■ニュークリアシェアリング
自衛隊は違うのですが欧州では例えば日本が北海道に上陸したソ連軍を撃退できない場合に札幌近郊で核攻撃、中国軍を沖縄本島で核攻撃、という感覚の運用があります。
AFP報道に“ベルギーなどに米核兵器配備、野党議員らが政府に説明要求”と云い驚きの報道がありました。NATO国会議員会議Webサイト上にあやまってニュークリアシェアリング用の戦術核兵器配備先が掲載されてしまった、という。欧州NATO域内には戦術核兵器が配備されている事は冷戦時代から明確に示されていましたが、再確認されたかたち。
戦術核の前方展開、今回改めて考えさせられたのは、核兵器整備部隊と共にアメリカはNATOの北大西洋条約への義務を履行すると共に、欧州は冷戦後に在っても、アメリカの核抑止力に依存している現状が示された形です。現時点でロシア核戦力の脅威はINF中距離核戦力全廃条約にて抑止されているにも拘らず、核抑止依存が浮き彫りになったかたち。
欧州NATO諸国に配備されているのはB-61戦術核爆弾、配備先はベルギーのクライネブローゲル空軍基地、イタリアのアビアーノ空軍基地、同国ゲディトレ空軍基地、オランダのフォルケル空軍基地、トルコのインジルリク空軍基地という。B-61核爆弾は自由落下方式の戦術核で、小型ゆえに核物質整備は重要ですが、戦術航空機の多くに搭載可能です。
トーネード攻撃機やF-16戦闘機、F-15E戦闘爆撃機やF/A-18E戦闘攻撃機、ジャギュア攻撃機にハリアー攻撃機に搭載可能です。自由落下方式であるため、運用は近距離に限られ、ニュークリアシェアリングは欧州域内で戦術核使用が必至となった際に、NATOから領域国に緊急供与、領域国が自国内で使用します。自国民を巻き込む為にこの方式を執る。
クライネブローゲル空軍基地、ベルギー国内のオランダに近いピアー市近郊に位置しています。ベルギー空軍のF-16戦闘機飛行隊の基地であると共にアメリカ軍お航空部隊は展開していませんが第701器材支援中隊が展開している。ドイツの在欧米空軍戦略拠点シュパングダーレム空軍基地から支援を受けていますが、シュパングダーレムに核はありません。
アビアーノ空軍基地、イタリアのヴェニス市から北方90kmに位置し、第16空軍司令部やF-16戦闘機二個飛行隊を展開させ東欧地域や北アフリカ地域への第401遠征航空軍拠点と位置付けられていると共に海軍拠点であるナポリ基地やガエータ基地とラ-マッダレーナ基地への戦略空輸拠点、アメリカ陸軍空挺部隊の戦略策源地としても位置付けられています。
ゲディトレ空軍基地、イタリア北部に1909年に創設された欧州でも最も古い飛行場の一つであると共に第二次大戦中にはドイツ空軍がMe-262ジェット戦闘機を配備した世界で最も古いジェット戦闘機部隊の基地、1952年まではアメリカ軍戦闘機部隊が展開していましたがイタリア空軍へ移管、現在はイタリア空軍のトーネード攻撃機部隊が展開しています。
フォルケル空軍基地、オランダ北ブラバント州に所在し、“遠すぎた橋”として有名なアイントホーフェンから30kmに位置します。オランダ国内に三箇所しかない航空基地の一つでありオランダ空軍F-16二個飛行隊が展開し、将来的にはF-35戦闘機が配備されます。アメリカ空軍の戦闘機部隊は展開していませんが、第703弾薬支援隊が派遣されている。
インジルリク空軍基地は1954年にアメリカ戦略空軍の戦略爆撃機と空中給油部隊用の基地として整備されました。トルコ第四の都市であるアダナ近郊に在り、加えて中東地域への要諦であるシリアトルコ国境に隣接し地中海沿岸にも近い事から補給を受ける好立地、アメリカ空軍は平時からKC-135空中給油機と共にF-16戦闘機48機を展開させています。
B-61核爆弾は上記各航空基地へ20発から40発が配備されているとされる。核兵器は核物質を確実に整備しなければ不完全核爆発となる為に整備施設も併設されており、B-61核爆弾は1ktから340ktの可変式核爆発機能を有しています。運用に際しては少数機が分散し、内一機が戦術核を搭載、戦車師団規模密集目標に対し、周辺住民巻き込む覚悟で使用する。
今回妙に感心したのは、ドイツ国内のシュパンダーレム空軍基地やラムシュタイン空軍基地、在欧米空軍の戦略拠点へ戦術核が配備されていなかった点です。これはクリントン政権時代に在独米軍基地からの核兵器撤収が確約された二国間合意を履行していた構図で、また、独自の核戦力を持つイギリス在英米軍レイクンヒース空軍基地も含まれていません。
今回の問題は、しかし欧州に戦術核が前方展開している事を再確認した事ではありません、欧州が戦術核を前提とした安全保障枠組を維持している事であり、精密誘導兵器などに代替されず防衛計画に内部化されている点でしょう。言い換えれば核を不要とする程の通常戦力近代化に充分な努力を果たしていないところに、現代の核拡散問題の根底が在ります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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自衛隊は違うのですが欧州では例えば日本が北海道に上陸したソ連軍を撃退できない場合に札幌近郊で核攻撃、中国軍を沖縄本島で核攻撃、という感覚の運用があります。
