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【榛名備防録】防空艦の形成,ジュットランド海戦時代の高角砲とワシントン海軍軍縮条約時代

2021-10-23 14:41:07 | 先端軍事テクノロジー
■はじまりは対気球単装高角砲
 防空艦と云えばイージス艦、しかしその前にも当然存在していました、今回は例によって自衛隊の写真とともに遥か前その概念の始まりを見てみましょう。

 航空重視、海軍の思想が太平洋戦争における日本海軍を考える上での一つの根本的命題、この理解への一助として、そもそも世界では、航空機が艦艇の脅威として認識されるようなったのはいつ頃なのかを考えてみましょう。航空機の誕生はライト兄弟による1903年の動力飛行分野での初飛行ですが、1900年にはツェッペリン伯爵が飛行船を開発しています。

 対気球砲、おそらく人類史上初めて航空目標として認識されたものは陸軍が運用する観測用気球であったと考えられ、1910年にはイギリスで3ポンドABG対気球砲が配備されています、1912年にはドイツがクルップ88mm高角砲とイギリスがアームストロング3インチ高角砲が開発されていますが、艦砲として採用されたのはもう少し先のことでした。

 第一次世界大戦、航空機が艦艇を狙うことはありませんでしたが1918年までにイギリスが水上機母艦から発進させたショート184型水上機を用い、航空機からの雷撃を実施、トルコの商船を撃沈する戦果を挙げています。なお、魚型機械水雷こと魚雷が実戦で初使用されたのは1895年の日清戦争において日本が発射したものですが、戦果はまだありません。

 ジュットランド海戦、第一次世界大戦における歴史上最大の戦艦部隊による艦隊決戦ではイギリスが索敵に水上機を投入していますが、まだ、艦艇に脅威を及ぼす水準ではありません、ただ、将来的に飛行船、飛行機でなく、飛行船が上空から艦艇を攻撃する可能性があったため、ドイツ海軍は戦艦に2門程度の88mm高角砲を搭載するようになった。

 アーガス、1918年にイギリスが商船を改造し史上初の航空母艦アーガスを開発するにいたりますと、単装高角砲の巡洋艦以上の艦艇へ搭載する事例が出てきます、1920年代に入りますと対空機関砲の搭載事例が始まり、先鞭をつけたのはアメリカの28mm機関砲でした。もっとも機関砲そのものは以前より対水雷艇用に1900年代に搭載はされていたのですが。

 Mk.Ⅴ10.2cm単装高角砲、イギリスは1920年に戦艦用に専用の単装高角砲を開発しています、こちらは射程14.9kmで有効射高は8760m、毎分8発から最大で13発の射撃能力を有し、アメリカも1927年にはMk.25/127mm25口径単装高角砲を開発、高角砲による防空が重視されはじめます、しかし高射機関砲の配備時代は1930年代まで待たねばならない。

 ワシントン海軍軍縮条約、ただご承知の通り、高射砲が重視される頃には主力艦が制限されるワシントン海軍軍縮条約が発効し、海軍休日とよばれる、主力艦としての戦艦や巡洋戦艦と航空母艦の建造が大幅に制限される時代を迎えまして、続く1930年のロンドン軍縮条約により巡洋艦や駆逐艦と潜水艦が制限を受けるようになります、するとどうなるのか。

 戦艦が対空戦闘を重視しようにも設計時点で対空戦闘を盛り込んだ艦艇が建造されるのは1940年近くになるワシントン海軍軍縮条約失効後でして、海軍艦艇が設計に脅威を盛り込むにも泥縄式に機銃を増強するのが精一杯、という状況となります。ポスト条約時代には副砲が高角砲を兼ねる例もでますが、条約前は船体内臓の砲楼郭方式が多い時代でした。

 このころ、戦艦に対し航空機優位論が主張されるようになりますが、見方を変えれば、対航空機戦闘の設計を新造できない時代の艦艇に対し航空機が演習で優位を示した範疇であり、条約失効後、新戦艦の時代が到来する事を暫定的に見越さないままでの旧式艦相手での航空機万能論、というものが、海軍休日時代、部分的に醸成されたのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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