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第1海上訓練支援隊 訓練支援艦『くろべ』 名古屋港に寄港・一般公開

2008-09-28 22:45:17 | 海上自衛隊 催事

■名古屋港自衛艦一般公開

 訓練支援艦くろべ、が広島県の呉基地から、名古屋港に寄港。ちょうど、訓練支援艦を見学したことが無く、名古屋港の間もなく取り壊しが始まるイタリア村と、パノラマカー撮影を兼ねて、昨日土曜日に名古屋港へ展開した。

Img_1073  海上自衛隊の訓練体制は世界でも最も厳しい区分にあり、訓練指導隊群隷下の指導隊が各基地に派遣され、練度の向上を図ると共に、護衛艦には艦内訓練指導班員が配置され、日々その能力の充実へと研鑽している。更に、対空戦闘訓練の効率的且つ実戦的な訓練を実施するべく、海上自衛隊では海上訓練支援隊に、訓練支援艦を配備し、対空戦闘の訓練支援に充てている。

Img_1234 訓練支援艦くろべ、は、1986年度計画で建造され、1989年に就役、満載排水量2550㌧、全長101㍍。機関はディーゼル四基を搭載し、二軸推進、出力9100馬力で20ノットの速力を発揮する。乗員は155名で、居住性を高める為に二段ベッドを採用している。76㍉砲と標的機を8機搭載している。

Img_1262  訓練支援艦の任務は、無人標的機による訓練の支援であるが、これを専用の支援艦により実施するには、高い練度の付与を目的とした背景がある。例えば、米海軍では、無人標的機を用いた対空戦闘訓練には、フリゲイトや駆逐艦の後部飛行甲板より無人標的機を発射しているが、この方式では、複数の同時管制が行えず、どうしても訓練の内容は通常のものとなってしまう。

Img_1074  くろべ、は、艦橋直上のフェーズド・アレイ・アンテナにより四機の無人標的機を同時管制する能力があり、これにより複数の目標による同時攻撃を想定した対空戦闘訓練を護衛艦に対して行うことが出来るわけだ。フェーズド・アレイ・アンテナは、無人機との相互情報交換も可能であり、これは護衛艦の対空戦闘能力の訓練評価を訓練支援艦に乗り組む海上訓練支援隊の隊員が行えることを示している。

Img_1154  無人標的機BQM34AJ改。非常に珍しいものということで、見学に集まった方々は隊員さんに、何に使うのか、ミサイルの一種ではないのか、など質問していた。本機は航空機を模した機動を想定した無人機で、全長7㍍とかなり大きい印象を与える。高度5000㍍以上を一時間に渡って飛行、最高速度は1070km/h、訓練支援艦より管制を受け飛行する。訓練終了後は、水上に着水させ、回収、江田島の標的機整備隊で整備を行う。

Img_1109  無人機BQM74EチャカⅢ(小型の標的機)。BQM34AJ改が航空機の飛行を模しているのに対し、チャカⅢは、対艦ミサイルを模した機動性を有し、訓練支援を行う。全長3.95㍍、飛行時間は高度10000㍍の場合80分の飛行が可能で、飛行速度は低空を1000km/h。

Img_1191  無人標的機の格納庫は二つあり、第一格納庫は煙突後方の甲板室内に配置され、BQM34AJ改を格納。第二格納庫は船体内に配置されており、チャカⅢを格納している。各格納庫に四機が収容されている。無人標的機の発射を行う、後部甲板にはレールが敷かれており、複数の標的機を甲板に配置するべく、ポイントなども設置されていた。

Img_1165  一般公開は、甲板の他に艦橋も見学者へ開放されていた。艦橋は、コンパクトにまとめられており、艦橋が見学できるということで、多くの人が集まり、ここだけ人口密度が高かったようにも思う。本艦は、護衛艦などと比べると比較的小型であるが、用途の関係上、横幅が充分取られているので荒天時の動揺は比較的少ないということだ。

Img_1174  見張員用の双眼鏡。イージス艦あたご、が潜水艦の潜望鏡を発見したのも、こういった見張員の双眼鏡なのだろう。ところで、話は飛ぶが、あの事件、鯨を見間違えたのでは、と報道されている。ただ、潜望鏡と流木を見間違えることはあっても、イージス艦を見て慌てて十分足らずで7km先の領海外に逃げ出す鯨、というのも変だ。国籍不明の潜水艦と考えるのが自然ではないか。そしてその発見した練度は、厳しい訓練の賜物でもあるように思う。

Img_1261  くろべ。本艦は海上自衛隊二隻目の訓練支援艦であり、海上自衛隊では2000年に訓練支援艦てんりゅう、を老朽化した初代訓練支援艦あづま、に代えて導入している。てんりゅう、は、くろべ、とほぼ同じ大きさであるが、当初は、より高度な訓練支援を目指し、航空機運用能力の付与を検討していたとのことである。一般に、装備を導入するだけで、戦力化若しくは抑止力の一端を担った、と勘違いされる方もいるようだが、実際に訓練し、使える体制を構築してこその抑止力。海上自衛隊の訓練支援艦という区分は、その実現を目指した重要な装備のひとつでもあるといえよう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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