◆舞鶴展示訓練ヘリコプター機動飛行
舞鶴展示訓練特集、いよいよ最後の展示、ヘリコプター機動飛行が開始されます。
SH-60K哨戒ヘリコプター、舞鶴航空基地第23航空隊の所属機で、この舞鶴航空基地が完成するまでは長崎県大村航空基地からヘリコプターが展開していました。この為、ヘリコプター搭載護衛艦はるな、は1998年まで佐世保基地が母港だったわけですが、舞鶴を母港とした際、大村は遠すぎました。
また舞鶴第3護衛隊群へヘリコプター運用能力を輸する護衛艦が増加するにつれて、日本海での訓練に際し、舞鶴からの護衛艦と大村からのヘリコプターとの合流が運用上大きな制約を受ける事となり、念願の航空基地が建設、完成するに至ったのですが、舞鶴航空基地完成時期は丁度北朝鮮武装工作船の脅威が顕著化した時期、日本海防衛の重要航空基地として任務を果たすに至る。
SH-60Kは従来型のSH-60Jの改良型で、機体こそ米海軍のSH-60Bと同じシコルスキー社製S-70系統ですが、搭載器材は国産です。その最大の違いは、米海軍が空母艦載機であるHSS-2系統のSH-3を除く艦載機をLAMPSとして巡洋艦に駆逐艦やフリゲイトのセンサーの一部を航空機に搭載している、という割り切った運用を念頭に設計されていましたが、日本は独立した対潜装備として設計したところ。
即ち日本の哨戒ヘリコプターは吊下式ソナー、所謂ディッピングソナーを搭載しています。ヘリコプターはホバーリングできますので、潜水艦の居そうなところを磁気探知装置MADやソノブイで発見すると、そこに任意の深度までソナーを直接降ろすことが出来ます、このソナーによる捜索能力が大きい。
こちらはSH-60Jです。日本と違い、アメリカのSH-60Bは対艦ミサイルの誘導や通信中継等の任務の一部に対潜戦闘を行っていたので、ソノブイとMADしか水中の潜水艦を探す能力が無かったのですが、海上自衛隊のSH-60J/Kは搭載しており、その分対潜重視だった、ということですが、アメリカでもソナーの重要性は認識していてSH-60Fから吊下ソナーを搭載しています。
低空の機動飛行ですが、それにしても気合が入っています。ただ、翌日の日曜日に行われた低空飛行はさらに低く飛び、高い練度の一端を見せつけました。低空飛行は危険だ、と勝手に叫ぶ方もいらっしゃいますが、低空飛行しなければ有事の際に危険、という事を忘れてはなりません。
低空飛行を完了し、舞鶴航空基地へ戻る編隊。SH-60Kは対艦ミサイルを搭載してのミサイル艇対処を行いますし、SH-60Jも機銃を搭載し武装工作船対処を行います、この為低空での飛行に慣熟していなければ有事の際に撃墜されるため、こうした訓練の必要性は逆に安全のためというもの。
輸送艦のと、揚陸扉を開いての航行展示です。既に本艦は現役を引退し、舞鶴基地掃海艇桟橋で最後の時を待っているのですが、がんばろう東北、の垂れ幕通り、東日本大震災災害派遣に出動しています。本型の除籍により、小型輸送艦は全廃となり、僅かに一号型輸送艇2隻が残るのみとなりました。
輸送艦のと、背景に離島。島嶼部防衛を象徴する一枚です。満載排水量710t、本当に小型の艦ですが、どんな多数の大型トラックを揃える運送会社もライトバンを持っているように、小回りの利く輸送艦は防衛でも災害派遣でも必要です。ここまで小型ですと自衛艦隊で直轄運用するよりは各地方隊に一個輸送隊3隻装備して、即応体制をとってもいいのでは、と。
