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参院選2019:連立与党141-野党104,自民公明連立与党圧勝に奮わぬ即席野党連合と投票率

2019-07-22 20:00:26 | 国際・政治
■第25回参議院議員通常選挙
 第25回参議院議員通常選挙は今月4日に公示され昨日が投票日、即日開票となりました。

 令和元年参院選は自民公営連立与党の圧勝に終わりました。巨大与党への対抗を旗印に一人区を中心に野党は候補者一本化を図るものの、実績強調の与党に対し、与党議席数は71議席、野党連合と他の野党は53議席であり、参院選非改選組は与党70議席と野党51議席、参院議席の勢力は連立与党141議席に対し野党は104議席、過半数を維持しています。

 参議院の勢力は、しかし選挙前の147議席から141議席となりました。与党議席数減の背景は、今回の改選組は2012年参院選挙の改選、当時は民主党政権時代末期であり経済政策と金融政策の静観による停滞と進まぬ震災復旧復興に二転三転の外交政策と頻出する内部問題、ここに変革と回帰を求めた自民公明、2012年あの頃ほどの勢いは現在、在りません。

 与党圧勝と云い得る背景には、どうあっても141議席と104議席の間には安定多数と云い得る数字ですし、三年前の参院選改選組では70議席を確保し、併せて野党連合という従来以上に踏み込んだ選挙協力の下でも改めて71議席を確保出来た事は、有権者からの引き続いての政権運営を付託されたといい得る為です。臨時国会は来月一日に招集されるという。

 憲法改正を一つの政策論点として自民党は掲げました。これは安倍自民党総裁の任期である事を考えるならば、大きな政策論点となり得るものでしたが奮わず、参院選は二院制にあって政権選択の選挙となる衆院選への中間選挙という解釈も重なり、討議の冴えなかたのは残念です。しかし、与党は改憲発議に必要な三分の二議席数確保には至っていません。

 憲法問題については、しかし、安全保障関連法制等は現実の問題に対処する為に制定されたものです。憲法上問題があるならば、現実上の問題が国民に弊害を看過できない影響を及ぼすまで棚上げし放置するか、合憲となるように憲法を現実の問題へ即し改正か、実定法では無い憲法下で現行法を運用上合憲と解釈する。ここが無視されているのは残念だ。

 野党連合は今後六年間に自衛隊への違憲を主張しないとして一致しました。そして安保法制廃止でも一致しました。不思議に思ったのは、安保法制には自衛隊法改正部分も含まれており、自衛隊は合憲だが自衛隊法は違憲、という立場は少々理解しがたいものでした。言い換えるならば、野党連合には大同小異と云いつつ連立を組める程には一致が無かった。

 共通政策公約、というものが必要ではないか。野党連合については今回、連立与党を参院議席数三分の二以下に抑える事が出来たとして成果を強調しています。ただ、与党に対抗する、という部分だけで一致しており個々に別個の政策領域から主義主張を提案しているのでは、少なくとも与党に反対するだけの野党、という領域を出るものではありません。

 インスタント連合、即席連合というべき野党連合の弊害は、核開発転用可能な対韓先端工業原料輸出優遇措置停止、ホルムズ海峡連続タンカー襲撃事件、徴用工対日民間賠償問題、選挙期間にも問題は相次ぎ、仮に野党連合が将来の衆院選に政権交代を迫る場合における諸問題の合議が出来ておらず、政党指針明示さえ出来ませんでした、野党討議が無かった為です。

 野党連合は巨大与党に対抗するが諸政策の分野での合議を行わない、というものでは、巨大ではない与党ならば許容する、つまり自分たちが反対以外具体的政策を立案する側の与党とはなり得ない、という云わば政権を目指さない万年野党宣言と云わざるを得ない事が、次の選挙となる衆院選へも影響を及ぼすでしょう。公開政策討論を行うべきではないか。

 安全保障政策、どうしても北大路機関は経済政策や年金政策について、防衛安全保障政策ほどの諸外国事例や周辺知識集約の基盤が無い為にこの部分に特化してゆくのですが、どうしても安全保障政策で野党連合が次の総選挙に置いて現実的な意見集約を出来るとは考えられないのです。具体的には野党連合が合意の安保政策は安保法廃止、のみでしたから。

