■日本の救難艦派遣は間に合わず
潜水艦の事故は恐ろしいものです。二月に発生した潜水艦そうりゅう衝突事故は潜舵破損という修理可能なものでしたが4月21日にインドネシア潜水艦の事故が発生しました。
潜水艦救難事案に際し、航空機を活用することは出来ないでしょうか。こういうのは21日、インドネシア海軍潜水艦ナンガラが消息不明となる事案が発生したのに際し、一応訓練水準では世界最高峰の水準にある海上自衛隊へ捜索協力要請がでなかった為です。もちろん現場まで間に合わないことは自明でしたが、対岸の火事には思えない事故といえます。
航空自衛隊のC-2輸送機に搭載可能な小型のDSRV深海潜水艦救難艇を開発するとか、これが不可能であれば海上自衛隊のUS-2救難飛行艇に搭載可能なROV無人潜水艇を開発し、兎に角DSRVを搭載した潜水艦救難艦が到着するまでに事故潜水艦の位置だけでも標定しておくというような、航空機の速度を活かした潜水艦救難の装備開発が必要であると思う。
インドネシア潜水艦ナンガラ、バリ島沖で消息を絶った事案では潜水艦内部の部品や備品と思われるものが海上で回収され、恐らく圧壊したものとおもわれます。非常に残念な出来事でしたが、耐圧隔壁の一部が無事であれば、と希望も残っておりインドネシア海軍では捜索を続行しているようです、艦内酸素は24日まで、と当初発表されていました。
海上自衛隊は2隻の潜水艦救難艦を配備しています、実は海上自衛隊はこの種の装備着手が草創期から行われており、初の潜水艦くろしお、がアメリカ海軍から引き渡された5年後には潜水艦救難艦ふしみ、を竣工させています。また旧海軍でも工作艦朝日、戦艦朝日を改造した大型の工作艦が潜水艦救助の任務に当たっていました、この分野の先駆者です。
多国間潜水艦救助訓練では何度も海上自衛隊が参加していますし、今回遭難したナンガラの同型艦であるドイツ設計209型潜水艦との海中での人員移譲訓練もDSRVを投入して実際に実施しています。ただ、日本から潜水艦救難艦を派遣したとして事故現場はバリ島沖、五日はかかる計算ですので、間に合わないといわれれば、確かに進出は間に合いません。
潜水艦救難艦、速力は20ノットと支援艦としては比較的高速の部類に含まれるのですが、潜水艦事故という緊急性を考えますと、果たしてこれで十分なのか、という素朴な疑問です。もちろん、潜水艦救難艦を40ノットのウェーブピアサー船とすべき、なんていう発想ではありません、DSRVを搭載した大型艦を高速で航行させることは難しい部分も多い。
しかし、潜水艦救難の迅速化、という必要性はあるように思います。実際問題、海上自衛隊潜水艦は潜水艦おやしお型以降、そうりゅう型、たいげい型と大型化を進めており、潜水艦行動範囲は大型化にあわせて広域化しています。航続距離は友好国オーストラリアやインドまで充分含まれ、この点、現実的に事故の危険性もこの海域で皆無ではないのです。
US-2救難飛行艇にROV無人潜水艇を搭載し、潜水艦事故が発生した場合には潜水艦救難艦に先行して現場海域へUS-2が着水、対潜飛行艇PS-1は動き回る潜水艦の捕捉へ技術的問題から早期に運用を終了していますが、概ねの海域が絞り込まれた状況であれば潜水艦救難艦到着前に標定やロボットアームによる支援、こうした運用は考えられるでしょう。
DSRV,アメリカ海軍などはDSRVをそのままC-5戦略輸送機に搭載し事故現場近くの飛行場まで輸送し、飛行場からトレーラーを用いて港湾に進出、救難艦や潜水艦にDSRVを載せ替えて事故現場に向かうという、世界を舞台に行動するアメリカ海軍ならではの運用です。もっともC-2輸送機には現行のDSRVは40t以上もあり巨大、搭載不可能ではある。
海上自衛隊が装備するDSRVは水深2000m程度までは潜航可能です、具体的に潜航深度は公表されていませんが潜水艦を発見する無人潜水艇ROVが2000mまで潜れるものとなっており、ROVが発見した潜水艦を救助する能力がDSRVにはあると説明されていることから逆算できます。ただオーストラリアのLR-5のように数百m程度の小型のものも世界には存在する。
C-2輸送機の格納庫は全長15.7mと全高4.0mに幅4.0mで最大搭載能力は36tです、するとオーストラリアが開発したLR-5-DSRVであれば潜航深度は650mと重量24tで全長9.6m、全幅3.2mと全高2.7mですので、C-2輸送機に搭載出来、また16名を救助可能です。もっとも国産DSRVも大きさではC-2に搭載出来る為、軽量型が出来れば、とも。
潜水艦事故は必ず深海で発生するものではありません、もちろん水深が浅い海域であればスタンキーフードという脱出救命器具が潜水艦にも搭載されているのですが、C-2輸送機の最大搭載能力である36tと機内容積を念頭に、空輸可能であるDSRVを潜水艦救難艦搭載用よりも潜航深度が著しく劣るものでも、即応用に開発する必要は、あるように思います。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
潜水艦の事故は恐ろしいものです。二月に発生した潜水艦そうりゅう衝突事故は潜舵破損という修理可能なものでしたが4月21日にインドネシア潜水艦の事故が発生しました。