この種の輸送艦でも、日本はとにかく離島が多いですので、大型輸送艦の手が回らない地域へ、フェリーの接岸できる港湾施設以外へ、少数でも重要な部隊を輸送できます。また、個人的にミサイル艇の重要性を当方が何度も説く背景の一つに、この手の輸送艦の護衛、艦砲による支援、というものも、実は含まれていたりする。
護衛艦ちくま、その進路上にブイが見えました、どうやら定置網などの漁具の表示らしい、写真の護衛艦左側、護衛艦から見れば右舷側にブイが見えています。これに引っ掛けると、最悪スクリューに絡まります。障害物を進路上に発見、しかしそこはさすが海上自衛隊、低速ですが発見と同時に回避行動へ移りました。
回避後、望遠レンズの圧縮効果はありますが、それにしても距離は20m、というところでしょうか。展示訓練の完了後、進路は一路舞鶴基地へ戻る最中ではありますが、海上自衛隊の操艦技術の一端をこんな形で示したことに。それにしても、舞鶴湾と宮津湾の湾口に、こんな部位が浮いているとは。
美しい日本海沿岸の風景、こうした入り組んだ海岸線が直線にして1000km以上、延々と続くのが舞鶴警備隊の警備管区です。そして人口希薄な峻険地形と共に重要港湾と原子力発電所が点在する日本海沿岸、その対岸に冷戦時代は強大なソ連海軍、今日では非正規戦部隊を基幹戦力とする北朝鮮が、我が国へその軍事力を向けている。
さてさて、一路舞鶴基地へ、と言いますが、低速で湾内を進む如何というのは意外と長いものです。乗艦している一行は、風景見物と艦内見学の絶好の時間なのですが、朝一で出港してから今に至るまで立ち続け撮影準備、の方が多く、それにしてももて余すほどに時間がものすごくながいというもの。
喇叭演奏展示、舞鶴基地までの時間を、イージス艦の大きな後部甲板を利用し乗員によるちょっとした訓練展示が行われました。このほか、サイドパイプの展示も。号令に用いられる装備ですが、実は当方も佐世保基地で買いました。練習したいのだけれども、流石に市内で練習すると迷惑で、基地の近くで練習すると本物と紛らわしく、せめてここで模範を学び、山中の散歩などでこそり練習しています、クマよけという大義名分で、ね。
喇叭の訓練展示と共に後方を見ますと、潜水艦うんりゅう、がやはり同じく舞鶴基地へ向けて航行してゆくところが見えました。風景と共にこうした艦艇の動きも気になるところですが、甲板上はさすがに疲れた多くの方々が見学者用毛布に包まりのんびりと過ごしています。そして、ちょうかい、は基地へ進んでゆく。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
賛成です!3X5で15隻以上はほしいですねえ。
輸送艇の問題は、悩ましいところです。輸送艇一号型の価格が見つからないのですが、基準420t。ひうち型(44億円)の半分だが、特殊な構造なので、仮に30億円とします(昔の予算案に載っていると思うのですが...)。同等レベルの船を15隻整備すれば、450億円。人員は28人だそうなので、420名。比較対象としては、RoRo船2隻 or LPD 1隻程度。あるいはDDの「価格0.6隻分+人員2隻分」=ライフサイクルコストではほぼ1隻分(?)。
#ミサイル艇にはかねてより反対なので詳しくは述べません。
私の意見は以下です。
・この程度のコストを輸送能力向上に投入することは賛成。DDを一隻減して確保。ただし、現時点ではRoRo船2隻の方が良いかと。
・小型化できないか?米軍のLPD搭載LCU(基準200t級)のように、輸送艦にも搭載できるものとする。おおすみ型のドックは浅いので、新LPDを追加建造する前提。また200t級なら20億円で建造できないか?