 連立与党の優位性は政策立案と実行能力です。野党連合は政策立案を強調していますが、具体性に欠けるといえる、その背景には意見集約と政策反映という政治システムの機能不随があります、実行への弊害を勘案した利益と支持の相関関係を省いた政策は大衆迎合主義的になる事は如何とも避けがたく、これは前政権政権交代時の反省が活かせていません。

 二大政党制と云われる自民党社会党時代には、村山政権時代まで自民党優位こそ揺るがなかったものの、社会党右派にはリアリズムに基づいた防衛政策、弾道ミサイル防衛や空母保有論に徴兵制も含めた踏み込んだ論客が激論を通じ、この中で部分的合意と妥協に政策修正を与党に迫る構図が機能していました。ここが一種ポピュリズムに堕した印象はある。

 与党に対する選択肢を示すのであれば、完全に野党間では無かった事となっているタンカー襲撃事件や日韓関係、これから考えるという名の棚上げ、日本の説明を重ねるという名の無策、話し合いで解決を目指すという問題解決の遅延、ここを合議し妥協と修正を加えてでも一本化が必要だ。リアリズムかポピュリズムだけしか選挙で選択肢がありません。

 一方、低い投票率は毎回の問題となっていますが、単に政治関心の薄れは問題なのでしょうか、地域過疎化により山間部や交通難所等の過疎地域において投票所の集約が進み、三円間で投票所は858カ所減りました。徒歩圏内に投票所無し、という地域は増えています。若者の政治離れというよりは、投票所の有権者離れが進んでいるのではないでしょうか。

 858箇所減少した投票所、更に有権者の高齢化も進んでいます。投票に行きたくとも、要介助であり投票所まで期日前を含め行く事が出来ない有権者も増えている実情があります。要介助者投票支援制度、投票日翌日の祝日化による移動支援、投票呼びかけ待っていれば投票率が上昇する期待は出来ません。有権者政治参加機会を再興する必要があるでしょう。

 投票所の減少背景には、投票所運営者の人手不足があると説明されるのですが、運営関係の人件費を増大させ、選挙への選挙資金以外の選挙運営費用をもっと多くの費用と投じてでも投票所を維持し、介助制度を整備し、投票率を高める制度が必要です。民主主義は費用を要しますが、正統性と正当性を確保するには、その為の覚悟と負担が必要と考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-07-22 22:46:32
一部の野党は国際政治や安全保障の重要性を
理解しているか怪しい所があります
返信する
Unknown (軍事オタク)
2019-07-23 13:17:42
維新以外の野党は全て政権担当能力のかけらもなく、
もし政権を以前の民主党政権時代と同じようになることは目に見えている。

共産党に至っては共産主義で天皇制廃止となる。
国民はそのことを知っていながら野党に投票するのですかね?
正気の沙汰とは思えませんね。

出来もしない政策を並べて騙される国民のなんと多いことか。

自民党と維新を足して左右の2大政党に分かれて二大政党制となり、他の党は全ては消えていいと思いますね。
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Unknown (北京亭すぶた)
2019-07-23 21:09:57
軍事オタク様
苛立ちは理解できなくもないですが、本来、安全保障に右も左もないわけでして、せっかく意識を向けてくれそうな人たちを、こっちから選別するようなマネは慎まれた方が宜しいかと。例えば自衛隊に対する支持率の高さを見れば、現政権に批判的な人たち(私もかな)も大多数が自衛隊支持であると解釈されるでしょう。一部の極論は確かに目立ちますが、あまり振り回されないようお互いに気をつけましょう。
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永遠与党 (はるな)
2019-08-02 21:10:09
永遠与党、というものは逆に不健全なのですよね、故に野党各党には意見集約と利益調整を、具体的な利益不利益に依拠して政策立案出来るように進むか、諦めてポピュリズム政党のまま進むか、という問題認識を持って欲しいですね
返信する
Unknown (774)
2023-02-02 08:14:28
東アジア情勢が極度に悪化する前に安保法制を成立させた安倍総理の功績は
素直に評価するべきではないかと
(最悪、安保法制どころか有事法制すらなしで現在の東アジア情勢になっていた可能性もゼロではありません)
返信する

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