AFP報道に“ベルギーなどに米核兵器配備、野党議員らが政府に説明要求”と云い驚きの報道がありました。NATO国会議員会議Webサイト上にあやまってニュークリアシェアリング用の戦術核兵器配備先が掲載されてしまった、という。欧州NATO域内には戦術核兵器が配備されている事は冷戦時代から明確に示されていましたが、再確認されたかたち。
戦術核の前方展開、今回改めて考えさせられたのは、核兵器整備部隊と共にアメリカはNATOの北大西洋条約への義務を履行すると共に、欧州は冷戦後に在っても、アメリカの核抑止力に依存している現状が示された形です。現時点でロシア核戦力の脅威はINF中距離核戦力全廃条約にて抑止されているにも拘らず、核抑止依存が浮き彫りになったかたち。
欧州NATO諸国に配備されているのはB-61戦術核爆弾、配備先はベルギーのクライネブローゲル空軍基地、イタリアのアビアーノ空軍基地、同国ゲディトレ空軍基地、オランダのフォルケル空軍基地、トルコのインジルリク空軍基地という。B-61核爆弾は自由落下方式の戦術核で、小型ゆえに核物質整備は重要ですが、戦術航空機の多くに搭載可能です。
トーネード攻撃機やF-16戦闘機、F-15E戦闘爆撃機やF/A-18E戦闘攻撃機、ジャギュア攻撃機にハリアー攻撃機に搭載可能です。自由落下方式であるため、運用は近距離に限られ、ニュークリアシェアリングは欧州域内で戦術核使用が必至となった際に、NATOから領域国に緊急供与、領域国が自国内で使用します。自国民を巻き込む為にこの方式を執る。
クライネブローゲル空軍基地、ベルギー国内のオランダに近いピアー市近郊に位置しています。ベルギー空軍のF-16戦闘機飛行隊の基地であると共にアメリカ軍お航空部隊は展開していませんが第701器材支援中隊が展開している。ドイツの在欧米空軍戦略拠点シュパングダーレム空軍基地から支援を受けていますが、シュパングダーレムに核はありません。
アビアーノ空軍基地、イタリアのヴェニス市から北方90kmに位置し、第16空軍司令部やF-16戦闘機二個飛行隊を展開させ東欧地域や北アフリカ地域への第401遠征航空軍拠点と位置付けられていると共に海軍拠点であるナポリ基地やガエータ基地とラ-マッダレーナ基地への戦略空輸拠点、アメリカ陸軍空挺部隊の戦略策源地としても位置付けられています。
ゲディトレ空軍基地、イタリア北部に1909年に創設された欧州でも最も古い飛行場の一つであると共に第二次大戦中にはドイツ空軍がMe-262ジェット戦闘機を配備した世界で最も古いジェット戦闘機部隊の基地、1952年まではアメリカ軍戦闘機部隊が展開していましたがイタリア空軍へ移管、現在はイタリア空軍のトーネード攻撃機部隊が展開しています。
フォルケル空軍基地、オランダ北ブラバント州に所在し、“遠すぎた橋”として有名なアイントホーフェンから30kmに位置します。オランダ国内に三箇所しかない航空基地の一つでありオランダ空軍F-16二個飛行隊が展開し、将来的にはF-35戦闘機が配備されます。アメリカ空軍の戦闘機部隊は展開していませんが、第703弾薬支援隊が派遣されている。
インジルリク空軍基地は1954年にアメリカ戦略空軍の戦略爆撃機と空中給油部隊用の基地として整備されました。トルコ第四の都市であるアダナ近郊に在り、加えて中東地域への要諦であるシリアトルコ国境に隣接し地中海沿岸にも近い事から補給を受ける好立地、アメリカ空軍は平時からKC-135空中給油機と共にF-16戦闘機48機を展開させています。
B-61核爆弾は上記各航空基地へ20発から40発が配備されているとされる。核兵器は核物質を確実に整備しなければ不完全核爆発となる為に整備施設も併設されており、B-61核爆弾は1ktから340ktの可変式核爆発機能を有しています。運用に際しては少数機が分散し、内一機が戦術核を搭載、戦車師団規模密集目標に対し、周辺住民巻き込む覚悟で使用する。
今回妙に感心したのは、ドイツ国内のシュパンダーレム空軍基地やラムシュタイン空軍基地、在欧米空軍の戦略拠点へ戦術核が配備されていなかった点です。これはクリントン政権時代に在独米軍基地からの核兵器撤収が確約された二国間合意を履行していた構図で、また、独自の核戦力を持つイギリス在英米軍レイクンヒース空軍基地も含まれていません。
今回の問題は、しかし欧州に戦術核が前方展開している事を再確認した事ではありません、欧州が戦術核を前提とした安全保障枠組を維持している事であり、精密誘導兵器などに代替されず防衛計画に内部化されている点でしょう。言い換えれば核を不要とする程の通常戦力近代化に充分な努力を果たしていないところに、現代の核拡散問題の根底が在ります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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