・400t級LCUにする場合、機雷敷設機能を持たせてはどうか?(トルコなどのLSTは機雷敷設機能を持ちます)
特に機雷戦を真剣に考えると、「他の装備を削ってでも整備」する価値が出てくると思います。
まず、着上陸対応としての対水上機雷の有効性は自明ですね。私が揚陸の指揮官であれば、機雷原の恐れのある海岸に上陸は出来ません。大型船でも触雷すれば即沈没。何千人も機雷で死ぬ恐れがある。機雷を敷設した海岸には、防御側の大兵力が必要なくなる。(陸自の削減へ。30億×15隻×3(ライフコスト/調達費比)/30年=45億円/年=陸自予算の0.26% or 450名分:ちょろい?)
次に、潜水艦。出典は忘れましたが、潜水艦、先の大戦でも、かなりの数が機雷で沈没しています。日本沿岸を敵潜水艦にとって「自由に動き回れない海域」にする。実は、潜水艦が商船を攻撃すれば位置が分かるので、航路防衛戦では航空機で反撃できますが、工作員の侵入は検知できないので対応が困難です。しかし、機雷があると敵潜にとって大きなリスク。隠密行動を旨とする以上、対機雷ソナーも使えず非常にやりにくい、「はず」[<--所詮素人コメント:笑]。一定の海域は、機雷に任せる手もあり得ます。(DEや沿岸用SHヘリの削減へ。SH-60K ~3機)
ただし、機雷戦を仕掛けると、戦後に全て掃海/掃討する覚悟がいります。これは「弱者」の作戦です。我が国は有事に仮想敵を圧倒できる戦力は持てない、政治的にも財政的にも。であれば、「弱者の戦略」をとる覚悟を、そろそろ持つべきでしょう。
この「機雷戦」の話は、輸送能力の向上に「加えて」得られる効果なので、こうした minor warfare vessels の整備の議論の上で、実は有望かもしれません。
長文、失礼しました。
輸送艇の問題は意外と深刻で、大型輸送艦に収斂された結果、一回当たりの輸送能力が増大しつつも、複数箇所への輸送能力は大きく低減してしまい、拠点間輸送という冷戦時代の北海道への増援という任務から現状の島嶼部への輸送、そして南海トラフ地震を筆頭とした輸送任務に対応できていない、という実情、このまま放置するのは少々気が引けるのですよね・・・。
ミサイル艇、ううむ、当方も湾口防備の手段と、護衛艦不足の海域における哨戒手段として、ある程度必要とは思っているので毎回。。。
さて。
輸送艦と輸送艇ですが、1号型の場合は設計費用が相応に嵩んでいたのではないでしょうか。
確証はないのですが一定数を建造すれば一隻当たりで建造費のコストは回収できるだろう、とは考えるところで、米海軍のフランクSベッソン級車両揚陸艦かフランス海軍のCDIC型揚陸艇を原型としたものであれば、多少は、と思うところ。
フランクSベッソン級は米海軍向けに8隻が建造されたオーストラリアのRORO船原型の輸送艦で、満載排水量4266t、乗員31名、艦首付近の揚陸扉を配置し戦車26両など2280tを輸送、車両甲板は975㎡あり、構造上長期間の人員輸送は制限され、実施するならば甲板上にコンテナ式搭乗室を配置しなければなりません。速力は12ノットで機関出力は3900hp、ただ2007年就役の艦で建造費は3200万ドルとのこと。
CDIC型揚陸艇はフランス海軍がフードル級ドック型揚陸艦用に建造した揚陸艇で、Chaland de débarquement d'infanterie et de charsの略、満載排水量は750t、フードル級一隻にCDIC型一隻を搭載します。揚陸艦搭載の揚陸艇ではありますが航続距離が5330kmあり、航海レーダーも搭載。機関出力は1200hp、最大速力は10.5ノット、輸送能力はルクレルク主力戦車を含む340tの車両で、18名の乗員により運用可能です。一応半動力式20mm機関砲二門と重機関銃二基を搭載して、その要員を含めて18名で運用可能とのこと。用途から輸送艇ではなく交通船で取得して、港務隊の運用、という方法はあるかもしれません。特に佐世保基地と呉基地は広く、車両輸送の需要はありそうですし・・・。