潜水艦救難事案に際し、航空機を活用することは出来ないでしょうか。こういうのは21日、インドネシア海軍潜水艦ナンガラが消息不明となる事案が発生したのに際し、一応訓練水準では世界最高峰の水準にある海上自衛隊へ捜索協力要請がでなかった為です。もちろん現場まで間に合わないことは自明でしたが、対岸の火事には思えない事故といえます。
航空自衛隊のC-2輸送機に搭載可能な小型のDSRV深海潜水艦救難艇を開発するとか、これが不可能であれば海上自衛隊のUS-2救難飛行艇に搭載可能なROV無人潜水艇を開発し、兎に角DSRVを搭載した潜水艦救難艦が到着するまでに事故潜水艦の位置だけでも標定しておくというような、航空機の速度を活かした潜水艦救難の装備開発が必要であると思う。
インドネシア潜水艦ナンガラ、バリ島沖で消息を絶った事案では潜水艦内部の部品や備品と思われるものが海上で回収され、恐らく圧壊したものとおもわれます。非常に残念な出来事でしたが、耐圧隔壁の一部が無事であれば、と希望も残っておりインドネシア海軍では捜索を続行しているようです、艦内酸素は24日まで、と当初発表されていました。
海上自衛隊は2隻の潜水艦救難艦を配備しています、実は海上自衛隊はこの種の装備着手が草創期から行われており、初の潜水艦くろしお、がアメリカ海軍から引き渡された5年後には潜水艦救難艦ふしみ、を竣工させています。また旧海軍でも工作艦朝日、戦艦朝日を改造した大型の工作艦が潜水艦救助の任務に当たっていました、この分野の先駆者です。
多国間潜水艦救助訓練では何度も海上自衛隊が参加していますし、今回遭難したナンガラの同型艦であるドイツ設計209型潜水艦との海中での人員移譲訓練もDSRVを投入して実際に実施しています。ただ、日本から潜水艦救難艦を派遣したとして事故現場はバリ島沖、五日はかかる計算ですので、間に合わないといわれれば、確かに進出は間に合いません。
潜水艦救難艦、速力は20ノットと支援艦としては比較的高速の部類に含まれるのですが、潜水艦事故という緊急性を考えますと、果たしてこれで十分なのか、という素朴な疑問です。もちろん、潜水艦救難艦を40ノットのウェーブピアサー船とすべき、なんていう発想ではありません、DSRVを搭載した大型艦を高速で航行させることは難しい部分も多い。
しかし、潜水艦救難の迅速化、という必要性はあるように思います。実際問題、海上自衛隊潜水艦は潜水艦おやしお型以降、そうりゅう型、たいげい型と大型化を進めており、潜水艦行動範囲は大型化にあわせて広域化しています。航続距離は友好国オーストラリアやインドまで充分含まれ、この点、現実的に事故の危険性もこの海域で皆無ではないのです。
US-2救難飛行艇にROV無人潜水艇を搭載し、潜水艦事故が発生した場合には潜水艦救難艦に先行して現場海域へUS-2が着水、対潜飛行艇PS-1は動き回る潜水艦の捕捉へ技術的問題から早期に運用を終了していますが、概ねの海域が絞り込まれた状況であれば潜水艦救難艦到着前に標定やロボットアームによる支援、こうした運用は考えられるでしょう。
DSRV,アメリカ海軍などはDSRVをそのままC-5戦略輸送機に搭載し事故現場近くの飛行場まで輸送し、飛行場からトレーラーを用いて港湾に進出、救難艦や潜水艦にDSRVを載せ替えて事故現場に向かうという、世界を舞台に行動するアメリカ海軍ならではの運用です。もっともC-2輸送機には現行のDSRVは40t以上もあり巨大、搭載不可能ではある。
海上自衛隊が装備するDSRVは水深2000m程度までは潜航可能です、具体的に潜航深度は公表されていませんが潜水艦を発見する無人潜水艇ROVが2000mまで潜れるものとなっており、ROVが発見した潜水艦を救助する能力がDSRVにはあると説明されていることから逆算できます。ただオーストラリアのLR-5のように数百m程度の小型のものも世界には存在する。
C-2輸送機の格納庫は全長15.7mと全高4.0mに幅4.0mで最大搭載能力は36tです、するとオーストラリアが開発したLR-5-DSRVであれば潜航深度は650mと重量24tで全長9.6m、全幅3.2mと全高2.7mですので、C-2輸送機に搭載出来、また16名を救助可能です。もっとも国産DSRVも大きさではC-2に搭載出来る為、軽量型が出来れば、とも。
潜水艦事故は必ず深海で発生するものではありません、もちろん水深が浅い海域であればスタンキーフードという脱出救命器具が潜水艦にも搭載されているのですが、C-2輸送機の最大搭載能力である36tと機内容積を念頭に、空輸可能であるDSRVを潜水艦救難艦搭載用よりも潜航深度が著しく劣るものでも、即応用に開発する必要は、あるように思います。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ただ運んでも、
どうやって投入や運用するのかが問題化もね。
海自の潜水艦が南シナ海で事故起こした場合ても、台湾やフィリピンまで空輸して現地の輸送艦や貨物船等をチャーターして即座に救出させるとかにも使用するとか。
まあ近くに救難艦を寄せておくかもしれないが、近くにいない時とかね。
相手国の貨物船等のクレーンで運用出来て、
C-2には
操作キッドと支援装置を積載して1機でも往復できる感じがいいと思います。