+8(or 9)名を運び、5000万円で調達でき、軽装甲機動車2両よりも、かなり安い整備費用で運用できる車両が必要要求と思います。

一例を挙げれば、VABの代わりにフランス軍にも提案されている、豪州製のブッシュマスターIMV(軽装甲APC)。一応MRAPの一種とされていますが、本来オーストラリアの平原で、歩兵を輸送し、接敵の前に歩兵を降ろして展開させる目的で開発されたもので、ユニットコストは5200万円 (570k AUドル)です。全長7.2m、全幅2.5m弱、12-15tで 330 hpエンジン搭載。1+9人乗り。全高は2.65mと82式指揮車(2.38m)より17cmほど高めですが、いわゆる重MRAPほどではないです。

#MRAPは1億円を超える、というのは、20t級の重装甲MRAPの話では?

これまで、「90式戦車/87式偵察警戒車/96式装輪装甲車/軽装甲機動車」で整備されて来た装甲車両整備予算を、「10式戦車/(MCV/AAV7)/装輪装甲車(改)/軽装甲APC」にするイメージです。

#なお私は、MCVもAAV7も「要らん派」ですが、とりあえず書いています。

この軽装甲APCは、高機動車の後継ではなく、一部代替用と思います。陸自部隊を1/4 の重部隊、1/4の軽装甲部隊、1/2の軽歩兵部隊(空挺含む)にするのが、よいバランスだと私は考えています。いかに「軽装甲」のAPCでも、燃料代を含むその運用経費は、高機動車と比較して2-3倍は行くでしょうから。。。
返信する
いつも興味深く読ませて頂いております。 (武事浪漫)
2014-02-16 02:15:04
いつも興味深く読ませて頂いております。
毎日の更新、誠にご苦労様でございます。

今回、提唱されおられる「1個分隊輸送可能な高機動車タイプの軽装甲車」ですが、その必要性、全く同感です。

ただ1点、はるな様の「全幅2.5メートル以内」案は、CH-47JAでの空輸を考慮すると困難であり、サイズは最大限、高機動車に準ずる必要があるかと。
高機動車の2.15メートルでも、チヌークに内部搭載するにはギリギリらしいので。
返信する
装甲車化いいですね。 (軍事オタク)
2014-02-18 10:54:21
装甲車化いいですね。
ただ、軽量化としては、現状のままでもいいのかなと。
オスプレイ導入なら、米国海兵隊配備中の軽量じープの日本版、ジムニー改造車両で引っ張ってもらいましょうか?
装甲車で比較的軽量なら、防衛省で開発中の軽量6
輪装甲車で、部分的な迫撃砲の代替えなど妄想中。
確か低反動砲積んでましたね。
必要ならロシアのように、大型パラシユートに逆噴射ロケットつけて、c2輸送機60機配備して投下するイメージもありますがどんなもんでしょ?
演習場周辺左翼が怒るでしょうけど。
硫黄島やグアム島、米国あたりでは演習可能ですからね。
返信する
ドナルド 様 こんにちは (はるな)
2014-03-04 12:48:48
ドナルド 様 こんにちは

この装甲車提案は、普通科部隊の野戦機動用の高機動車の後継であり、普通科部隊の戦闘支援用には高機動車を用いて、中隊作戦拠点と後方連隊策源地との輸送等に高機動車の用途は残る、と考えて論理展開をしています
返信する
武事浪漫 様 どうもです (はるな)
2014-03-04 12:53:22
武事浪漫 様 どうもです

CH-47での輸送ですが、吊下げ輸送を考慮し、機内搭載は元々無理ではないか、と考えています

分隊用装甲車をヘリコプターに搭載するというのは、ドイツのムンゴ軽装甲車くらい、あまり無理しすぎると機構が複雑化し、価格が高騰してしまいます
返信する
軍事オタク 様 どうもです (はるな)
2014-03-04 12:54:39
軍事オタク 様 どうもです

MV-22に搭載する場合は、ジムニーよりも1t半のほうが良いのではないでしょうか、車幅的には座席を取り外せば搭載可能です
返信する

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