乗員数と要員確保ですが、まあ、1号型に拘らなければ、そこそこ使えそうな設計のものは今日的に考えられるのでは、と。
コスト面ですが、国内で建造する場合、機関出力と速力をどこまで妥協するか、が大きいでしょう。ただ、恐縮ながらCDIC型の建造費が分からない・・・。もっとも、フランクSベッソン級規模のものの場合、輸送隊は定数2隻で十分とは思うのですが。
機雷戦、ううむ、戦車揚陸艦を機雷敷設艦に用いた事例が海外にあることは知っていますが、ご指摘のような哨戒ヘリコプター定数を削減し、陸上自衛隊の人員を旅団一個連隊程度さらに削るほどの事業評価につながる規模での機雷戦能力に達する程度に機雷を各地方隊が全て十分な数を管理しようとした場合、地方隊の陸上人員をかなり増勢しなくては対応できないような気も・・・。
レスありがとうございます。いくつか補足があります。
1:陸自420名減は大隊ではなく中隊規模
陸軍において近接戦闘職種=歩兵+機甲は、全体の1/4~1/3です。従って「陸自の0.26%=420名削減」では「普通科中隊140名程度(とその支援要員)」の削減になります。同様に、人員を3000人増やしたからと言って、旅団が編成できるわけではありません。(重々ご承知と思いますが)
2:Besson級やCDIC
Besson級LSVは大きくて安価なのが魅力です。特に後期型の「くろだ」級が良さそうですね(参考:army.mil/article/326/new-army-vessel-arrives-in-hawaii/)。このサイズなら~6隻(例えば、5個地方隊+沖縄)でも十分かもしれず、そうすればコスト、人員の負担は、大きく軽減されます。即応性を考えると、同発想で、半分サイズで半分価格(実際には2/3ほどか?)の船を10-12隻ほど整備できると最もよい。
CDICは議論しているLCUそのものズバリ。LPDの搭載艇としても使えれば、汎用性も高くなる。一つの形と思います。
3:代償について
私はこの輸送艇の価値を高める=代わりに少々の削減があっても、防衛力はむしろ高まる方法はないか、という視点で「機雷戦」の話をしています。陸自を削る、SHを削ることは目的ではなく、手段です。
もともと「離島を守る」ケースを考えた時に、機雷原なしには成り立たないと感じました。機雷原はいずれ突破されますが、時間を稼ぐことはできます。敵が上陸を試みるケースでは、航空優勢はない。つまり補給もないので「住民の食料」確保が課題。餓死者をださないためにも、数ヶ月以内に航空優勢=補給線を取り返すことが大前提(出来なければ降伏)。この想定では(仮定は多いですが)、離島の防衛で重要なことは、反撃までの3ヶ月~半年という時間を(出来る限り空港を死守して)稼ぐことです。だから機雷。
大規模な機雷戦を実施するには、備蓄など相当な資源が必要とのご指摘ですが、その通りと思います。しかし弾薬・燃料の備蓄不足は、機雷に限らず、現状の自衛隊全体の話で、まさにこれから改善が必要な項目です。南西諸島に増強するであろう陸自部隊も、そもそも弾薬・燃料は備蓄不足なのです。このさい、機雷の整備が重要項目の一つではないかと提案します。
#弾薬・燃料備蓄のためには、更なる正面装備の削減も必要でしょう。弾丸切れの武器には何の価値もないのですから、武器を購入するよりも「適切な量の」弾薬を備蓄する方が優先度が高いのは、本来当然です。ただし、別話題かと思います。
最後に。ミサイル艇等、minor warfare vessels の意義と位置づけ、必要性とその整備規模について、どこかでまた議論させていただけると面白いかと思います。軍隊に「選択と集中」は禁物。本当にミサイル艇やLCU/LSVが有効なケースがあるのなら、DDやP-1を削ってでも整備すべきなのですから。